訪日外国人旅行者 2020年には目標4000万人へ

訪日外国人旅行者 2020年には目標4000万人へ
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国土交通省は、ことし日本を訪れた外国人旅行者が30日、2000万人を超えたと発表しました。政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年に、日本を訪れる外国人旅行者を4000万人に倍増する目標を掲げていますが、達成に向けた課題は少なくありません。
外国人旅行者の目的地は現在、東京・大阪・京都など、「ゴールデンルート」と呼ばれる主要な観光地に集中していて、地方を訪れる外国人はまだまだ少ないのが現状です。

年間4000万人の目標を達成するには日本を2度、3度と繰り返し訪れてもらう、いわゆるリピーターを増やす必要があります。このため、まだあまり知られていない各地の観光地や、日本の文化を体験できる伝統行事などを新たな観光資源として外国人旅行者にアピールしていくことが課題となります。

このため観光庁は東北や四国など全国11の地域で外国人におすすめの観光ルートを設定し、外国語のパンフレットの作成やツアー商品の開発を支援するなどして、地方まで足を伸ばしてもらおうと取り組んでいます。

一方、急増する旅行者を受け入れる宿泊施設の確保も課題です。とりわけ東京と大阪では、去年、ホテルの稼働率が80%を超えるなど、宿泊施設の不足が深刻化しています。このため都市部では、ホテルの整備やマンションの空き部屋などを宿泊施設として提供する「民泊」の活用が課題となっています。

また、地方では旅行者を呼び込むため、外国語での接客や案内板などを充実させたり、無料で利用できるWi-Fiを整備したりすることが求められています。政府はこうした施策をまとめた「観光ビジョン」をことし3月に策定していて、今後、国と地方、そして官と民が連携して外国人旅行者、年間4000万人という高い目標を確実に実現していくことが課題です。

外国人リピーター増へ体験型ツアー

外国人旅行者を目標の年間4000万人に増やしていくための課題の1つが、日本を繰り返し訪れる「リピーター」を増やすことです。

政府は外国人旅行者のうち「リピーター」を2020年に年間2400万人まで増やしたいとしています。こうした旅行者が好むのが、「買い物」や「名所の訪問」にとどまらず、日本ならではの食文化や伝統行事などを体験する「コト消費」だと言われています。

東京・中央区、日本橋の商業ビルでは、「リピーター」のニーズに応えようと「ジャパングルメツアー」と名付けた体験型のツアーを行っています。
この日は、老舗の食品販売店などを1時間半かけて回り、かつお節を削る体験を通じて日本の「だし」の文化を学んだり日本各地のお菓子などを試食したりしました。アメリカから訪れたという女性は「予想以上に楽しかったです。また日本に来たいです」と話していました。

ツアーを企画している三井不動産の細田知子さんは「将来は、この街全体で外国から訪れるインバウンドのお客さんを歓迎するような活動が広がっていってほしいと思っています」と話していました。

地方も人気 ネットを通じて口コミで

日本を何度も訪れる旅行者は、東京や京都、それに富士山など定番のコースだけでなく日本の情緒をもっと味わいたいと地方を訪れる人が増えています。外国人の宿泊客が一気に増えた旅館が、滋賀県長浜市にあります。

この旅館では、3年前は年間わずか17人だった外国人客が、昨年度は111人に上りました。この旅館は「和風」の設備やサービスにこだわっていて、ロビーは伝統家屋のいろりのある風景を再現しました。
客室には露天風呂があり、夕暮れのびわ湖の景色を眺めながら温泉を楽しむこともできます。日本らしい美しい自然と伝統文化を味わう宿として外国人の間で、インターネットを通じて口コミで広がり、次々と外国人旅行者が訪れるようになったのです。

アクセスも決してよいとはいえず、JRの京都駅から在来線で1時間半ほどのところにありますが、1時間に1本しかない電車や、レンタカーで外国人が訪れるようになったと言います。旅館のフロントチーフの山本享平さんは、「次々に外国人が訪れ、驚きました。主要な観光地をすでに見て回った旅行者の、日本をもっと知りたいというニーズに応えることができたのだと思う」と分析しています。

この旅館では接客にあたっては、なるべく英語を使わず日本語で応対し、日本に居る気分を高めてもらうことにしています。これについて山本さんは「格安航空会社の就航で、とくに東アジアからは国内旅行感覚で何度も日本を訪れる環境が整ってきた。これからは、もの珍しさではなく日本人の客と同じおもてなしのサービスを提供し続けることが大切だと思う」と話していました。

帰国後もネットで購入してもらおう

日本を訪れる外国人旅行者が増え続ける中、大手デパートやディスカウントストアでは、帰国したあともインターネットを使って日本の商品を購入してもらおうという取り組みが広がっています。

大手デパートの高島屋は、日本を訪れた中国人旅行者などを対象にしたスマートフォンの専用アプリを開発し、インターネットの通販事業を早ければ来月から始める計画です。
具体的には、利用者が専用アプリをダウンロードして「上海高島屋」のホームページなどにあるQRコードをスマートフォンで読み取ると、日本の化粧品や衣服などをネットで購入できる仕組みです。旅行者が帰国したあとも継続的に商品を購入してもらおうと国内の店舗の免税カウンターでアプリの利用を呼びかけていくことにしています。
高島屋のオムニチャネル推進室の横山和久室長は、「日本製品の人気は高く、日本で来店した旅行者の帰国後の需要とあわせ、中国本土の新たなニーズも取り込んでいきたい」と話しています。

また、ディスカウントストアのドン・キホーテは、日本の店舗で買い物をした外国人旅行者に会員登録をしてもらい、帰国後にインターネットを通じて日本の商品を購入できるサービスを今月から始めました。今は、一部の店舗で会員登録の方法を案内していますが、今後、より多くの店舗で案内していく計画で、小売業界では外国人旅行者の需要を帰国したあとも、継続的に取り込んでいこうという動きが相次いでいます。