大統領選ではローマ法王への暴言も(写真は大統領選時のロドリゴ・ドゥテルテ氏)〔AFPBB News〕
ロドリゴ・ドゥテルテ氏は現在のフィリピンの大統領だ。今年5月に就任してから日本でも異例の注目を浴びているため、よくご存知の方も多いだろう。
この大統領は自国において就任から3か月経過した9月時点で86%もの支持率を誇っているという。日本においては彼に対する好意的な報道は少ないため、なぜフィリピン国民から熱狂的に彼が支持されているのか私は疑問に感じていた。
この10月フィリピンの首都マニラを訪問した。そこで彼の人気の一端に触れる機会があった。
以前から親しくしている現地の医学生ダイアンとレストランで食事をとった時のことである。ウェイターが「DUTERTE」と名前が入ったリストバンドをつけていたので、私は「大統領のファンなのですか」と尋ねてみた。
すると彼は「俺は彼が市長を務めていたダバオ市の出身なんだ。彼は地元の英雄だよ。」と笑いながらそのリストバンドを私にくれた。
貧困層からの支持は絶大だが・・・
ダバオ市において彼が市長を務めていた22年間の間に犯罪が激減したのは有名である。その他、麻薬犯罪の撲滅や深夜の酒類の販売禁止、公共の場所での喫煙の禁止など特筆すべき業績を多数挙げている。また汚職を嫌い質素な生活を送っていることでも尊敬を集めていたという。
大統領となった現在、貧困や犯罪、汚職を撲滅するという彼のメッセージは多くの国民に支持されている。実際、フィリピン滞在中機会があるごとに現地の方々にドゥテルテ大統領について尋ねてみたが、誰一人として彼のことを悪く言う人はいなかった。
ただし、よくよく話を聞くと、彼に対する支持は社会的な背景によって異なっているという。彼を熱狂的に支持しているのは貧困や飢えなど現状の政策において十分な恩恵を受けていない人々である。
一方で、知識層や経済人には彼を支持しない人も多い。米国をないがしろにする外交姿勢や彼が容認する超法規的な殺人が理由である。
実際、フィリピン出身の弁護士の友人はドゥテルテ大統領の犯罪対策は人権を軽んじるものとして強く非難していた。とは言え支持率が90%前後を推移しているというのは国民が総じて彼の働きを支持しているということの裏づけである。
特に市長時代にも見せていた行動力や実行力が評価されているようだ。ではなぜこの時期に彼のようなリーダーが必要だったのだろうか。
それはこの国にはびこる貧困が大きく関係している。恥ずかしながら 私は貧困がフィリピンにおいてここまで大きな問題であることを知らなかったし、そもそも考えたこともなかった。
なぜならば近年のフィリピンはコンスタントに6%前後のGDP(国内総生産)成長率を誇っているからだ。特に先代のベニグノ・アキノ3世大統領のもと、フィリピンは東南アジア諸国のみならず世界において最も発展が著しい地域の1つに数えられていた。