この記事は、2016 年 10 月 24 日付で Mozilla Security Blog に投稿された Distrusting New WoSign and StartCom Certificates(筆者: kwilson)の翻訳です。この翻訳は公式なものではありません。詳しくはこちらをご覧ください。
WoSign という認証局(CA)が技術面と運用面において多くの失態を犯していたこと、より深刻なことには、2016 年 1 月 1 日をもって SHA-1 SSL 証明書を発行できなくなる期限を回避するため、発行日を古い日時に改ざんして証明書の発行を行っていたことを Mozilla は確認しました。さらに、別の CA である StartCom の所有権を WoSign が完全に保有しているにも関わらず、Mozilla の要求するポリシーに反してこの事実を公開していなかったことも判明しました。WoSign と StartCom の担当者は、これらの瑕疵を証明するに足る十分なデータが集まるまで、今回の事件について否認し続ける姿勢です。両社の担当者が行った詐欺行為の程度を鑑みた結果、現在登録されている WoSign と StartCom のルート証明書にチェインが繋がる証明書が今後発行された場合、その証明書に対する信頼を破棄することとしました。
Mozilla が講じている具体的な施策は以下の通りです。
- notBefore の日付が 2016 年 10 月 21 日より後であり、かつ以下に示す当該ルート証明書にチェインが繋がる証明書への信頼を破棄します。この措置の迂回を目的とした日付の改ざんが(どのような形であれ)判明した場合は、当該ルート証明書を Mozilla は即座に、かつ永久的に失効させることとします。
- この変更は Firefox 51 のリリース予定 に合わせて反映されます。
- 今回の措置が当該ルートのクロス証明書にも適用されるよう、当該ルート証明書を識別する Subject Distinguished Names には以下の値を用います。
- CN=CA 沃通根证书, OU=null, O=WoSign CA Limited, C=CN
- CN=Certification Authority of WoSign, OU=null, O=WoSign CA Limited, C=CN
- CN=Certification Authority of WoSign G2, OU=null, O=WoSign CA Limited, C=CN
- CN=CA WoSign ECC Root, OU=null, O=WoSign CA Limited, C=CN
- CN=StartCom Certification Authority, OU=Secure Digital Certificate Signing, O=StartCom Ltd., C=IL
- CN=StartCom Certification Authority G2, OU=null, O=StartCom Ltd., C=IL
- 日付の改ざんされた SHA-1 証明書であり、かつ当該ルート証明書にチェインが繋がる既知の証明書を OneCRL(参考:日本語訳)に追加します。
- Ernst & Young Hong Kong による監査記録を今後受理しません。
- 将来のある時点において、当該ルート証明書を Mozilla のルート証明書一覧 から削除します。今回の CA による新しいルート証明書の登録が認められた場合には、証明書の取得者を新しいルート証明書へ移行させる CA の行動計画を確認した上、旧ルート証明書の削除日時を調整します。この条件が満たされなかった場合には、2017 年 3 月以降のある時点を削除日時とします。
- 追加または代替となる施策を講じる権利を Mozilla は有します。
どちらかの CA から 2016 年 10 月 21 日以降に証明書を取得していた場合、異なる Subject Distinguished Names の新しいルート証明書が発行元 CA から提供されない限り、またはチェインが繋がっている当該ルート証明書を手動でインポートしない限り、取得した証明書は Firefox 51 などの Mozilla 製品で利用できなくなります。web サイトの利用者についても、新しいルート証明書が Mozilla のルート証明書一覧にデフォルトとして登録されるまで、自分で新しいルート証明書をインポートする必要があります。
WoSign については Bug #1311824 で、StartCom については Bug #1311832 において(既存のものを置き換える)新しいルート証明書の再登録申請を行うことができます。
今回の措置は Mozilla のポリシーと一貫性を持つものであり、また Mozilla's CA Certificate Policy や CA/Browser Forum's Baseline、Mozilla の担当者による直接の問い合わせに対し、他の CA が同じような詐欺行為を働いた場合にも適用されるものと考えています。
Mozilla Security Team