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<記者の目>PTA役員を終えて=若狭毅(情報編成総センター)

千葉県で行われた今年の全国高等学校PTA連合会大会=千葉市の幕張メッセで8月25日

「財源握る」親は自覚を

 この欄でPTAについて書くのは2度目になる。「PTA役員になってみて」(2014年4月9日)では、高校生になった娘の学校で1年間役員を務めた後、学校に関わる足場としてPTAにはメリットがあると書いた。あれから2年余、公立高校が加盟する埼玉県高等学校PTA連合会(県高P連)の役員を経験し、夏の全国大会を区切りに役目を終えた。一つの学校だけでなく、他校や他県の親や先生と意見を交わしながら、PTAの役割を考えた。

    公費を超える予算集金機関

     端的に言えば、今日のPTAは学校運営のための予算集金機関である。このことをまず、指摘しておきたい。

     具体的な数字を示す。ある中規模県立高校の学校運営費の内訳だ。埼玉県から支出される学校管理費などの県費は年間約2200万円。一方、授業料・入学金などとは別に、PTA会費・後援会費などとして保護者から直接徴収する「団体会計」は2800万円に上り、公費を超える。

     学校はこの二つの収入で運営する。PTA経由の財源は、学校運営になくてはならない。全国の公立高校が似た収入構造のようだ。

     支出内容を見ると、光熱費や電話代など学校ランニングコストの部分には県費が充てられる。一方、行事や図書室の整備、部活動助成など、学校のカラーが表れる部分の財源を団体会計でまかなう。

     埼玉県教育局は、個別の団体会計の使い道を学校の裁量に任せている。つまり、団体会計を審議するPTA総会は、学校の1年を決める大切な集まりだということだ。

     自戒を込めて告白する。私が司会や議長を務めた埼玉県高P連の総会も、その下部組織である地区高P連の総会も、そして高校のPTA総会も、多くの保護者に参加してもらいながら、意義ある活動の場にはできなかった。保護者の発言を引き出せず、予算・決算が承認されたという事実を作る場でしかなかった。

     PTA(Parent-Teacher Association)は戦後すぐ作られた。P(親)とT(先生)が子どものために活動するのが目的だ。親がリーダーシップを取り、教員と対等に話し合える場として出発した。だがPTAの多くは、学校に従う下請け組織の形で続いているようだ。

     学校運営の中で団体会計が大きな割合を占め、学校予算として使われる現状。学校予算に関心のある一部の先生が予算割りを決める。修学旅行報告会に50万円も使いながら、PTA総会で報告しようとしない事例もあると聞く。

    積極的に参加、普段から注視を

     学校の先生は、社会との接触が少ないと言われる。そのことを実感したのは、名刺を持たない先生が多いのに気づいたときだ。メールアドレスを持たない先生もいる。社会の目が届きにくい空間で、学校世界だけで通用する慣例が幾つも残る。

     PTAに関わることから二つ挙げる。一つは、埼玉県高P連事務局が1000万円を超えるカネを、10年にわたり隠し持っていたこと。埼玉県が会場だった全国大会の余剰金なので、不正な蓄財ではない。しかし、余ったら決算に記載し、報告するのが社会の常識だろう。P連は退職した教員が代々事務局長を務める。隠匿の意図はなかったろうが、公金を預かる意識に欠ける。

     もう一つは、毎年ある埼玉県内PTAの研修旅行でのこと。県外の温泉地に1泊するのが慣例で、幹事校の教員が自身の出身地を宿泊先に選んだことがあった。遠方のため時間がかかり、外部講師を招く研修が組まれない団体旅行になった。バス数台に分乗した200人は、PTA会費と貴重な時間を使ったこの旅行をどう考えたか。持ち帰るのが「親睦」だけなら、研修の看板を外したほうがいい。

     学校や、ましてやPTAという小さな組織は、事件でも起こらない限り、外部から注目されることはない。学校世界だけで通じるルールが多く残るのも、外部の目にさらされないことが一因だろう。

     現状の閉じた学校を考えたとき、保護者ができるのは学校に外部から意見を入れることだ。何か問題が起きてから批判するのは簡単だが、普段から関わる努力が求められる。それには、最高の意思決定機関であるPTA総会を、もっと活用することだ。財源を握っているのはPTAであるという意識を持って臨むなら、総会は真剣、有効な話し合いの場になる。

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