米国の肝臓ドナー 移植で命救った女性が妻に
- 2016年10月28日
米イリノイ州のクリストファー・デンプシーさん(38)は、約1年8カ月前に全くの他人に肝臓移植のドナーになると申し出た時、この経験が人生を変えると分かっていた。
しかしながら、まさか自分が将来の妻の命を救うのだとは思いもしなかった。
デンプシーさんがヘザー・クルーガーさん(27)に初めて電話をし、ドナーを申し出てから2年足らずで2人は結婚した。
元海兵隊員のデンプシーさんは、シカゴの南にあるフランクフォート村の警官だ。デンプシーさんが職場の休憩中にたまたま耳にした会話から、このラブストーリーは始まった。
「ある同僚が、いとこが肝臓移植のドナーを探している、と話していたんです」とデンプシーさんはBBCに語った。
そのいとこがヘザーさんだった。末期の肝臓がんで「ステージ4」まで進行していた。2年におよぶ闘病の後、肝臓移植を受けなければ2カ月先の生存率は5割だと医師に宣告されていた。
家族は必死になってドナーを探した。しかし、11万9000人以上の人が移植の待機リストに載っている米国でドナーを見つけるのは非常に難しい。
デンプシーさんは「もし自分がそうだったら、自分や家族を助けてくれる人を見つけたいだろうなって思った」という。
デンプシーさんがドナーとしての適合検査を受けたところ、ヘザーさんと合致していると分かった。
2人が初めて会話したのは2015年2月初旬、ドナーになれると告げるためデンプシーさんがヘザーさんに電話した時だ。
ヘザーさんがのちにデンプシーさんに語ったことだが、電話をもらったヘザーさんと母親は喜びのあまり涙を流したという。
電話の後、ほどなくしてデンプシーさんはヘザーさんを昼食に誘い、ごちそうした。
後悔なし
移植準備をする数週間、2人は一緒に時間を過ごすようになった。デンプシーさんのバイクサークル仲間は、移植手術の費用を助けるため募金運動を展開した。
デンプシーさんはこう振り返る。「募金活動を一緒にやっているうち、考え始めたんです。とってもいい人だなって。もっと彼女のことが知りたいなと」。
イリノイ大学病院で手術を受ける日、3月16日がやって来るまでに2人はすでに何度かデートを繰り返していた。しかし、正式なプロポーズは手術が終わってからにしようと決めていた。
「すべてうまくいくと確信していた」とデンプシーさんは話す。「それでも緊張していた。(何か間違いがおきる)可能性が全くないわけじゃない。だけど、決めたことを考え直そうとは思わなかった」。
「彼女の手術がうまくいったと聞いて本当にうれしかった」
それから8カ月後、シカゴ市内の馬車の上でデンプシーさんはヘザーさんにプロポーズした。結婚式を挙げた時には、移植手術の日から1年7カ月近くが立っていた。
「これまでの経緯もあって、強い感情が湧き起こった。彼女とご両親はもっとそうだったかもしれない」とデンプシーさんは話した。
「(ドナーに)同意した時は、結婚するなんて夢にも思わなかった。信じられない」