ジャッキー・チェンの映画は、少年時代の私たちにとって、必須科目のごとく、絶対に見ねばならぬものだった。
テレビ放送を見逃せば、翌日の学校で、友人たちのハイテンションについていけなくなる。
あれからとっくに大人になった私だが、彼がいまだに現役で、気になる役者であり続けているというのは、驚くべきことだ。
今回観たのは、『ドラゴン・ブレイド』。
シリアス路線は『新ポリスストーリー』あたりからあったが、いつまでたってもコメディの印象が色濃い。
観客である私自身が、そういったもの「ばかり」を期待しているからかもしれない。
本作『ドラゴン・ブレイド』は、紀元前中国の、国境付近を舞台にした大作である。(とはいえ、あんまり話題にならなかったよね?)
ローマ軍との合戦や友情が描かれるという。
現代ではなく、時代物として東西の交わりを描く作品は、活劇としては、まれな存在ではなかろうか。
けっこうな期待を持って私はのぞんだ。
夢の東西対決にワクワク!『ドラゴン・ブレイド』実況風評価感想
全四幕構成と解釈。
第一幕:プロローグ
紀元前のシルクロード、中国地方の国境付近。
異民族間の、騎馬隊同士の合戦シーンから物語は始まる。
そこに、中国の国境警備隊のジャッキーが割り込んで、止める。
「ちょっとお前ら、ストッピング! 争いはやめれ!」
「なんだこのやろう。まあ、ちょっと待ってやるわ」
一時的にでも止められるのがすごいわ。
あごひげジャッキーは、目つきも憂鬱で、この作品がコメディではなく、シリアス調であること強調している。
(アイラインとか入ってる?)
争いは止めきれず、なぜかジャッキーが、覆面の女戦士とタイマンに。
ジャッキーが絡むアクションは、リアル格闘とジャッキー格闘が混ざってて、違和感あるかも。
(ジャッキーがアクション監督をしてるらしい)
女戦士の胸をうっかりさわってしまったりと、コミカルは、ないわけではない模様。
女戦士「胸をさわったうえに、あたいの素顔を見たからには、お嫁にもらってもらわねば!」
おい、シリアスに徹してくれよ……。
*
数日後、ジャッキーを筆頭とした警備隊は、何者かの陰謀により、犯罪者として、流刑地に送られてしまう。
ジャッキーは、仲間からは信頼される誠実なタイプだが、それゆえに、邪魔者と判断する者もいるようだ。
奴隷的な労働者階級として、西側からの守りの要、「砦」の修復をさせられることに。
そこにはいろんな部族の奴隷がいて、もめたり、ケンカしたり。
部族ごとの衣装の個性が、漫画的にしっかり差別化できている。
こういう誇張は、好み。
だが、もめてケンカの場面になると、やっぱりジャッキーだけ、動きがカンフーで浮いてしまう。
中国人がみなカンフーできるわけじゃないもんねえ。
(かつての日本人も、「みな空手ができる」と欧米人に思われてたらしいね。アチョー!)
*
お、西洋風の甲冑の軍が、突如として現れ、砦の前まで進軍してきた。
ローマ帝国様だ。ドン!
東洋と西洋の合戦シーンはあまり見た記憶がない。かなり期待。
砦の偉い人「こんなん初めてや。どうしたらいいん?」
修復作業中のジャッキー「おれに任せろ」
砦の偉い人「おねがいしゃーす!」
マジで? 個人でどうこうするの?
ジャッキーしか向こうの言葉を話せないから、ってことかしら。
と、思ったらローマ軍の将軍、ルシウスとジャッキーがタイマンすることに。
またタイマンかよ。なんでだよ、大群で合戦してよ。
カンフー映画ではないので、素手ではなく剣で戦うジャッキー。
やっぱりなんかぎこちなく見える。リアル調なのか、見世物調なのか……。
*
決着がつかず膠着状態になったその時、砂嵐が。
さらに!
ルシウスの部下「ルシウス将軍、お坊ちゃまの体調が!」
ルシウス「お坊ちゃまが!? それは大変だ!」
なんでそんなやつ連れてきてるんや!
やさしいジャッキー「停戦しよか?」
ルシウス「うん。ついでに食料と水、あとお坊ちゃまに薬がほしい」
おまえら、攻めに来たんだろ! ぐずぐずやないか!
あっさり和解。
あれっ、これ、和解をテーマにした物語だよね?
まだ23分しかたってないけど、東洋と西洋がもう仲いい感じになってるよ、ここで終わってもいいんじゃない?
