小中高校生らに放射線の知識を教える文部科学省の出前授業について、堺市内の小学校が年度内の中止を決めた。9月にあった小学校での公開授業で、講師の発言が誤解を与える表現だったため、保護者から、疑問の声が寄せられた。文科省も25日、誤解をうむ発言があったとして、授業の委託先を指導した。
授業は9月26日に南区の小学校であり、元横浜市立中学校長の理科教師の男性(65)が講師を務めた。見学した保護者がDVDに記録した。
講師は、身近にあるものに放射線があることを説明するため、放射線測定器を使って実験。カリウムを含んだ肥料を測定し、「カリウムをまいたやつを君たちは食物を通してとるよね。君たちの体にも放射線がちゃんと入ってる。良かったねえ」と説明した。
また、実際には近畿2府4県には原子力発電所はないが、講師は「実は関西にも、どうですか。原子力発電所がありますね。やっぱり不安だよね。なんか(事故が)あった時は鉄板だらけの服を着て歩いちゃう。そんなこと言っちゃいけないか」と話した。直前に、実験で鉄板が放射線量を減らすと説明していた。
授業を見学した保護者は「自然由来の放射線と、人体に有害な放射線をすり替えている」と校長に指摘し、授業のやり直しなどを求めた。一部の労働組合も、事前に竹山修身市長らに授業中止を求めていた。
文科省によると、出前授業は2013年度に始まった。14年度からは、元理科教師らでつくる一般社団法人エネルギー・環境理科教育推進研究所(東京都千代田区)が同省の委託を受けている。学校側の要望に応じて講師を派遣する仕組みで、昨年度は全国で226回の授業をした。
堺市教委によると、市内の小学校では、14年度に3校、15年度に6校で授業があった。今年度はこれまでに4校で実施したが、ほかの3校は別の講師が授業をした。10月以降も6校で授業が予定されていたが、各校長の判断で取りやめた。
エネ理研は取材に、「コメントすることはない」としている。文科省の担当者は「(今回)派遣された講師の発言を確認したところ、誤解をうむ発言があった。児童生徒の発達段階に応じた、科学的で適切な説明が行われるようエネ理研を指導した」としている。
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