ドカンと肉、ゴロリとじゃがいも。迫力満点シンプル・ポトフ。
肉やソーセージ、大ぶりの野菜を鍋ひとつでコトコト煮込んだフランスの家庭料理、ポトフ。今回は豚肉とじゃがいもだけで作ります。
豚のかたまり肉を、塩漬けの“塩豚(プティ・サレ)”にするのがレシピのポイントです。
事前の仕込みが必要ではあるものの、いたって簡単です。
平日のどこかで肉を仕込んで、のんびりできる休日に、作ってみてはいかがでしょう。
じゃがいもと塩豚のポトフ
材料(2~4人分)
豚肉(肩ロース) 500g程度
粗塩 15g ※肉の重さの3%
砂糖 7.5g ※肉の重さの1.5%
黒粒こしょう 適量 ※なければ普通の黒こしょうでも可
じゃがいも 4個
マスタード 適宜
1.塩豚の仕込み
豚肉は1/2の長さに切る。
粗塩、砂糖、粗くつぶした胡椒をはかって、混ぜておく。
豚肉と調味料をビニール袋に入れ、全体にしっかりとまぶしつけ、空気を抜いて口をしばり、冷蔵庫で最低3日以上、できれば1週間寝かせる。★1
2. 肉を煮る
袋から肉を取り出し、ボウルに水を入れ15~20分ほど漬けて塩抜きをする。
肉を取り出し厚手の鍋に入れ、肉がかぶる高さまで水を入れ、強火にかける。アクがある程度出たらお玉ですくいとり、弱火に落として、2~30分ごとに水を足しつつ約2時間煮込む。★2
3. じゃがいもを煮る
皮をむいた丸ごとのじゃがいもを肉の脇に入れ、30~40分煮て、じゃがいもが柔らかくなったらできあがり。★3
肉を切ってじゃがいもと一緒に盛り付け、好みでマスタードを添える。
仕込みと煮込みの時間は長いですが、手間はシンプルです。
ポイントは、この3つです。
・豚肉の仕込み
・肉の煮かた
・じゃがいもについて
★ポイント1. 豚肉の仕込み
仕込みといっても、肉を切って、塩、砂糖、胡椒をまぶしつけて冷蔵庫に入れるだけ。わずか10分で終わる作業です。肉の選び方と計量で迷うところを解説します。
肩ロース(上)とバラ(下)
豚肉は、脂身や筋がほどよく入った肩ロースが理想です。脂っこいスープが好きな方にはバラもおすすめです。あっさりしたモモは肉の旨味が少ないので、このスープには向きません。
スーパーで切って売っているものは、きっちり500gではありませんが、大丈夫。塩の量で調節してください。
ただ400g以下だと、煮込んだときのスープが薄くなりがちなので、400g以上をおすすめします。
塩・砂糖・胡椒は混ぜておくとムラになりにくい
塩豚の粗塩の量は、保存性や豚の臭みを抜くことをふまえ、3%で作ります。
肉が500gなら塩15g、肉600gなら塩18gです。
砂糖には肉をしっとり柔らかくしてくれる役割があります。
キッチンスケールが家にない!という方は……
粗塩:大さじ1=15g、小さじ1=5g
砂糖:大さじ1=13g、小さじ1=4g
これを基準に、それより少なめ、多めという感じではかってください。
1~2gの差は、気にせずに。
粒胡椒を使う目的は、時間をかけて香りを肉に移すこと。キッチンペーパーに包み、コップの底などで粗くつぶします。
ビニールの外からもみ込むようにして、んべんなく塩をまぶしつける
空気をなるべく抜いて口を縛り、冷蔵庫チルドルームへ
塩豚は冷蔵庫に最低3日。できれば1週間漬けると肉の余分な水分が抜け塩味もしっかりついて、熟成されます。
塩豚は保存性が高く、スープ以外にもいろいろな料理に使い回せて、覚えると便利な加工肉です。
★ポイント2. 肉を煮る
肉をスープで煮るときのポイントは、「水の量」「アク取り」「火加減」の3つです。
塩漬け後の肉。ビニール袋にたまっていた水は捨てる
ビニール袋から肉を取り出してボウルなどに入れ、水に15~20分ほど漬けます。肉の表面ににじみ出た余分な水分を流しつつ、軽く塩抜きをするためです。
塩抜きした肉を鍋に入れ、新たに1.2Lの水を加えたところ
その後、肉を取り出して鍋に移し、あらたに水を加えて煮ます。煮るときは水をたっぷり注ぎましょう。
胡椒は表面に多少残ると思いますが、そのまま一緒に煮てください。
このレシピで説明が難しいのは「水の量」です。
