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【完全版:音声配信&全文起こし】『この世界の片隅に』で声優初主演!能年玲奈あらため、女優「のん」さんに荻上チキがインタビュー▼10月20日(木)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」平日22時〜)

荻上チキ・Session-22

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TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』(平日22時~生放送)
新世代の評論家・荻上チキがお送りする発信型ニュース番組。

今月から始まった新コーナー「Session袋とじ」(毎週木曜、23時40分頃~)では、ゲストを招いて、音楽や本、映画などカルチャー関連の話題を中心に伺います。

10月20日(木)は、こうの史代さん原作のアニメ映画『この世界の片隅に』で声優初主演、能年玲奈あらため、女優の「のん」さんと片渕須直監督にお話を伺いました。(※来週は片渕監督の単独インタビューをお送りします)。

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※放送では時間の関係でカットした部分も含めた完全版の音声と文字起こしです。

初の主演声優を務めて

荻上:荻上です。よろしくお願いします。

のん:よろしくおねがいします。

南部:アシスタントの南部です。

片渕:南部さんは、岩手出身で。

のん:あっ

南部:まずは岩手を代表してお礼を言わなきゃいけないと思って(笑)。本当に、ありがとうございます(岩手なまりで)。

のん:ありがとうございます。

荻上:南部藩の南部なんですよ。

南部:(笑)

荻上:それでは早速、お話、伺わせて頂きます。まず、のんさんに伺いたいんですが。今回、声優としては久しぶり、そして主演としては初めて声優をやってみて、どういう風にお感じになりましたか?

のん:やっぱりすごく難しいお仕事だなっていうのは思いましたね。普段は結構、自分の「身体」とか「表情」を使って演技するんですけど、そういう視覚的な情報とか表現とかを、「声」にのせて言わなくちゃいけないんだなというのを感じて。すごい難しかったですね。でも、やっているうちに面白くなってきて、声優さんはこういうお仕事をやっているのかとすごく興奮しました。

荻上:やってみて、特にこのシーンは感情を入れるのが難しかったなど、印象的なシーンはありますか?

のん:自分ですごい難しいなと思ったのは、「回覧板、回していいですか?」というところ(笑)。あそこがすごい……

片渕:一度、録ってから、あとで「もう一度、やらせてください」って言ってきたんですよね。

のん:なんか、ぶっきらぼうに言ってみるというシーンがちょっと難しかったです。

荻上:(作品全体の中では)日常の、本当に些細なシーンの1つですよね。自分のイメージと違いました?

のん:なんかこう、すずさんの心情は落ち込んでいて、気にしているという風なんだけど、表に出ている表現がなんか機嫌が悪いなみたいな。なんだろうな、ちぐはぐなすずさんを表現するのがちょっと難しかったです。

荻上:内面の葛藤を言葉だけで表現するのは難しいですか。やりやすかった、お気に入りのシーンはどこですか?

のん:私は、(夫の)周作さんとけんかするシーンがすごい楽しかったです。

荻上:電車の中から、列に並んでいるシーンですね。

のん:そうですね。あそこのシーンが楽しかったです。

荻上:それは、どうしてですか?

のん:えっと、なんだろう。すごく、すずさんは最初、違うことで怒っていたのに、なんか、細かいところにまで眼がいって、なんかイライラしてくるみたいな。なんかストーンと入ってきて、楽しかったですね。あと、周作さんの声が入った状態で(アフレコに)臨めたので、その力が大きかったです。

荻上:テンポ感がよかったんですね。

のん:どうですか?

片渕:あとで、はめ合わせても聞いても、2人で夫婦漫才をやっているわけですもんね(笑)。すごくよかったです。

深夜にLINEで演技指導!?

荻上:他の方とのやりとりも多かったと思いますが、掛け合いの部分で難しいと思ったところはありましたか?

のん:えっと、(幼馴染の)水原さんと2人きりになるシーンが難しかったですね。

荻上:どのあたりが、特にそうお感じになりましたか?

のん:なんか、そのシーンがそれまで思っていたすずさんからは想像できないような気がして、戸惑っていて。そこでどうやって解釈すればいいんだろうなって悩んでいたんですけど。そこで現場で手こずっていたときに、監督がすごく、明快にして下さって助かりました。

荻上:監督はどんな指示を?

片渕:絵面だけみるとね、夫ではない幼馴染の男性に、心も体も許しているように見えるんですよ。だけどそうじゃなくて、私はそんなつもりであなたといるんじゃなくて、「あなたと幼馴染だ」と思っているからここで大事な時間を一緒にすごしているんだと。そんな風にあなたが「男」として出てくるのは、私は口では夫のことをいっているけど、あなたのことも怒っていますという心情を込めてね。文字面ではそういう風なセリフではないんだけど、演じてみたら、「すっとしたって、すごいフィットした」って言われたんですね。

荻上:普段はずっとおっとりしているすずさんですが、作品の中で、感情が跳ね上がるシーンが要所要所であった。(水原とのシーンは)その一つですよね。子どもの頃から抑えていた気持ちと実際に対面したときの気持ちのズレみたいな。大人の葛藤みたいなものがあるようなシーンですよね。

のん:そうですね。そのシーンをやる前に、箇条書きにして監督にLINEで質問しまくっていたんですけど。

片渕:夜中に来て、明け方までに返すみたいな(笑)

のん:そういうすごい迷惑なことをしていたんですけど(苦笑)

