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「円高の危機」は去った!? 年末に向けドル・円レートはこう動く
日米マネタリーベース比率から推計

「円買いゲーム」は終了

1月末の日銀によるマイナス金利政策導入以後、ドル円レートは急激に円高にシフトし、1ドル=100円割れも覚悟せずにはいられない展開となった。

これにともない、国内では、「デフレの再来」という見方も散見されるようになったが、9月末以降、ドル円はやや円安方向に戻し、現在は、1ドル=104円台で推移している。

10月に入ってから、シカゴの為替先物市場でのドル円の建玉をみても、円の買い持ちポジションも減少しており、投機筋の猛攻も一服したようだ。ヘッジファンドの一部からは、「もう円買いゲームは終了した」との意見も聞かれるようになっており、1ドル=100円割れの危機はとりあえず回避されたようにもみえる。

一方、為替アナリストの見方はめずらしく2つに分かれている。「1ドル=90円台乗せが近い」と予想する為替アナリストも少なからず存在する一方で、「1ドル=100円割れの危機は過ぎ去った」と予想する向きも増えてきている模様だ。

 

マイナス金利政策導入以降、金利差で為替レートを予想する方法は事実上、崩壊しているため、「円高派」の拠り所は、日本の経常収支黒字(もしくは貿易収支黒字)の拡大のようだ。

だが、そもそも、複式簿記の原理で作成された国際収支統計では、貿易黒字の額が増加する局面では、同時に対外証券投資等の広義でみた金融収支赤字が拡大しているはずで、統計上のネットの国際収支はゼロになるはずである。そのため、国際収支統計をどんなにいじって「真の為替市場の需給関係」を算出しても何の意味もない。

また、「円安派」の多くは、チャート分析を行う人が多いようだが、そもそも、統計学上、チャート分析の有効性は否定されており、筆者は、これを冗談半分でしか聞いていない。

トレーディングでは、チャートを用いて儲けを出しているという人も確かにいるが、彼らの場合は、「フォーミュラ」としてのチャート分析が有効というより、個々のトレーダーの才能に依存するところが大きいと考えている。

〔PHOTO〕iStock

日米のマネタリーベース比率に着目

ところで、筆者は、日米のマネタリーベースの動きの違いを元に為替レートを予想している。これは、いわゆる「ソロスチャート」に近い考え方であり、為替アナリストの間では極めて評判が悪い。

だが、筆者は、昨年末時点で、大多数の「識者」が1ドル=125~130円程度の円安を予想する中、今年は円高方向で推移する可能性が高いと予想した(https://post.gendai.ismedia.jp/articles/-/46933)。

そのときの予想値は1ドル=115円~120円だったので、筆者の想定よりも円高が進行しているわけだが、相対的なパフォーマンスはそれほど悪くないと考えている。

「ソロスチャート」についての話を進めると、ドル円レートを日米のマネタリーベース比率を説明変数として回帰分析する「単純な」ソロスチャートを作成すると、現在のドル円レートの適正値は1ドル=120円程度となる。

だが、この手の「単純な」ソロスチャートは、回帰分析が有効であるための統計学的な条件を満たしていない。そのため、筆者は統計学的な有効性を満たすモデルに基づいてソロスチャートを修正している。

学術的な論文ではないため、具体的な為替モデルには言及しないが、筆者の方法では、日米のマネタリーベース比率は、ドル円レートの予想値自体というより、むしろ、ドル円レートの「中長期的な均衡水準」を算出するベースとなる。

実際のドル円レートは、当然、この「中長期的な均衡水準」から乖離して変動するが、ドル円レートの具体的な予想値を作るためには、両者が乖離することを許容し、この「中長期的な均衡水準」の乖離率の動きを考える必要がある。

実は、筆者のモデルでは、この乖離率は、ほぼ一定の法則で循環するという性質がある。つまり、実際のドル円レートは、「中長期的な均衡値」から一定水準乖離した場合、今度はその乖離を縮小させるように変動するという「循環法則」を有している。

すなわち、筆者が、ドル円レートの予想をする場合、①日米マネタリーベース比率から算出される「中長期的な均衡水準」がどの程度であるか、及び、②実際のドル円レートと「中長期的な均衡水準」との乖離率の位置関係、の2つが重要となる。