1.2L程度が目安なのですが、 煮込みの段階で、お肉が水よりでてしまうと均一に火が通らず煮込みがうまくいきません。
ですので、水の量はアバウトでもいいので、 なるべく鍋を適切な大きさのもの(肉がすっぽり入って深いもの)を選んで、 そこに水をひたひたに入れてください。ちなみに鍋の大きさは、径18~22cmが適正だと思います。
まずは強火にかけます。
アクが出はじめてもあわてずに、写真ぐらいまでアクをためてから
強火で煮るとアクが浮いてくるので、ある程度出てくるまでは放っておき、まとめてすくいます。この段階ではまだ肉からうまみも出ていませんから、スープも一緒にすくってしまっても問題ありません。
お玉で鍋の端に寄せてすくうと、まとめてとれる
スープが綺麗になったら、弱火にして蓋をせずに煮ます。ときどきポコッとスープの表面に泡が出るぐらいの感じ。この火加減はミジョテ、と呼ばれます。
弱火で煮る→水が減って肉が顔を出したら水を足す→強火にする→アクをとる→また弱火で煮る……これを3度繰り返すと、アクがほとんど出なくなります。後はミジョテのまま約2時間煮続けます。
アクをとり終わった後も、2〜30分に一度は鍋を確認して水を足す
★ポイント3. じゃがいもを煮る
一年中、同じ顔で並んでいるじゃがいも。ちょうど10月から11月はじゃがいもの旬。春まきのじゃがいもが収穫されて少し落ち着いた頃で、ほっくりとした甘さが楽しめます。
「メークインは煮崩れにくいので煮込みに向く」などと言いますが、このレシピでは、じゃがいもの煮え上がりに合わせて火を止めればよいだけなので、どんな品種でも大丈夫です。
じゃがいもがスープの上に出るようなら水を足す
ホクホクの「男爵」、ねっとりした「メークイン」は定番ですが、男爵系でより甘味の強い「きたあかり」や、小粒で栗のような黄色い肉質の「インカのめざめ」、なめらかな舌ざわりの「とうや」などは、最近は店頭で見かけることも増え、食べ比べてみると楽しい品種です。
煮崩れやすい男爵や小さなじゃがいものときは、表記よりも加熱時間を短めに。串がスッと通るまでやわらかく煮えたらでき上がりです。
以上、3つのポイントでした。
具とスープを分けて盛り付ければ、メイン、つけ合わせ、スープが一度に完成します。
このレシピは、塩漬け肉からしっかりダシがでますので、あまり味付けの必要はないはずです(むしろ、濃いかもしれません)。最後に味を見て、濃ければ水を足して、薄ければ塩を足して調節してください。
ポトフは時間料理です。漬け込む時間、煮る時間が、素材の旨味を引き出してくれます。
時間は要しますが、ご覧の通り、トータルの手間はシンプルです。 ぜひゆったりとした気持ちで、家事の片手間で構いませんので、じっくり時間をかけてスープを作ってみてください。
一度作れば二度、三度と美味しいスープ。きっと、やみつきになりますよ!
肉や野菜をかえても、スタイルはそのまま。
このレシピの良いところは、余分なハーブなどを入れずに作るため味がシンプルで、残った塩豚やスープも和洋中に使える点です。
煮た豚肉は冷蔵庫で2日ぐらい持ちます。そのままカットして食べても、刻んでチャーハンや麺の具、和風の和え物にしてもよい万能ぶりです。すぐ食べられないときは小分けにして冷凍庫へ入れておきましょう。
塩漬けにした肉をじっくり煮込んでスープをとり、そのスープで野菜を煮る。ツーステップに分けてあるから、アレンジもしやすいはず。肉は鶏肉や牛肉にもかえられますし、キャベツ、れんこん、きのこ、だいこん、かぶなど、煮込むと美味しい野菜がこれから旬を迎えるので、お好きな野菜で試してみてください。
鶏もも肉とインカのめざめのスープ
豚肉を鶏もも肉にかえています。鶏の場合、塩漬け期間は1~3日で十分ですし、骨付きでなければ1時間もあれば煮あがります。味の濃いじゃがいも「インカのめざめ」を合わせました。
大根とごぼうの塩豚汁
こちらは残った塩豚とスープの利用法。塩豚は大根やごぼうと同じぐらいの薄切りにして、一緒にスープで煮ます。白髪ねぎをアクセントにしました。日本酒が欲しくなります。
スープのレシピや研究成果を発表している有賀さんのnoteはこちら!