インバウンド需要が急減速、銀座百貨店の泣き笑い
“爆買い”に象徴されるインバウンド需要の恩恵を最も享受してきた東京・銀座地区だが、曲がり角にきたようだ。銀座を代表する松屋銀座店と三越銀座店の推移を見てみよう。
百貨店業界にかぎっていえば、15年度の都内全体の売上高は前年度比3.2%増だったが、銀座地区はそれを大きく上回る13.8%のアップだった。中国人など訪日外国人による免税売上高が、大きく伸びたことが要因であることはいうまでもない。
ただし、今年度に入りインバウンド需要が急減速。とくに高級品の販売にブレーキがかかっているようだ。松屋(8237)の銀座店と三越伊勢丹ホールディングス(3099)が運営する三越銀座店の売上高は、前年に比べて10%近いダウンでの推移だ。銀座の中でも、松屋と三越の近隣にはカルティエやシャネル、ブルガリといった世界の高級ブランド店も軒を並べている。あらためて、隣接する両百貨店の主な指標を確認してみよう。
松屋銀座店の推移
松屋が発表している年間のレジ客総数からすると、銀座店は毎日、3万1000人以上の買物客を集めていることになる。ただし、12年2月期から16年2月期までの5期で目立った変動はなく、ほぼ横バイでの推移だ。
一方、客平均単価は、12年2月期の5198円が、16年2月期には7162円と2000円に迫る上昇である。率にすると約38%のアップ。結果的に1日平均の売上高も1億4600万円から年々上昇し、16年2月期は2億円を突破した。爆買い効果であることは明白である。
ちなみに、集客のために改装を実施したことで、年々減額していく店舗資産価値も、250億円前後を維持。運営を担う店舗従業員は減員である。松屋銀座店の場合、一部土地は賃借で、年間賃料は3億円だ。
三越銀座店の推移
三越銀座店は、三越日本橋本店の1232億円には及ばないものの、店舗資産価値が1000億円を超す豪華な店構えの百貨店だ。事務所を含めても約800億円の伊勢丹新宿本店の資産価値を上回る。パートなども含めて従業員としている松屋銀座店と異なり、三越銀座店は従業員とパートを分けて開示しているが、合計すれば松屋銀座店を上回る店舗運営スタッフである。
店舗資産価値や店舗運営スタッフは、松屋銀座店を上回る三越銀座店だが、その割には、1日平均の売上高に差がないという見方も成り立つ。もちろん、三越銀座店も増床効果やインバウンド需要を取り込んだことで、年々売上高を伸ばしてきたのも事実。伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店とともにグループの旗艦3店という位置づけであり、同店の目標は「最旬グローバル百貨店」の実現である。
松屋の単体ベースの収支を1000円の商品販売にたとえると
売上高の伸びに利益はともなっているのだろうか。百貨店事業にスポットを当てるという観点から、あえて松屋の単体ベースの収支を1000円の商品販売にたとえてみた。
1000円の商品販売で実現している儲け(営業利益)は低空飛行状態ではあるものの、12年2月期の10円が、16年2月期には36円まで拡大した。原価は1000円につき760円前後でほぼ変わらないが、売上高が伸びたことで経費の割合が低下。その結果、儲けが拡大傾向を示してきたわけだ。
ちなみに、松屋の単体ベースの人件費は同期間、44億円から53億円に増額。一方で従業員が減っていることから、従業員1人当たりの平均年間給与は大幅にアップ。12年2月期の514万円が16年2月期は635万円と、120万円を超す増額である。
松屋銀座店の3月-8月の6か月売上高は337億円と前年の同期間と比べると35億円のマイナス、率にすると9.4%の減少だ。三越銀座店も4月-9月の売上高が、前年同期比で8.2%のマイナスでの推移である。
訪日外国人の増加傾向は続いており、インバウンド需要が消え去ることはないだろうが、高額商品に群がったり、炊飯器や温水洗浄便座などを複数買い求めるといった、いわゆる爆買い現象は下降をたどると見た方が賢明だろう。
観光庁の調査でも7-9月期の訪日外国人消費額は、前年同期比で2.9%の減少に転じたが、前年同期比での減少は、11年10-12月期以来のこと。中国人旅行者の1人当たりの買物代も、ピークからは4割減になっているようだ。
販売の低迷状態が続いていた百貨店にとって、銀座店に限らず爆買いはまさに恵みの雨だったが、それが消え去る可能性が高いということ。各社の次の一手に注目したいし、まさに底力が試される。
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