ガイドによる、史実を無視した説明が生徒を“洗脳”
公立高校の教諭、教頭を歴任し、この春から校長として勤務する森 虎雄氏。生徒を引率した昨年の沖縄での修学旅行についてこう話す。
「バスガイドさんが話すのは、沖縄戦と米軍基地問題のことばかり。“民家がそばにあるのに普天間基地はなくならず、沖縄県民が犠牲になっています”といった“反日反米”の内容で、生徒たちに沖縄だけが被害者という意識を刷り込んでいきました」
実際は普天間基地周辺の民家は基地ができてから基地関連の職を求める人によって建てられ、何かと話題にのぼる基地のそばの小学校も、基地ができてから建設されたものだ。
「“ガマ”の見学では、60代くらいの地元の女性案内人が入り口で、ガマの説明もそこそこに“日本軍は沖縄の住民が邪魔になり、民家に手榴弾を投げて殺した”などと言い出しました。さらに“日本軍は中国で中国人を殺しまくり、女性を手当たり次第レイプした”など、沖縄戦に関係のない、史実を無視した内容をまくしたてたのです。ガマの中では“この中で日本兵が死ぬ間際に『お母さん!』と声を上げた。人間、最後はお母さんなんだよ”などと怪談のような話し方で脅し、恐怖から数人の女子生徒が泣き出すほどでした」
禍々しい雰囲気を敏感に感じ取り、ガマに入ることができない生徒たちもいたという。
修学旅行という教育の場で政治的に偏る思想を植えつける
案内人の女性は、「日本は憲法9条があるから守られてきたんだよ」とも発言。森氏は、教育活動の一環である修学旅行で政治的に偏った話をしたことに憤りを覚えたという。
「その後訪れた『沖縄県平和祈念資料館』には全国から修学旅行生が訪れていましたが、展示物や解説パネルは過剰に沖縄戦の悲惨さを訴えるばかりか、日本軍や本土人が沖縄県民を差別し、犠牲にしたという論調と、アメリカと米軍への反感に満ちたものでした。さらに資料館のところどころに沖縄の教職員組合に所属していた元先生がおり、修学旅行生に史実に反した説明を吹き込むのです。学校によってはワークシートや感想レポートを義務付けていることもあり、子どもたちは一生懸命展示を見、説明を聞いていました」
地元の人の言うことは素直に受け止められてしまう
ベテラン日本史専攻教師である森氏から見れば、バスガイドやガマの案内人の話は古い学説で、今は否定されているものばかりだった。森氏は修学旅行から戻るとすぐに、史実と異なる説明と政治的発言などに対して、バス会社とガマのガイド団体に実名で抗議文を書いた。
「バス会社からは誠意あるお詫びの回答をいただきましたが、ガマのガイド団体からは返答がありませんでした。その後人づてに、そのガイド団体は抗議内容を理解し、偏向のないようにその女性案内人のガイド内容を録音・確認していると聞きましたが……。バス会社もガイド団体もここだけではありませんから、根本的な解決にはなっていません。地元の人の話は真実味があるため、〝本当だ”と信じてしまうものです」
実際に森氏が同行したクラスは事後アンケートで「地元の人の言うことだから」と、ガマの案内人は「事実を話している」と回答した生徒が約7割もいたという。
政府から活用が指示されたDVD上映を巡って左翼教師と激突!
修学旅行の与える影響も大きいが、森氏は、ほとんどの学校で日常的に、ときに無自覚に左翼教育・反日教育が行われていると話す。
「以前勤めていた学校で、政府の拉致問題対策本部が作成した、北朝鮮の拉致問題を伝えるアニメ『めぐみ』を人権教育の一環で上映しようとしたのですが、共産党系全教と、日教組の組合に所属する社会の先生2名が反対してきました。このアニメは政府から活用が指示されて全国の学校に配布されたもので。めぐみさんのご両親の親心や苦しみが主に描かれたものにも関わらず、です」
教諭たちは、「このアニメを見ることで、生徒が朝鮮の人たちに偏見を持ってはいけない。植民地時代の、日本による70万人強制連行も同時に教えなければいけない」と森氏に噛み付き、口論になった。
「強制連行は実際は『国民徴用令』として日本人と同様に軍需工場に配属させられた方々のことで、数百人と記録に残っています。『70万人はありえないし、圧倒的多数は自ら希望して本土にやってきた人たちです』と反論し、どうにか『めぐみ』を上映。視聴後は当時の校長が拉致問題について、生徒たちに丁寧に説明してくださいました。しかし、拉致は生命を脅かす人権侵害であり、犯罪であり、『侵略』です。それを教えることに反対されたり、事実ではない強制連行を同時に勉強すべきと考える先生が多いことを残念に思いました」……
現役の公立高校校長で、かつては自虐史観を教える左翼教員だった筆者が、
転向して左翼偏向教育との戦いの日々を綴ったドキュメンタリー。
森虎雄
現役公立高校校長
1956年東京生まれ。ベテラン日本史専攻高校教師。上智大学文学部史学科卒業。明星大学大学院人文学部研究科教育学専攻修士課程修了(高橋史朗ゼミ)。公立高校の教諭、教頭、校長等を歴任。