【社説】いまや国を守れるのは韓国軍と経済政策担当者だけだ

 朴槿恵(パク・クンヘ)政権で国政介入疑惑の渦中にある崔順実(チェ・スンシル)氏の手下とされるキム・ジョン文化体育観光部(省に相当、以下同じ)第2次官は2014年6月、携帯電話のメールを使って崔氏に同部の長官候補3人の名前を伝え、その4日後には実際にその中の1人が長官に就任することが決まった。TV朝鮮が28日に報じた。このようにあり得ない事実が今なお次々と明るみに出ている。ちなみにこの日は26-27日に行われた韓国ギャラップの世論調査結果も発表されたが、それによると朴大統領の支持率は14%にまで落ち込んでいた。

 今でも国民の誰もが朴大統領への怒りを隠さないが、その一方で大きな不安も同時に感じている。この状態で北朝鮮が何か挑発行為を仕掛けてきたり、あるいは経済で大きな問題が発生した場合、一体この国はどうなるのかという不安だ。1997年に当時の金泳三(キム・ヨンサム)大統領は息子の不正行為に加え、労働・金融関係法をめぐる問題などでも大きな批判にさらされていたが、それからわずか数カ月後にアジア通貨危機が韓国を襲った。このようなことが今回繰り返されないという保証はどこにもないからだ。

 北朝鮮が今後再び核実験や大陸間弾道ミサイル発射実験といった戦略的挑発を行うとすれば、その時期は米国の政権交代期となる可能性が高いが、実際に米国大統領選の投票日までわずか9日しか残っていない。この重要な時期に韓国では大統領がその権威を完全に失い、国政はマヒ状態に陥ってしまった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)集団は今の韓国の状況を鋭意注視しているはずだ。戦略的挑発とまではいかなくとも、哨戒艦「天安」爆沈や延坪島砲撃のような局地的挑発を行うだけでも、韓国社会に大きな影響や打撃がもたらされる恐れがあるからだ。

 つい先日、米国で各情報機関のトップに立つ国家情報局長が「北朝鮮が核兵器を放棄する可能性はない」と断言した。衝撃的な発言だ。彼の言葉通り、米国が北朝鮮の核兵器開発阻止を放棄し、北朝鮮と核兵器の凍結交渉を始める可能性にもわれわれは備えなければならない。米国が制裁や圧力によって北朝鮮に核開発を放棄させることをあきらめたとなれば、それは米国が直接攻撃を敢行する可能性が出てきたことも同時に意味する。ただ韓国にとってはどちらにしても危機的状況であることに変わりはない。このような現状でわれわれが信じられるものがあるとすれば、それは韓国軍しかない。現在、韓国では政治は崩壊しているが、韓国軍将兵だけは何があっても自分たちの役割を果たし、政府が再び正常化するまで国と国民をぜひとも守り続けてほしい。

 一方で韓国経済も薄氷の上を歩んでいる状態で、一歩でも狂いが生じれば取り返しのつかない事態を招きかねない。造船業と海運業の構造改革はもちろん、大きな問題を抱えていることが予想される業界では、危機への対応に誤りがあってはならなず、特に不動産の動向は深刻だ。経済政策の舵取りを任された柳一鎬(ユ・イルホ)経済副首相兼企画財政部長官の手腕を不安視する声もあるが、いずれにしても今はあらゆる知恵と能力を総動員するしかない。韓国経済には複数の深刻な危機がいくつも重なり合っている。経済政策の担当者たちは、これからの数カ月を「非常事態」と考え、何があっても常に対処できる姿勢を持たねばならない。朴大統領は昨日夜、大統領府の秘書官ら全員に辞表を提出するよう指示したが、今後もあらゆる状況にスピード感を持って対処していかねばならない。

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