個人再生を検討している人にとって、「本当に自分でも個人再生できるのか?失敗してしまう例もあるのか?」という点はきになる点ですよね。
個人再生は、基本的に債権者の合意を得ることができなければ成立しないため、手続きは慎重に進めていく必要があります。
ここでは、個人再生がうまく成立しない例としてはどのようなケースが考えられるのかをまとめてみました。
これから個人再生を選択することを検討されている方は、参考にしてみてくださいね。
なお、個人再生の基本についてはこちらにまとめてありますので、併せてごらんください。
そもそも個人再生の条件を満たしていないケース
個人再生は借金があまり大きく、安定的な収入がある債務者を救う制度です。
そのため以下の3つの条件のどれかに場合はそもそも個人再生の前提条件を満たしていません。
- 債務の総額が5,000万円を超える
- 安定的な収入がない(給与所得などがない)
- 前回の個人再生から7年の経過していない
上の条件のどちらかに当てはまる人は、個人再生が失敗する、というより個人再生の対象とならない人、と考えられます(1つでもアウト)。
これらのケースでは個人再生を申し込んだ段階で却下(棄却)されます。
なお、再生手続き費用の納付を裁判所にしていない(予納がない)ケースや詐欺的な理由で個人再生の申し立てを行ったケースでも、申し込む時点で棄却されます。
これらの人は自己破産などほかの債務整理を検討した方が良いでしょう。
上の条件には当たらない人は、個人再生の申し立ては可能です。
しかし、今後もいくつか関門があります。
順に見ていきましょう。
個人再生の申し立て審議中に失敗するケース
債権者の合意が得られない
個人再生の申し立て審議中に失敗するのは、債権者の合意が得られない場合です
個人再生には、2種類の方法があります。
小規模個人再生の場合
1つ目が「小規模個人再生(しょうきぼこじんさいせい)」と呼ばれる方法です。
小規模個人再生はどなたでも利用できるという長所がありますが、債権者側の同意がないと成立しないという短所があります。
個人再生が失敗に終わってしまう例で多いのは、こちらの小規模個人再生です。
債権者側としては、債務者側が提出した「再生計画(借金をこれだけ減額してくれたら、毎月これだけの返済をして最終的に完済を目指して頑張ります、という計画のことです)」が納得のいかないものである場合には同意をしてくれない可能性があります。
小規模個人再生では、以下のどちらかの条件で債権者側の同意を取り付ける必要があります。
(1)債権者の頭数で半数以上の同意を得ること
たとえば、債権者が5人いるという場合には、3人以上の債権者に同意してもらう必要があります。
(2)債務総額の過半数を占める債権者からの同意を得ること
たとえば、借金の総額が200万円であるという場合(A社120万円+B社30万円+C社50万円)に、借金総額の2分の1以上の金額を持つA社が同意すればOKということになります。
個人再生のうち「小規模個人再生」では、債権者側の同意がないと個人再生を認めてもらうことができません。
これは、具体的には「再生計画案に同意しない」という形で債権者が意思表示をする場合をいいます。
再生計画案は「減額をしてもらった借金について毎月の返済額をいくらにして、何ヶ月間にわたって返済を行う」という内容の計画のことで、債務者側が作成して裁判所に提出します。
減額後の借金はおおむね3年間(36ヶ月)で完済できない場合には再生計画案には同意しない債権者(金融機関の場合)が多いです。
もし、この条件で完済ができない場合には自己破産を選択せざるを得ないケースが多いでしょう。
給与所得者等再生の場合
2つ目は給与所得者等再生(きゅうよしょとくしゃとうさいせい)という方法です。給与所得者等再生なら、債権者の合意は必要なく、個人再生の成功率は高まります。
こちらはサラリーマンや公務員などの「毎月安定的に一定額以上の収入がある人」を対象とした方法です。
収入などの要件がある分、債権者側の同意がなくても借金の減額を認めてもらえるというメリットがあります。
給与所得社等再生を選択してデメリットを受ける場合
