伝統料理は、もっと美味しくなれる。伝統料理「焼き鯖」から「焼き鯖すし」はどのように生まれたのか。
食の宝庫から生まれたシンプルな新しい伝統料理。
若廣の本拠地、若狭・小浜。この地はその昔、「御食国若狭(みけつくにわかさ)」と言われ、朝廷へ食べ物を献上する土地であり、北前船の寄港地であり、京の都の食文化を支えた“鯖街道”の起点でもありました。そして今なお食材の宝庫、食文化が豊かな土地として知られています。そんな小浜を語る上で欠かせないのが鯖です。特に鯖を丸ごと一尾焼き上げる「浜焼き鯖」は昔から有名で、炊き立てのご飯との相性は抜群です。
10数年前、伝統料理の一つともいえる浜焼き鯖が、食品会社に勤め、販促部長として常に美味しいものを探し求めていた林会長の目に留まりました。目に留まった場所は同じ福井県の三国町。ここも北前船の寄港地として栄えた湊町です。三国の知人と浜焼き鯖の美味しさを語り合ううちに、「焼き鯖で寿司を作ろう!」という話に発展し、即、調理。浜焼き鯖とすし飯というシンプルな組み合わせながら、想像以上の旨さが完成しました。
出来上がった焼き鯖寿司は、まず、三国のまつりで販売して大好評。その後、若狭路博イベントで販売すれば、こちらも大盛況。そして、焼き鯖と寿司の組み合わせは少しずつ多くの方に知られるようになり、食べられるようになり、今ではこの地の新しい伝統料理として広く認識されるようになったのです。
すし飯にふさわしいお米を探し求め、炊き方にも吟味する。
すべての商品に共通するのがお米、すし飯です。福井はコシヒカリ誕生の地であり、美味しいお米があります。しかし、福井県内のコシヒカリならどれも同じかといえば、そうではありません。美味しいという感覚は同じでも、やはり地域によって味は異なります。そこで、数あるコシヒカリの中から、よりすし飯にふさわしいものを探し出しました。
次は炊き方です。家庭でご飯を炊くように、「同じ水加減でOK!」ではありません。お米は生きていて、人間と同じように暑さ寒さなどが如実に反映されるもの。炊く時には、季節やその日の温度や湿度を敏感にチェックし、米の状況を十分に把握したうえで炊き上げていきます。そしてもちろん炊き上がりを試食、いつもの味に仕上がっているかを厳しくチェックしています。
家庭で料理をするように、一つ一つ丁寧な手巻きで仕上げる。
美味しいものを多くの方に召しあがっていただく……大量生産、利益追求を第一に考えるならば、製造はすべて機械化が理想です。特に寿司を作る工程の中で“巻き”は、スムーズで大量の生産を約束してくれます。しかし若廣では、「巻きこそ人の手で丁寧に」を貫いています。
かつて、若廣でも機械巻きを取り入れたことがありました。確かに生産量は格段に上がりましたが、仕上がりは自分たちが納得するものではありませんでした。というのも、機械巻きでは、魚の身と下のすし飯の一体感がなく、すし飯に至っては米粒がつぶれてしまい見栄えもよくなくなってしまったのです。そこで生産量は減少するものの、やはり美味しいものをお届けしたいという一心で、手巻きを続けることになりました。
手巻きを始めすべての作業に携わるスタッフの多くは、家庭の台所を主に担う女性です。家庭料理の感覚を忘れずに、一つずつ丁寧に巻いた寿司は、食べやすさと美味しさを実感できることでしょう。
鯖はシンプルに焼き上げ、サイズを厳しくチェックする。
現在、全国各地に数多くの焼き鯖寿司があり、各社それぞれに具材や調味料などを工夫されています。確かにそれぞれに美味しいでしょう。しかし、若廣ではあくまでもシンプルに、食材の旨さを味わっていただくことを重視しています。