*
ローマ本国には、ルシウスとは別の、ラスボスみたいなのがいるようだ。
ルシウスは、ラスボスに邪魔者扱いされたお坊ちゃまを連れて、ローマを脱出してきた模様。
お坊ちゃまはどうやら、王子さま的な尊い存在のようだ。
なるほど、ルシウス率いるこっちのローマ軍は、あらたな住まいを探しての、流浪の途中だったのだ。
それならボロボロなのも、戦いを避けられるならそれでよしな精神も、わかる。
ジャッキー「おれたちはもう友人だ。力になるよ」
今作のジャッキーは、徹底的にいい人。
理想化されすぎた人間に見える。現実味と魅力を感じにくいかもなあ。
第二幕:ルシウスたちとの友情
ジャッキーが課せられていた砦の再建に、ルシウスたちの西洋的な建築技術が役にたつ。
ルシウス軍と、労働者たちが仲良く共同作業。
異文化交流、すばらしいね~♪
教育テレビかな?
*
仕事の休みに、カンフー演武を披露するジャッキーたち。
お返しに、剣術演武を披露するルシウスたち。
異文化交流、すならしいね~♪
教育テレビかな?
なんか国家が製作してそうな映画だなあ。
あ、ガチで中国製作なんだった。
う~ん、ここまでとは。純粋な目で観ることが難しくなってきたぞ?
それぞれの代表がタイマン試合をすることなったものの、これも、一勝一敗で角が立たない感じ。
そしてユニフォーム交換みたいなことまでやる始末。
友情! 友情! 友情!
東洋人が西洋風に胸に手を当てて感謝を伝えると、西洋人は東洋風にお辞儀をして感謝を返す。
友情! 友情! 友情!
メッセージが露骨すぎて、寒くない?
酒宴で合唱される歌の詞もこんなだ。
「敵同士を友人に変えるんだ。手に手を取って進もう」
なんて素晴らしい世界。
世界のリーダーに見てほしいね。
とくに、中国。
あれ? これ、どこが作ってるんだっけ……。
しかし、こういった思想は、この作品世界においても、まだ理想にすぎない。36の部族は対立しているし、ルシウス軍も、ローマを脱走した身。
ジャッキーが望むような平和的な和解になるのかはわからないが、決着をつけるべき関係性は残されている。
第三幕:ラスボス、襲来!
ボス率いるローマ軍の本体が、お坊ちゃま確保のために攻めてくる模様。
なんとラスボスは、お坊ちゃまの兄様らしい。
お坊ちゃまは、他界した執政官の子で、ローマにおける実権を引き継ぐ予定だった。
が、兄様が、お坊ちゃまを亡き者にすることで、実権をわが物にしようとしているのだ。
ひどい兄様だ。
ということは、ジャッキーたちがルシウスたちと共闘し、兄様の軍をやっつけるって展開ですね?
*
と思ったら。
砦の内部では、中国側の警察っぽい組織に追われているジャッキー。なんでや。
ジャッキーの妻、殺される。なんでや。
(この奥様、これまた極度に理想化された良妻であった)
ルシウスに目を戻すと、ルシウス一派はすでに敗北し、兄様軍にお坊ちゃまを奪われていた。
兄様「わざとローマを脱出させたんやで? ついでに中国を攻められるからな! これでシルクロード一帯は、わがローマのものだ!」
兄様……、そちもワルよのう。
兄様「あと、弟はもう死んだからね」
ええっ!? 子供を死なせちゃうの?
う~ん、う~ん……。じつは生きてた、って展開を期待。
→死んでました。
お坊ちゃまもまた、徹底的に理想化された、純真無垢なキャラでした。天使のような。
本当に天使になったのね……。
お坊ちゃまの死を知ってキレるルシウスだが、手錠につながれているので、どうしようもない。
この役者(ジョン・キューザック)、この作品ではあまりさえない演技。
ダブル主人公のはずなのに、ぜんぜんカッコよく見えない。
*
ジャッキーはなんとか難を逃れたはずだったが、兄様のローマ軍におびえ、金の力に屈服した部族たちに、裏切られてしまう。
そして向こうに引き渡されることに。
戦わずして、すでに敗北していたようだ。
ここでジャッキーのしんみりとした語り。
「砦の再建のため、いっしょに力を合わせてくれてありがとう。まるで、バラバラだった部族が、ひとつになれそうな感じだった。でも……、もう……、ダメなんだな……。最後に頼みがある。部族それぞれの旗を、いっしょに掲げてくれ。俺のために」
部族たち、感動。
「お、おれたちが間違ってぜ! ジャッキーを引き渡すふりをして敵の内部に侵入し、兄様を、ぶっころ!」
ちょろいなあんたら!
この世界の住人は、思考回路がとってもシンプル。
でも、紀元前の人類の思考回路は、こんなものかも。現代ほど複雑ではなかったはず(たぶん)
そういうリアリズムを狙ったわけではないだろうけど。
*
ジャッキーたちが、兄様軍に捕らえられていたルシウス軍を解放し、局地戦が開始される!