このように見ていくと給与所得社等再生の方が有利なように思えますが、必ずしもそうではありません。
給与所得社等再生を選択した場合には最終的に残る借金の金額が多くなる可能性が高いというデメリットがあるためです。
具体的には給与所得社等再生の場合は「可処分所得の2年分以上の借金は支払わなくてはならない」というルールがあります。
可処分所得というのは収入から税金や社会保険料を引き、さらにそこから最低限の生活費を差し引きした金額を言います。
サラリーマンとしての収入が多い人の場合、この可処分所得の2年分という金額がかなり大きくなり、結果として減額してもらえる借金の金額も非常に小さくなってしまうということもあるのです。
「債権者の合意が得られない」以外の失敗するケース
個人再生の申し立て中に棄却されるケースは、債権者の合意が得られないケースが中心です。しかし、そのほかにも注意すべき失敗例がありますので説明します。
- 財産目録に記載すべき財産を記載しない、または不正な記載をした
これは、まあ、だめですよね。
裁判所に提出する書類、それも借金の減免を求める書類に嘘を記載してはいけません。
財産を隠して個人再生はかなりまずい犯罪です。
詐欺再生罪という民事再生法255条により、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(又は併科)となっています。
- 裁判所の定めた期間までに再生計画案が提出されない
個人再生を申し立てるにあたって、決められた期日までに再生計画案を提出しないのはもってのほかですね。
再生計画案が提出されなければ却下もやむなしです。
- 提出された再生計画案が決議に付するに足りない
これは、なんとも手厳しい表現です。ふざけた再生計画案を裁判所に持ってくるんじゃないっていう強い語気ですね。
個人再生は弁護士さんに依頼するのが普通なので、普通はこんなふざけた再生計画案にはならないでしょう。
裁判所に再生計画が認められず失敗するケース
個人再生は債権者が合意したからといって、それだけで成功するわけではありません。
裁判所が再生計画を許可すべきかどうか審議して、それを妥当なものと認めてから個人再生が成立します。
裁判所が再生計画を認めない代表的なケースとしては
- 再生計画が法律に違反している。そしてその不法状態が補正できない(適法にできない)
法律に違反した再生計画では、いくら債権者が反対しなかったからといって、裁判所が認めるわけはありませんね。
- 再生計画が実現不可能。再生計画が遂行される見込みがない
達成できない非実現的な再生計画では裁判所は認められません。
債権者がOKだからと言って、裁判所は再生計画の実現性を厳しく判断しています。
- 再生計画の決議が不正の方法によって成立している
負債を抱えた人が、自分の財産を隠してから個人再生を行えば、借金は減らせるのに自分の資産は残せます。
これは債権者の利益をないがしろにする詐欺的行為(犯罪:詐欺再生罪)なので、裁判所はこれを許しません。
- 再生債権者の一般の利益に反する
個人再生では自己破産と比べて債権者に有利にならなければならないという大原則があります。
債務者が自己破産したケースより、債務者が受け取れる金額が少なければ、債務者の利益がないがしろにされていることになるからです(清算価値保障の原則)。
債務者の全財産が100万円だった場合を考えます。
自己破産した場合、債務者の財産100万円はすべて債権者に移行します。
個人再生の結果、債務者が支払う金額が100万円以下では、債権者にとって自己破産より不利な結果となってしまいます。
それでは、債権者の利益が侵害されるので、個人再生では(この例では)100万円超の返済額が求められるということになります。
個人再生が失敗するケースについてのまとめ
今回は、個人再生が失敗してしまうケースや、個人再生を行った後の失敗例について紹介させていただきました。
個人再生は借金の負担を大幅に減らしてもらえる方法ですが、提出する再生計画に債権者側の合意が得られないと成立しないという短所があります。
個人再生は弁護士などの専門家に依頼することで安全かつスムーズに進めることができますので、一度相談してみることをおすすめします。