« 高橋琢磨『21世紀の格差』、本田重道『なぜ、私の歳をきくの?』 | トップページ | ジョブ型雇用は万能薬か?@佐藤博樹 »

2016年10月28日 (金)

発達障害者が働きやすい職場は「ジョブ型雇用」

ベネッセ総合教育研究所のサイトに、東京大学先端科学技術研究センター 近藤武夫准教授による「発達障害のある人たちの就労に関わる問題」というインタビュー記事が載っています。

http://berd.benesse.jp/special/co-bo/co-bo_theme4-2.php

その中に、こんな一節がありました。

多くの大学生を悩ませる就職活動だが、発達障害のある子たちにとっては、障害ゆえの悩みが発生する。その背景にあるのが、知識やスキルよりも「コミュニケーション能力」を重視する企業の選考姿勢だ。

多くの日本企業の選考では、他者とのコミュニケーションをうまくとれる人が有利であり、それゆえに発達障害のある人の一部は非常に不利な状況に立たされると近藤先生は話す。「日本型の新卒採用では、職務を明確に定めない雇用契約が一般的です。そうすると、採用の段階でもとにかく学生本人の側に『自分を売り込む』ことが求められ、そのためのコミュニケーション能力レベルが合否に大きく影響します。」

それはどこでも一緒じゃないか、と思う人もいるかも知れませんが、さにあらず。

しかし、世界に目を向ければ、こうした日本の選考姿勢は決して一般的とはいえない。

欧米型の組織では、採用の段階で組織の求めるスキルを明確に示したジョブディスクリプション(職務定義書)が提示され、応募/採用はこのディスクリプションをもとに行われるのが一般的。働き始めてからの評価や人事管理もジョブディスクリプションに基づいて行われ、職務内容も明確だ。こうした組織では、コミュニケーション能力が求められるのはあくまでもジョブディスクリプションにそうしたスキルが明示された職種のみであり、すべての人材に対して高いコミュニケーション能力が求められるということはない。言い換えれば、コミュニケーション能力に自信のない人は、そのほかのスキルや経験を磨くことで、自分に合った仕事を見つけていくことができるといえる。

もうひとつの日本型採用の特徴が、特に新卒での入社時にはなんでもできるジェネラリストが求められるという点だ。「多くの日本企業にはジョブローテーションがあるので、いろんな業務をまんべんなくできる人が期待されます。新卒採用時には『この仕事ができますか』という具体的な質問ではなく、『あなたは何ができますか』という漠然とした質問をされるんです。」こうした質問に答えるのは、障害のあるなしにかかわらず難しい。ましてや、コミュニケーションに困難を覚える発達障害のある人にとって、このような採用試験を経て内定を得るのは至難の業だと近藤先生は話す。

おやおや、発達障害者の採用はジョブ型社会とメンバーシップ型社会ではずいぶん置かれた位相が異なるようです。

そう、近藤さんはジョブ型雇用が発達障害者にとって働きやすい職場だというわけです。

では、どのような仕組みや制度があれば、発達障害のある人も働きやすい職場となり得るのだろう。ひとつの例として、近藤先生は具体的な仕事内容と、それに対する賃金が明確に示されている「ジョブ型雇用」をあげる。「規定の仕事をしっかり遂行することができれば、年齢がいくつだろうと、障害が何だろうと、仕事の成果に対してきちんとした報酬が支払われるという雇用環境。障害からくる困難への環境調整があり、職務が明確な職場であれば、発達障害のある人も今より働きやすい環境がつくれるはずです」と近藤先生は言う。

もっと言えば、発達障害者に限らず、およそ障害者雇用というのはジョブ型雇用でしか進められないものではないかと思います。そもそも、会社がやれということを何でもやれるような健常者ではないから、ある部分は障害のためにできないけれども、ある部分は他の障害にもかかわらずきちんと仕事ができるということを前提にして、その部分をしっかり使って仕事をしてねということで障害者雇用というのは成り立っているのですから、そもそも無限定雇用というのは原理的にあり得ないはず。

|
|

« 高橋琢磨『21世紀の格差』、本田重道『なぜ、私の歳をきくの?』 | トップページ | ジョブ型雇用は万能薬か?@佐藤博樹 »

コメント

>発達障害者に限らず、およそ障害者雇用というのはジョブ型雇用でしか進められないものではないか

私の経験と合致する(笑

発達障害の人を雇うと、その人の精神状態や意思疎通を気遣うという無駄な労働が生じ、しかも本人は常に周囲に喧嘩売ってる状態で仕事にならない。

結局、発達障害の人にお金払って世話をしている状態で、何のために雇用されているのか?本末転倒になっていた。

障害者の「可能性」を追求するのは自由だが、それを雇用政策でやると悲惨なことになる。

厚労省の出先機関で発達障碍者「虐待」と言われる件があったが、あれで処分された人に同情する。

職場は学校や介護施設ではないと理解してほしい。

投稿: 阿波 | 2016年10月28日 (金) 21時21分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/68154195

この記事へのトラックバック一覧です: 発達障害者が働きやすい職場は「ジョブ型雇用」:

« 高橋琢磨『21世紀の格差』、本田重道『なぜ、私の歳をきくの?』 | トップページ | ジョブ型雇用は万能薬か?@佐藤博樹 »