このパートナーは、実は研究チームと連携している俳優だったが、被験者らはそのことを知らされていなかった。
最初に行う実験では、うそをつかないようにするための奨励金を被験者らに与えた。ギャレット氏は、記者会見で「パートナーの推定額がより正確であるほど、両者が受け取れる奨励金が増えることを、被験者らに伝えた」と説明。これは、うそをつく奨励金を被験者らに与える別の実験シナリオに対する基準となった。
その他の実験では、故意のうそが結果的に、情報を伝える側の被験者と伝えられる側のパートナーの両方に利益をもたらし、また別の実験では、利己的なうそが、パートナーを犠牲にして成立するようになっていた。
実験の結果についてシャロット氏は、「人々は、うそが自分と相手にとって有益である場合に最も多くうそをつく」と話し、「うそが自分にだけ有益で、相手に損害を与える場合は、うそが少なくなる」と指摘した。
事実からどの程度逸脱するかや、不正直さがエスカレートする度合いについては、被験者によって大きく異なっていた。また、事前の質問表で、率直さの程度が低いと特定されていた被験者は、実験中にうそをつく可能性も高かった。
だが、大半の被験者は、ごまかしのパターンに容易に陥るだけでなく、時間とともにますます大胆なうそをつくようになった。
研究では、被験者25人に対しては、機能的磁気共鳴断層撮影法(fMRI)による脳スキャンを実験中に実施。感情を処理する脳の部位である「へんとう体」が、うそをつく行為の発生時に強い反応を示した。少なくとも最初はそうだった。
だが、うそが大胆になるほど、へんとう体の反応が徐々に低下。研究チームはこのプロセスを「感情適応」と呼んだ。
「例えば、初めて税金をごまかす時などは、相当に後ろめたく感じるかもしれない。この悪感情が、不正直な行動に歯止めをかける」とシャロット氏は説明。「だが、次にごまかしをする際には、すでに適応しているために、行動を思いとどまらせるための否定的な反応が弱くなる」と続けた。
脳の感情をつかさどる部位の活動低下が、不正直になる傾向を助長する一因なのか、あるいは単にその傾向を反映しているにすぎないのかについては、まだ不明なままだ。
だが、今回の研究からは避けられない結論が一つ導き出される──それは、うそを多くつくほど、うそが上達するということだ。シャロット氏は「感情の喚起を抑制すれば、人にうそを見破られる確率が下がる可能性がある」と指摘している。【翻訳編集】 AFPBB News
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愛知県に住む小学校5年生の神谷明日香は、スーパーを経営している自分の祖父が何時間もかけてアルミ缶とスチール缶を分別する姿を見てから、缶自動分別ゴミ箱を作ろうと決心。まだ可愛らしさの残るトークの中で、実験と失敗がつきものだった自分の設計プロセスを振り返り、年齢を問わず起業家の卵に役立つヒントを紹介します。[new]
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