社説 京都新聞トップへ

南スーダン派遣  延長できる情勢なのか

 南スーダンの治安が悪化する中、政府は現地の国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣を来年3月末まで延長することを閣議決定した。
 稲田朋美防衛相は、自衛隊が活動する首都ジュバの情勢は比較的安定しているとの認識を重ねて示した。停戦合意は崩れておらず、日本のPKO参加5原則は満たされているとの立場だ。
 現地では政府軍と反政府勢力の対立が続く。今月8日の稲田氏の視察後も、ジュバにつながる幹線道路や北部マラカル周辺で武力衝突が起き、それぞれ数十人が死傷したと報じられている。前第1副大統領をトップとする反政府勢力側は7月以降、「戦争状態に戻った」と主張している。
 それにもかかわらず派遣を続けるのは疑問だ。5原則は、自衛隊が憲法と国内法の枠内でPKOに参加する上で外せない条件である。停戦合意が崩れれば部隊を撤収することも原則の一つであり、政府は慎重の上にも慎重に現地の情勢を見極めなければならない。国民への十分な説明も必要だ。
 だが安倍晋三首相は、「派遣延長ありき」で手続きを進めているように映る。7月にジュバで270人以上の死者を出した大規模な戦闘について、首相と稲田氏は法的な意味での戦闘行為ではなく「衝突」だと国会で強弁している。
 安全保障関連法で可能になった「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」の新任務を自衛隊に付与することについても、最終判断に向けて政府の調整が進む。離れた所にいる国連職員を武器を持って助けに行ったり、他国軍と一緒に宿営地を守ったりすれば、自衛隊員が戦闘に巻き込まれるリスクは増す。しかし政府は、活動場所を限定し、訓練を重ねることでリスクを回避できるとする。
 現地で活動する人権団体などからは、政府軍兵士による民間人の殺害や女性への暴行が報告されている。仮に、市民が保護を求めて自衛隊の宿営地に詰めかけても、隊員は政府軍に対して武器を使うことができない。憲法が禁じる海外での武力行使にあたるためだ。
 国際社会には、世界平和の実現に向けた日本の貢献への期待がある。だがかつて停戦監視が主だったPKOが変質し、任務が複雑になる中、貢献を焦って法の制約を超えることがあってはならない。
 どのような活動が、日本にふさわしいのか。部隊派遣の「実績」を積み上げる前に、国会でもっと議論を深めなければならない。

[京都新聞 2016年10月26日掲載]

バックナンバー