ジャッキーが加わらない戦闘シーンは、なかなかいい。
兄様(演:エイドリアン・ブロディ)の狂気が、かっこいい。
ジャッキー、ルシウスを救出に向かう。
が、かれの体は、拷問でもう使い物には……。
救助からの共闘かと思ってたら、ルシウス、ここで死亡。
あらま。
ともにラスボスと戦ってほしかったけど、思いを託されたジャッキーが代理で戦うのか。
中国サイドの英雄譚だから、しょうがないか。
第4幕:おれたちは、生きる!
最終決戦が始まろうとしている。
とはいえ、ジャッキー側の兵は、砦にいる労働者たちにすぎない。
少数が、多数を相手に頑張る展開は好きだよ。
ちょいちょい感じていたことなのだが、演出法が、ハリウッド調、ヨーロッパ調、日本調、どれとも違うので、観ていて「ん?」となること多し。
これも異文化交流としてとらえれば楽しいのかも。
*
さあ、敵の本陣と対決する時が来た!
ジャッキーサイドは少数で劣勢かと思われたが、ここで周辺部族の本体が、つぎつぎに集結し、力をあわせる展開に。
友情! 団結! そして勝利を!(ジャンプっぽい……)
こんなにたくさんの騎馬兵、ほかの国なら間違いなくCG合成だけど、中国のやることだから、ほんとに集めてるのかもしれない……。
合戦シーンは、西洋、東洋、そして中東風も混ざりあっていて、「夢の対決感」があっていい。
時代は違ってしまうけど、侍もまざってたら……、なんて妄想してしまう。
*
36部族が集結しても、ジャッキーサイドは劣勢。
が、そこに大国パルティア(お坊ちゃまと同盟を組んでた)の軍が到着!
形勢逆転!
が、兄様――
「降伏はしないぞ?」
なぜか、ジャッキーと兄様がタイマンする流れに。
この映画、大群がいても、いつもジャッキーのタイマンで勝負が決まるね……。
わかりやすく決着を見せてくれれば、すっきりはするか。
*
チャンバラ開始。
殺陣の動きが、中国的。
でも、西洋チャンバラでは見たことのないような高速チャンバラなので、見応えがある。
ジャッキー、ここに至るまでの負傷の影響もあり、敗色が濃厚に。
そこでみなが、ジャッキーの名をコール、大声援。
ジャッキー!
ジャッキー!
ジャッキー!
こ、これはまるで……、ロッキー!
ジャッキー「エイドリアーーーーーン!」
ウソです。
兄様を演じてる役者の名も「エイドリアン・ブロディ」なので、ややこしくておもしろいかなと思って書いてしまいました。ごめんなさい。
兄様も、悪役っぷりを過剰に強調した演技をしているが、これはかなり好みだ。好みだ……!
あ、なんか逆転してた。
ジャッキー、勝利。
う、うん。めでたしめでたし。
*
エンディングでいっそう強調される今作のテーマ、「敵を友となせ」。
おっさんたちの笑顔が、さわやかすぎてつらい。
ここまでやるとあまりにウソっぽい。演技させられてる感が濃厚でつらい。
物語との距離感を埋められないまま、お・わ・り……。
――と思ったら!
ぎゃあああああああ!
シリアス映画なのに、NGシーン的なものがついてる!
正確には、NGではなく、制作舞台裏、的な映像。
鑑賞の余韻に浸る間をください。作中で死んだキャラが笑ってる姿は、まだ見たくないです……。
あ、でもこの映像に映るみんなは、確かに人種の壁を越えて仲良くなってるっぽい。笑顔も本物っぽい。
まさかもっともメッセージが伝わるシーンが、スタッフロールだなんて!
感想まとめ
この映画が「発している」メッセージ→人種、民族の壁を越えて手をつなごうよ!
この映画から「感じた」メッセージ→辺境国よ、われら(中国)に従え!
純粋に作品だけの世界で物語を受け取ることができなかった。
どこまで国家権力的なものが関わっているかは知らないが、どうしても、赤い旗の存在を感じで斜に構えてとらえてしまう。
中国の周辺国や、国内の少数民族たちが、冷ややかな目で観ている姿が目に浮かんでしまった。
とはいえ、東西文化の夢の対決を見せてくれたのは、うれしかった。
そして、物語の展開からすると、ハリウッド作品なら3時間くらいかけそうなネタなのに、本作は、全100分と、かな~りコンパクト。
これはすごいと思う。本当に。
子供のころのヒーロー、ジャッキーが、いまだに新しいことに挑戦しているのも、うれしいし、刺激をうける。
*
本作『ドラゴン・ブレイド』に点数をつけるなら――
3.6/5.0
いろんな雑念が入ってしまい、評価はやや低めだが、活劇の面で東西の交わりを描いてくれたことに、感謝したい。
この作品は基本的に、中国本土の人たちに向けられたものなのだろう。
道徳の教科書っぽい、などとあれこれ不満を挙げるのも、お門違いな気がした。
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『拳精』
『蛇鶴八拳』
『カンニング・モンキー/天中拳』
『龍拳』
『成龍拳』
『醒拳』
蛇鶴八拳の構えはめっちゃマネした記憶が!