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【プロ野球】

黒田、満身創痍の85球報われず

2016年10月26日 紙面から

◇日本シリーズ<第3戦> 日本ハム4−3広島

 これで男気の投球は見納めとなるのか…。今季限りで現役を引退する広島・黒田が6回2死。無念の85球降板だ。

 「短期決戦でなければ行きたいと思ったが、自分の気持ちだけではいけない。自分の判断で降板した」

 1死から大谷を左飛に打ち取った直後に右ふくらはぎがつった。ベンチに下がり治療し、再びマウンドに上がって3球の投球練習を行ったが、今度は両太もも裏に張りが出たため、続投は不可能と判断した。

 5イニング2/3を4安打1失点。その力投は見る者の心を熱くした。2−1の4回、先頭の大谷に二塁打を浴びた無死二塁では中田、岡、レアードをピシャリ。満身創痍(そうい)でも、抜群の制球力で同点を許さなかった。

 引退を表明した投手が、日本シリーズに先発すること自体が極めて異例だ。経験、技術、闘争心は十分にある。ただ、肉体が限界近くに達している。図らずも、黒田の現状を物語る壮絶な降板劇だった。

 8回2死までリードしていた。救援陣が逃げ切れば球史に残る白星がついていた。中田に逆転打を浴びた瞬間、ベンチで立ち上がった姿に悔しさはにじませたが、すぐさま味方に激励の声を送った。自分の白星よりチームの勝利。そんな姿を知っているからこそ、後輩は黒田を慕う。

 ストライクゾーンを9分割したノートに、打者の特徴を記してきた。岡田は「あれだけの人でもそういうことをやっているんだ」と影響を受け、自分も始めた。強制はしないが、アドバイスは惜しまない。背番号15は「積み重ねが大事。自分を見た若手が、何かを感じてプラスになってくれるのならうれしい」と喜んだ。

 肉体にムチを打ち、魂を削った85球。「僕自身、次があるなら準備をしたい。チームの力になりたい」。サヨナラ負けの後、力強く言い切った。黒田の戦いはまだ終わっていない。

 

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