トップ > 長野 > 10月30日の記事一覧 > 記事

ここから本文

長野

規制免れ林道開削 自然公園法特別地域「高ボッチ高原」

樹木とササに覆われた高ボッチ高原を開削して造られている林道=塩尻、岡谷両市にまたがる高ボッチ高原で

写真

 八ケ岳中信高原国定公園内の高ボッチ高原(塩尻、岡谷市)で今秋、幅三〜四メートル(のり面を含めると約五メートル)、全長八百メートルに及ぶ林道が開削された。自然公園法の特別地域だが、事業規模が小さいとして規制を免れた。開発側の行政に、高原の歴史や自然保護活動への配慮はあったのだろうか。重機で削られて露出した山肌は、いくつかの疑問と課題を突き付けている。

 高ボッチは、塩尻市東部から岡谷市北部に広がる高原。標高千六百メートル余で、富士山や南北アルプスの眺望が美しい。多様な動植物が観察でき、一九六四年に国定公園に指定された。

 林道開設は、国立研究開発法人・森林総合研究所森林整備センター(長野市)の分収造林事業の一つ。同センターが、山林管理者の横川山運営委員会(岡谷市)と結んだ契約に沿って、山林の土地を所有する岡谷市が伐採木の搬出道路として工事発注した。

 造林事業地は岡谷市側にあり、既存のカラマツを伐採して新しい林道で塩尻市側へ搬出するのが目的という。

 工事区間は自然公園法の特別地域。このうち、四分の三の六百数十メートルは第一種特別地域だ。自然公園法で「現在の景観を極力維持」とされた地域で、土地の形質変更や木竹の伐採、工作物の設置、土石の採取などの行為を制限している。

写真

 担当の岡谷市農林水産課は、森林整備センターの担当者とともに植生などの現地調査を実施し、塩尻市を通じて同市自然保護ボランティアに事業概要や調査結果を報告。

 三月に知事あてに事業申請を出し、四月五日に許可が下りた。調査結果では「県指定の希少野生動植物は確認されなかった」としている。

 しかし、事業当事者による調査に、同ボランティア顧問の大木正夫さん(87)は納得しない。生態系は点や線でなく、面的広がりの中にある。事業計画地を歩いて確認できなかったからといって、希少種が存在しないということにはならないからだ。

 塩尻、岡谷両市は事業許可後の六月と八月、十月に同ボランティアへの説明会を開き、「了承は得られた」として今月中旬に着工し、二週間余で八百メートルの林道は開削された。今後は勾配の調整と砕石の敷設をし、十二月二十二日に完成する見通しだ。

 大木さんは「高原には高ボッチや霧ケ峰が北限のオニゼンマイ(塩尻市の絶滅危惧種)やササユリ(県の絶滅危惧種)があり、ハクサンフウロなど高原性の草花も多い」と話す。

 さらに「夏鳥のホオアカとノビタキは塩尻市の絶滅危惧種に指定されている」とした上で、第一種特別地域への林道開設は「重大な生態系の分断」と指摘する。

 県環境部自然保護課の担当者は「第一種特別地域でも、今回の事業規模では事前の植生調査などは義務付けられない。自然公園法に沿って許可したが、事業申請時に自然保護団体など地元の意見を添付してもらえれば、何らかの対応も可能だったと思う」と話している。

 (野口宏)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索