検索サイト「グーグル」で氏名を検索すると10年以上前の振り込め詐欺事件の逮捕歴が表示されるとして、東京都内の会社社長の男性がグーグルに検索結果の削除を求めた訴訟で、東京地裁は28日、請求を棄却した。岡崎克彦裁判長(鈴木尚久裁判長代読)は「振り込め詐欺は現在も被害が大きく、逮捕事実は公共の関心事。インターネット上での表示は公益性がある」と判断した。男性側は控訴する方針。
男性の逮捕は10年以上前だが、判決は「執行猶予期間満了から5年程度しか経過しておらず、公共の関心が薄れたとは言えない」と指摘。逮捕情報を他人に知られる不利益は認めつつも「社長という社会に影響を与える地位にあり、信用を判断するために逮捕情報をインターネットで低コストで知ることができる点は公益性がある」と判断した。
男性は東京地裁に検索結果削除の仮処分を申し立て、別の裁判官が昨年11月に削除を決定。グーグルが正式に裁判を起こすよう求め、男性側が提訴した。
男性の弁護士によると、検索結果削除を命じる仮処分決定はこれまでも複数出ているが、正式裁判の判決では認められた例がない。弁護士は「今回の判断に従えば、男性は社長である限り、何年たっても逮捕歴の記事を削除できないことになる」と批判した。
グーグルは「知る権利と情報へのアクセスを尊重した判断であると考える」とコメントした。【伊藤直孝】