片渕:とんでもない。

のん:その中で、監督に、すずさんと水原さんの「裏設定」があるんだというのを教えていただいて。

片渕:(すずと水原の2人には)誕生日にまつわる秘密があって。すずさんは学年の4月とか5月に生まれていて、水原哲はすごく後に生まれていて、哲のほうが「月」で言うと年下みたいなことで、6年生ぐらいになって初めて自分より大きくなっちゃったので、それまでは弟分扱いしていたということなんです。それは原作のこうの史代さんが「すずさんの誕生日が」という話で、聞かしてくれた話なんです。

のん:それで、家族、弟みたいに、兄弟みたいなつながりを感じているから、あのシーンで膝枕したりとか、暖を取るためにお布団に入って遊んだりとか。すごく納得して、明快になりました。

荻上:すずにとっては、ずっと年下扱いしていてという感覚があって、一方、水原にとってはどんどん大きくなって、大人になった自分を見てくれと。そういったちょっとズレがあるようなシーンですよね。今回ですが、アニメの主演声優が来た時、最初はどう感じました?

のん:あっ、声優さんだって。すごくびっくりして、原作を読ませて頂いた時にものすごい作品だと思ったので、ぜひやりたいと思いました。

今まで避けていた「戦争もの」を初めて演じてみて

荻上:原作を見て、どういう風に感じましたか?

のん:それまで、戦争というのを、非日常で別次元の時代というか、そういう風に見ていたところがあったんですけど、自分で見ないように通りすぎたところがあって。

片渕:戦争ものだと演じたくないというか、出たくないと言っていたんですよね。

のん:けど、こうの先生の『この世界の片隅に』を読ませていただいて、非日常ではなく、日常と隣り合わせでそういうもの(戦争)があって、その中で、日常を送るのを大切にしている人たちが描かれていて。つらい(19)45年が来て、毎日が巡ってくるというのが描かれていて、そこがすごく新鮮でした。

荻上:戦争という大きなテーマではなくて、日常の中に、戦争があって、だんだんとその日常が変わっていく。それでも日常が続いていく様、それなら演じられるかなと思ったということですか?

のん:そうですね。

荻上:「あまちゃん」でも震災がメインのテーマではなく、まずは岩手の日常生活があって、その日常の大事な生活が震災によって崩れかけたけど、絆や人とのつながりは壊れないということが描かれていましたね。今作も、大きなテーマだけれど、「日常」だからこそ、そういうシーンに感情移入しやすかったというのがあるんでしょうか?

のん:そうですね。別次元でまったく自分の住んでいる世界と介していないみたいに思っていた部分があったんですが、ちゃんとリサーチして節約したりとか、ご飯を作っているときに楽しげにしているときとか、それを食べてくださいと言ったときに自慢げだったりとか、そういうのがすごく、感情移入しやすかったです。

荻上:「戦争マンガ」というイメージではなくて、すずさんという昭和の時代を生きた、一人の女性の日常を描いている。料理をしたりとか喧嘩したりとか、裁縫したりとか失敗したりとか、そういうようなシーンがほとんどなんだけど、時折、挟まれてくる憲兵の威圧的な態度だったりとか、爆弾が降ってきたりのシーンであるとか、そういうものの対比で、戦争って身近なんだと、観ている人にも伝えていくような作品だったりしたわけですよね。今まで、「戦争もの」を避けていたというのは、何か理由はあったんですか?

のん:そうですね。自分がやる理由が、あんまり想像できなかったというか。何だろう。なんていうんですかね。コメディで知ってもらったので、なんか、こう人を笑顔にするというのを大切にしなければいけないと思ってきたので。(でも)そこから言うと、「戦争もの」だからって関係ないんだなというのが、今回の作品で思いました。

南部:広島弁がすごく自然で。『あまちゃん』も、岩手の言葉もすごく自然だなと思って聞いていたんです。どういう風に、体の中に入れたというか、方言に取り組まれたんですか?

のん:広島弁は本当に難しくて、北條サン役の新谷真弓さんが広島市の出身で、方言をテープに入れてくださって、それを聞きながらセリフをしゃべって、日常的にも使うようにしていました。

荻上:そういう風に訓練をして収録に臨まれたということですね。

のん:そうですね。最近でも時々、日常的に出ちゃうんですよね。なんか、「何とかしてもええですか~」って。地元が関西なんですけど、「ええやん」が「ええな」みたいに変わって、最近、広島弁に変わってしまって(笑)

荻上:それだけ、すずになりきっているというわけなんですね。

片渕:元々ね、しゃべり方がすずさんみたいなところがちょっとあって、最初の頃に「こんなこと言ってよ」みたいのが、音楽のコトリンゴさんにも言われていて。

のん:日常的に本当に使っていたんですよ。でも、コトリンゴさんの声もすずさんのイメージなんですよね。

荻上:最後になりますが、今回、戦争というかなり大きなテーマで、観ている方も「戦争もの」でもあるというかたちで見る方もいるかと思いますが、観る方にどう感じてほしいですか?

のん:どんな時でも毎日が巡ってきて、日常を送るということをしなくちゃいけないというか、普通の生活とか、普通に生きていくということが、すごく素晴らしいというのを私は思ったので、そういうところを感じていただけたらと思います。

荻上:全体的にユーモラスで笑顔にさせるようシーンがとても多い中で、でも笑顔が奪われていくという残酷さに見える人も感じ入ることが多い作品、日常とか笑いの大事さというのが逆に伝わる作品だと思いました。のんさん、監督、ありがとうございました。

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※来週(10/27 木)「袋とじ」では、片渕須直監督にじっくりと伺います。お楽しみに!

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©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
11月12日 (土)テアトル新宿・ユーロスペースほか全国公開

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス)この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)この世界の片隅に : 下 (アクションコミックス)

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