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[FT]中国「習氏1強体制」、欧米への試練(社説)

2016/10/31 15:05
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 この数十年、欧米の民主主義国は中国に対し、繁栄と開放がより自由な政治体制におのずとつながると信じて関与政策を続けてきた。欧米の生活様式のメリットを示せば、中国も自分たちのようになってくるだろうと先進国は考えていた。

権力を集中し、自らを「核心」と位置づけた習近平国家主席=ロイター

権力を集中し、自らを「核心」と位置づけた習近平国家主席=ロイター

 この信念が、先週開かれた中国共産党の中央委員会全体会議で自らを「核心」と位置づけた習近平国家主席によって揺さぶられている。この位置づけで事実上、中国は強大な権力者による支配に戻り、合意に基づく指導体制は短命に終わった。習氏の前任者らも在任中に民主主義の導入をほとんど進めなかったが、その方向へ動くことを暗黙の目標とし、時にははっきり示すこともあった。

 対照的に、習氏は民主主義とその他の普遍的価値のほとんどを何度も強く拒絶し、代わりに絶対的存在である皇帝が「天下」を治めた時代を想起させる「偉大なる復興」を約束した。

 2012年末に就任した習氏は自らへの権力集中を進め、形ばかりの行政府に対する監視を行う機構を骨抜きにした。また、反対意見と市民社会に対する過去数十年で最も厳しい弾圧も主導した。

 中国と欧米の習氏の擁護派は、この権力の集中は困難な経済改革、さらには政治改革に取り組むために必要だと論じている。習氏の徹底的な反腐敗運動は、肥大化した国有企業の改革を進めやすくし、持続不可能な債務の爆発的増加に歯止めをかけるものだとされた。

 習氏が最初の5年間の任期の最終年に入ろうとする中、権力集中が重要な改革を実現するための手段ではなく、それ自体が目的であることがますますはっきりしている。習氏は党を抑制しうる機構を弱体化させることで、司法の独立と法の支配へ向かう長期的な流れも逆転させた。これらがなければ、中国は根本にある腐敗との戦いに苦労することになる。

■現実的な関与が必要

 欧米が直面している問題は、自分たちの社会制度の根底にある信条を堂々と拒絶する指導者の下でますます力を強める国と、どう渡り合うのかだ。今後も中国に関与することが最善の道だが、信念に基づいた現実的な関与でなければならない。

 中国が経済の多くの部分に外国からの投資を認めようとしないことに対しては、戦略的に重要な産業で海外の競合を買収しようとする中国企業の動きに監視を強めることで応じるべきだ。これは保護主義ではなく、自国の市場を閉ざしたままで海外での歓迎を期待するのは無理であることを中国政府にわからせるためのバランス修正にすぎない。

 欧米諸国、特に欧州連合(EU)の政府は、中国共産党に取り入ろうとして互いに足を引っ張り合うのは、近視眼的で自滅に行き着くということを認識しなければならない。どの国の指導者もそうだが、中国の指導者らは卑屈な国には敬意を払わず、「友情」や不確かな「黄金時代」などという考え方だけで投資を決めたりはしない。

 豊かになって世界経済との一体化が進めば、中国はおのずと民主主義国家になるという前提は、間違っていたことがわかった――今のところは。だが、近現代の世界において、閉ざされた独裁体制下で短期間でも高度に開かれた経済を運営できる大国は、あったとしてもまれな存在だった。これまでの賭けは全て白紙に戻った。習氏は歴史上最大となる政治学の実験の場を整えたのだ。

(2016年10月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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