焼き鯖の鯖であれば、塩水にくぐらせてじっくり焼き上げるだけ。他の調味料は一切、使用していません。焼きもジェットオーブンを使うことで、ジューシーさを残しています。そして、輝く黄金色に仕上げるのも特徴の一つです。
焼き上がった後は、専用の物差しで一枚一枚、サイズをチェック。焼くことで縮んだりひねりが生じて規格外になったものは外され、合格サイズとなった焼き鯖だけが商品化されます。鯖独特のくさみや油っこさは、ガリ(生姜)や大葉がうまく緩和し、鯖の旨さを味わうことができるでしょう。
シンプルに焼き上げた味わい深い寿司。
良質な鯖を塩水にくぐらせ、じっくり焼き上げるだけ。味は素朴で絶妙な具合で塩味がきいています。焼き鯖とすし飯の間にはガリ(生姜)と大葉を挟み込み、鯖独特の臭みを緩和させ、旨みを引き出しています。そして一つひとつ丁寧に手巻き。手巻きした後は少し寝かせて味を染み込ませ、その後、改めて整形してパッケージしています。
身の厚さも、他商品とは一線を画しているという自負があります。冷めてもしっとり感が残り、美味しく召し上がっていただけます。
羽田空港<空弁工房>で5年連続売り上げ1位を獲得。数年前、空弁ブームの火付け役となった焼き鯖寿司。ブームに便乗して、各地で様々な商品が販売されました。しかし今、多くの商品は淘汰され、本当に美味しいものだけが残っているといっていいでしょう。その中で若廣は2002年の創業以来、味や製法を変えることなく、そしてブームに驕ることなく、真摯に商品作りに邁進してきました。その結果、羽田空港の<空弁工房>では、5年連続売り上げ1位を獲得いたしました。
季節ごとに違う味わいを楽しんでほしい。
一つずつ丁寧に柿の葉で包まれたお寿司。その中身は、しめ鯖や焼き鯖、鱒がメインです。しかし季節毎に味わいを変えながら、食べる楽しさも提供、提案しています。
例えば、夏は柑橘系などを使ってあっさりと仕上げたり、秋はすし飯ではなく栗ご飯などを入れてみたり…。伝統の中に新しい味を加えてオリジナルの味に仕上げています。
あなごの味がよりふっくらと豊かに感じる。
若狭小浜の食文化の中に、しょうゆ漬けがあります。水揚げされた旬の魚をさばき、しょう油に漬けして一夜干し。食べる際には、少し焦げ目をつけるくらいに焼きます。しょう油の香ばしさが何ともいえない味わいです。そのしょう油漬けの手法を取り入れたのが、焼きあなごなのです。しょう油漬け文化を次世代に継承する意味も込められています。ご飯との相性もぴったりです。
五島列島の寒鯖を使用した、まろやかなしめ鯖。
若廣の鯖寿司は、五島列島の寒鯖を使用しています。独自ブレンドした酢に漬け込み、美味しいすし飯に鯖をのせ、白板昆布を巻いて作り上げます。まろやかな酢と昆布の旨みが融合し、なんとも言えない味わいです。若廣の鯖寿司は、意外と男性のファンが多くみられます。
伝統の食文化×独創的アイデア=オリジナル商品
“若狭の食文化を広める”という想いから生まれたのが若廣です。モットーは、伝統の食文化(料理)を大切に継承しつつ、それに独創的なアイデアを加えて、自社オリジナルとして皆様にお届けすることです。オリジナルの味は新しくも懐かしい味覚、そして記憶に残る味として、皆様に愛され続けることと確信しております。
オリジナル商品開発のための努力は惜しみません。全国各地の気になる味を調べ、試食することは日常茶飯事。そして「おっ、これは美味しそう!」とひらめいたアイデアは即、試作品となり、試食会を開催。様々な意見を交換しながら工夫を重ね、妥協しない商品開発体制の中からより良い新製品が誕生していきます。