ところが悲しいことに、韓国の政策立案者たちは投資というものが何なのかを知りません。金融といえば、担保を確保して融資することしか頭に浮かばないのです。そのため、住宅担保融資が異常なほどに増え、不動産だけにカネが集中します。このカネがコスダック(韓国の新興株式市場)の資本市場に投じられるようにしなければならないのです。そうすればベンチャー投資も活性化し、起業も活性化します。創造経済だとか何とか言って複雑に考える必要などないのです。
政府にも腹が立ちますが、本当の逆賊は国民年金です。国民年金がベンチャーと中小企業の資金源を枯渇させているのです。コスダック市場で中小企業の株式を売りさばいているというわけです。国民年金は全国民が出し合ったお金です。そのお金で、中小企業に冷たい仕打ちをして大企業の株式を買う、そんなことが許されるのでしょうか。
国民年金が株を売れば、年金基金・ファンドもその動きに追随します。コスダックが低迷し、中型・小型株の元気がないのは全て国民年金が原因をつくっているのです。市場が低迷しているときに、誰がベンチャー企業に投資するでしょうか。政府は起業を活性化させると言っているのに、国民年金がそこに冷や水を浴びせているのです。国民年金がベンチャーの生態系をめちゃくちゃにしているわけです。
国民年金も収益率を考えなければならない? それは当然です。それでも、中小企業の元気がなくなれば、国民年金を納める労働者や働き口も減少します。中小企業を育成することが結局は国民年金の収益率を高めることにつながるのです。
国民年金550兆ウォン(約50兆円)のうち数兆円(数千億円)だけでもコンスタントに中小企業に投資してみたらいいでしょう。投資家たちが殺到し、ベンチャーの生態系がよみがえるはずです。創造経済とはすなわち起業の活性化のことだそうですね? だったらなぜ中型・小型株を売り続ける国民年金の運用本部長をそのままのさばらせておくのでしょう? 私の言っていることは何か間違っていますか?
※本コラムは中堅化粧品メーカーL社長のインタビューを基に構成しました。