【大阪府警機動隊員の差別的発言】沖縄県議会バトル詳報(上)「抗議参加者は何をやっても構わないのか?」 自民党県議が県政与党会派の意見書を批判
沖縄県の米軍北部訓練場(東村、国頭村)のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)移設工事の警備にあたる大阪府警機動隊員が工事反対派に「土人」と発言した問題で、自民党沖縄県議団は28日、反対派による警察官への暴言を列挙した意見書案を県議会に提出した。「戦争に行って死ね」「おまえらは犬だから言葉も分からん」「ナメクジでも食うとれ」-。意見書案は否決されたが、本会議の審議では、警察官に対する反対派からの信じがたい暴言の数々が明らかにされた。詳報は以下の通り。
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≪自民党提出の意見書案の審議に先立ち、「土人」発言に対し「沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじる」と抗議する決議案と意見書案が審議された。翁長雄志知事を支持する県政与党会派「おきなわ」の新垣光栄県議は、提案者として意見書の意義を次のように説明した≫
「東村高江では、県外から派遣された500名の機動隊員による警備のもと、米軍のヘリパッド建設が進められている。10月18日、県外から派遣された機動隊員が市民に対し、『土人が』と発言し、さらに、別の隊員が『黙れこらシナ人』と発言していたことが発覚し、県民に大きな衝撃を与えた」
「沖縄県警は、19日に発言を事実と認め差別用語として取られかねない不適切な言葉だとの見解を示し、謝罪をしている。『土人』という言葉は、未開、非文明といった意味の侮蔑的な差別用語であり、『シナ』とは戦前の中国に対する侵略に結びついて使われていた蔑称である。この発言は、沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじり、県民の心に癒やしがたい深い傷を与えた」
「沖縄戦では本土防衛の捨て石にされ、戦後27年間は本土から切り離され、米軍占領下に置かれ、そしていまなお全国の米軍専用施設の面積の74%が集中している下で、沖縄県民は、基地があるゆえの事件事故に苦しめ続けられてきた。今回の発言は沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いた」
「法を守り、市民および県民の人権を守る先頭に立つべき警察官であるべき機動隊員による抗議参加者に対する一連の発言に対し、県内外から、多数の非難が出ており、不信感が広がっている事実を警察関係者は真摯に受けとめるべきである」
「よって、県議会は市民および県民の生命および尊厳を守る立場から、沖縄に派遣されている機動隊員らによる沖縄県民に対する侮辱発言に厳重に抗議するとともに、このようなことが繰り返されないよう、強く要請する」
≪これに対し、自民党の照屋守之県議は「県議は現場の反対派住民ではない」「冷静に分析してその発言の本質、問題の根本も含めて考えていく必要がある」と切り出し、こう言葉を続けた≫
「県民侮辱発言の意見書、抗議を採決をする本当の目的は何か、教えてください。何がゆえ県議会でこの1つの発言をとらえて抗議をし、要請するのか。表面的なではなく本当の提案者の目的を教えてください」
≪照屋氏はさらに、以下のような疑問点を列挙していった≫
「意見書案のタイトルだが、『県外機動隊員による沖縄県民侮辱発言』との表現であるが、高江における機動隊員の発言は確かに不適切であり、沖縄県警本部長もわびて、警察官は処分をされている。しかし、この発言をとらえて沖縄県民に対する侮辱とは、事実とは異なっている。提案者の一方的な思い込みではないか。タイトルを変更した方がよいのではないか」
「なぜ、現場における反対住民と警察官の発言のやり取りが沖縄県民に対する侮辱発言に発展するのか、理解できない。多くの県民が疑問を持っている。日本政府と国民も、誰も沖縄県民を侮辱していない。差別意識もない。県民も差別されているという意識は持っていない。なぜ、あえて、このような表現を使うのか」
「県民は北部訓練場の返還、沖縄県の基地の整理縮小を望んでおり、翁長知事も、返還は歓迎している。県民の願いは、現場が混乱することなく、基地の返還が行われることだと思う」
「国は、北部訓練場の4000ヘクタールの返還と、沖縄県の基地の整理縮小を進めている。このことは、県民の願いでもある。この発言が『県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いた』とする表現は到底理解しがたい。日本国民と沖縄県民を分断させる目的があるのではないか。この表現の意図する意味をご説明をお願いします」
「警察は、反対派の皆さまの表現の自由に配慮する。公安委員会も警察も大変な気の使いようである。『抗議参加者は何をやっても構わない』『違法行為は黙認しなさい』。そういう立場での提案ですか? ご説明を願います」
≪これらの疑問点に対し、共産党の渡久地修県議は次のように答えた≫
「やっぱり、この発言は沖縄県民全体に向けられた発言だというふうにとらえ、県議会として、これは意思の表明をすることで必要ではないかということで委員会でも議論してきた。ぜひできれば、全会一致でこれは県議会としての意思を示す必要があるのではと私たちは努力してきた」
「すでに警察本部長、警察官も処分されているということで、それだけでよいのではないかということだが、これに対しては確かに官房長官とか防衛大臣も不適切だったと発言し、謝罪もしている。ですから、県議会としても県民の代表機関である県議会が、しっかりと意思を表明する必要があるのではないかということで一致して動いてきた」
「『土人』という言葉、これは文案にも書いてあるが、非常に侮蔑的な発言である。そして『シナ』という言葉も、中国に対する蔑称というふうに、閣議決定で使わないということも決めたが、そういう意味では非常に、これも公務員である警察が発したということで、県民は非常に衝撃を受けているので、繰り返しになるが、県議会としてしっかりと意思を表明する必要があるのではないかということである」
「今回は、北部訓練場の返還問題にではなく、この発言に対して、これは許せないぞとの意見書なので、そういうことでご理解願いたい」
「沖縄の歴史は、皆さんすでにご承知の通り、あの戦争で20数万の貴い命が奪われ、県民の4人に1人が犠牲になって、戦後27年間、米軍の占領下にあって苦しめられてきた。そういう意味で、そして今も74%、全国の基地の専用施設が押しつけられている下で、本当に平和な沖縄を願ってきている。そういう意味では、この沖縄県民の苦難の歴史を一瞬にして打ち砕くのではないかなと思っている。私たちの思いですから、ご理解頂きたい」
「圧倒的な権力を持った公務員である警察官の発言と市民の発言は同列に扱ってはいけないと思う。同列ではないと思うので、私たちは本当に、法を守る、そういう立場でやる人たちを、私たちは何も、この市民の不適切発言、そういったものがあったとしたら、それを問題にしないということではなくて、県議会としては、しっかりと公務員としての警察官の発言に対しては、しっかり抗議するという立場である」
≪その後、決議と意見書は県政与党会派などの賛成多数で可決された。続いて、警察官に対する反対派の暴言が列挙された、自民党提出の意見書案の審議が行われた≫
=詳報(下)に続く