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【社会】

村上春樹さんアンデルセン文学賞 壁築き部外者排除しても自身傷つける

 【オーデンセ(デンマーク南部)=共同】デンマークの「ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞」の今年の受賞者に選ばれた作家の村上春樹さん(67)は三十日、童話作家アンデルセンの出身地オーデンセでの授賞式に出席し、スピーチで「どれだけ高い壁を築き、厳しく部外者を排除し、自分たちに都合よく歴史を書き換えても、結局は自身を傷つけるだけだ」と語った。

 壁や部外者などの意味するところは明言しなかったが、欧州など世界各地で深刻化する難民・移民など「他者」への排斥感情や、歴史修正の動きに警鐘を鳴らしたとみられる。

 村上さんは「影の持つ意味」と題するスピーチで、主人公の影がいつの間にか一人歩きを始め、恐ろしい結末につながるアンデルセンの作品「影」に触れ「個人だけでなく全ての社会と国家には影があり、個人と同様、向き合わなければならない」と指摘。「向き合わなければいつか影はもっと強大になって戻ってくるだろう」と述べた。

 村上さんには賞金五十万デンマーククローネ(約七百七十万円)とアンデルセンの作品にちなんで「醜いアヒルの子」の銅像も贈られた。

 同賞委員会は昨年十一月に村上さんへの授与を発表。「古典的語り口やポップカルチャー、日本の伝統、夢のような現実、哲学的議論を融合させた力量はアンデルセンの功績の継承者にふさわしい」と評価した。

 

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