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ツヴァイテリーガはいまだかつてないほど活気に満ちている。観客動員数は伸び続け、他国の強豪を凌駕するほど。その現状と、輝きを放つ日本人選手とは? ドイツに精通するサッカージャーナリスト、遠藤孝輔氏が解説する。

今夏にローンチされた動画配信サービス『DAZN』の中継により、日本のサッカーファンにも身近な存在になったのがツヴァイテリーガことドイツ2部リーグだ。シュトゥットガルトの細貝萌と浅野拓磨、ザンクトパウリの宮市亮、カールスルーエの山田大記、フォルトゥナ・デュッセルドルフの金城ジャスティン俊樹と、5人の日本人プレーヤーが所属しているこのコンペティションは今、ドイツでも空前の活況を呈している。

それを如実に表しているのが平均観客動員数だ。2季ぶりに1万人の大台を突破した04-05シーズンを皮切りに右肩上がりの曲線を描くと、昨季は過去最多の1万9155人をマークした。動員数の上昇はとどまるところを知らず、10節終了現在でブラウンシュバイクが単独首位に立っている今季は2万1215人を記録している。

最も集客数が多いのは、5万人収容のメルセデス・ベンツ・アレーナをホームスタジアムとするシュトゥットガルトだ。41年ぶりに2部リーグを戦うという逆風に晒されながら、ここまで収容率96.9%の4万8450人(チェルシーやユベントス以上!)と驚異的な集客力を誇っている。チケット料金の安さはあるにせよ、特筆に値する数字だろう。

その熱狂ぶりに感銘を受けた様子を見せたのが、今夏からツヴァイテリーガに参戦しているシュトゥットガルトの浅野だ。9月21日付けの公式ブログでこう綴っている。

「今回の試合は平日の17時30分キックオフにもかかわらず3万6000人程のファンが応援しにスタジアムに来てくれたこと、サッカーの素晴らしさを改めて感じました」

■屈強な選手たちに見劣りしない細貝

肝心のパフォーマンスレベルに目を向ければ、当然ながらブンデスリーガ1部との間には大きな溝が横たわる。洗練されたモダンサッカーを展開しているチームは少なく、個人とりわけ攻撃陣の能力によって、勝敗が左右されているケースが大半だ。もちろん、信じがたいような凡ミスを目の当たりにすることも珍しくない。

ただし、空中戦を含めた球際における攻防は目を見張るものがある。185cmオーバーの屈強なプレーヤーがザラにいるうえ、ツヴァイカンプフ(一対一)の文化が根付いているため、パワーをはじめとするフィジカル的な側面、純粋な迫力はJリーグのそれを大きく凌駕している。GKの全体的なプレー水準も上回っているだろう。

そうした環境下で異彩を放っているのが細貝だ。公称のサイズは177cm・68kgながら持ち前の危機察知能力の高さを活かし、相手との競り合いで後手に回ることなく、むしろ身体的なハンディキャップを感じさせない堂々たるプレーを披露している。

『DAZN』の独占インタビューで「縦パスへの意識」を口にしていたとおり、攻撃にも積極的に関与している。目立っているのはシンプルな左右への展開ではなく、ズバッと相手の懐に突き刺さるクサビのパスだ。

細貝の充実ぶりは老舗『キッカー』紙の平均採点(1が最高で、6が最低点。0.5刻みの評価)からも明らか。シュトゥットガルトのフィールドプレーヤーでは、ルーマニア代表のMFアレクサンドル・マキシムに次ぐ二番手の3.17をマークしているのだ。

9月下旬に「私が(10月のロシア・ワールドカップ最終予選に向けて)呼んだ中盤の選手と比較して、パフォーマンスが上かなという感じはしない」と、細貝を評していた日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の評価にも変化が生じているだろう。10月中旬に右足小指を骨折したため、11月15日に控えるサウジアラビアとのホームゲームに招集される可能性は低いが、代表復帰への扉を開きつつあるのは確かだ。

日本代表入りを目指しているのは、ザンクトパウリの宮市やカールスルーエの山田も同様だろう。前者は直近のザントハウゼン戦で筋肉系のケガから復帰を果たし、後者は新監督からの信頼をようやくつかみつつある。まだ目ぼしい成果を挙げられていないとはいえ、ここにきて上昇気流に乗っているのは事実。今後の巻き返しに期待が懸かる。

文=遠藤孝輔

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