【コラム】1979年、1997年、2016年の深刻なリーダーシップ空白

 このところ韓国国民が報道を通して見聞した「陰の実力者」崔順実氏の浅薄さは、道を歩いていてたまたま出くわすのすら嫌になるほどのものだった。「学校を欠席するな」と指摘する娘の先生のところへ、カネの入った封筒とショッピングバッグを持って通い、大学の指導教授を訪ねて「こんなやつがいるか」とののしり、揚げ句に権力をかさに着て130年の歴史ある名門私大の梨花女子大を廃虚にした。その娘は「能力がないなら親を恨め。カネも実力」と言って、同じ年ごろの仲間を完全に無視した。大統領の「バック」を信じて、好感度のない母娘が自分勝手に振る舞ったせいで、国民全体がこの母娘に愚弄(ぐろう)されたような気分だ。このとんでもない母娘の起こした事件は、これだけにとどまらない。国の仕事をやるという名分を掲げて企業をねじふせ、数百億ウォン(100億ウォン=現在のレートで約9億2000万円)規模の財団をつくり、その資金で、口に出すのもはばかられる逸脱をした娘をドイツに雲隠れさせ、後援のカネのつてまで用意してやった。韓国大統領府(青瓦台)で崔順実氏を見た人間はいないが、内輪のよく知っている人間を何人か江南に呼んで国政を議論し、青瓦台の資料で人事ファイルの報告まで受けていたとあって、あきれるばかりだ。青瓦台のブレーンに食い込み、政府の官庁を操り人形にして、「崔順実による、崔順実のための、崔順実の」政府と化していることを、朴大統領は本当に知らなかったのだろうか。

 朴大統領が父親の死去後に書いた日記に、こんな一文が登場する。「今は優しくて親切な人が、実はすさまじく利にさとい人でないと、誰が断言できるだろうか……無情な人間関係」(81年3月2日)。「水の深さは測れても、測り難きは人の心という言葉がある。何度か会っただけでその人となりが分かるのが人だが、何年会っていてもその本当の姿が分からないのもまた人だ。おめでたいふりをしつつ内心では別の考えを持ち、背後で陰謀を張り巡らした陰険な人物を覚えている」(89年1月13日)。

姜京希(カン・ギョンヒ)論説委員
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