◇交渉開始決議案が採択も日本政府は反対
国連総会第1委員会(軍縮)で日本時間の28日朝、2017年の「核兵器禁止条約」制定交渉開始を定めた決議案が賛成多数で採択され、被爆地・広島からは歓迎の声が上がる一方で、日本政府が反対に回ったことに対して、痛烈な批判が相次いだ。
広島市の市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」共同代表の森滝春子さん(77)は「採択は大きな前進。123もの国が賛成し、本当にうれしい」と喜んだ。一方、反対した日本政府には「賛成に転じる余地を残した棄権と異なり、明確な妨害行動。『核保有国と非核保有国の溝を埋める』と主張しているが、実際には溝を深めているだけ」と厳しく批判した。
広島県原爆被害者団体協議会(広島県被団協、坪井直理事長)の箕牧智之(みまき・としゆき)副理事長(74)も、日本政府の態度に落胆。「被爆国の日本すら米国寄りの考えで、被爆者は悲しく悔しい。非核保有国からも非難を浴びるだろう。被爆者は高齢だが、命のある限り核兵器廃絶を訴え続ける。日本政府には、私たちを勇気づけてくれるような発言と行動をしてほしい」と望んだ。
もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(76)は「けしからんの一言。日本は被爆国であることを強調してきたのに、米国にべったり。ただ、核兵器廃絶の機運が世界に広がっているのは、被爆者の運動が無駄ではなかったということ。今後は日本政府を変えていかなければいけない」と話した。
一方、広島市の松井一実市長は岸田文雄外相に宛てて、「日本政府が反対したことは、被爆者の思いに背くものであり、極めて遺憾。戦争被爆国として、全ての国連加盟国により建設的な議論が行われるよう力を尽くすことを強く要請する」とする書簡を提出した。【竹内麻子、竹下理子】
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