厚生労働省は28日、戦後の旧ソ連・シベリアで抑留中に死亡した日本人の遺骨収集事業で、DNA鑑定前の遺骨の歯61柱分を、現地で誤って焼失したと発表した。作業に派遣されていた厚労省職員が管理を怠り、ロシア人作業員が誤ってたき火にくべたとみられる。同事業で遺骨を焼失する不祥事は初めて。同省は近く、関係する遺族183人に謝罪する。【山田泰蔵】
遺骨を収集した埋葬地は、ハバロフスク地方のコムソモリスク市にある第3762野戦病院スタルト居住地区第1墓地と第2墓地。今月11~21日に収容した遺骨からDNA鑑定のための歯61柱分を採取した。
22日に鑑定に使用しない遺骨の焼骨式を実施。その際、厚労省職員が鍵の付いた保管コンテナから鑑定用の歯61柱分を取り出してポリ袋に入れ、テーブルに置いた。しかし、式後に袋がなくなり、すぐ近くのたき火の中から焼けた歯が見つかった。ロシア人の作業監督者が「作業員が、暖を取るために誤って入れたかもしれない」と謝罪したという。
現地作業員に遺骨の保管方法などの説明はしていなかった。焼失によって、61柱分の鑑定が不可能になり、身元を明らかにすることができなくなった。
吉田和郎・同省事業課長は「遺族の皆様に多大なご迷惑、ご心配をかけた」と謝罪した。
遺骨の管理方法をマニュアルに明記し、現地作業員にも周知するなどの再発防止策を示した。