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 厚生労働省の年金の試算で、法律に基づく現行の計算方式では、欧米の一部の国の計算方式に比べて現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合(所得代替率)が高く算出されていた。塩崎恭久厚労相が21日の衆院厚労委員会で明らかにした。政府は厚生年金の所得代替率について「50%以上を維持」と公約している。

 年金の試算は5年に1度、時々の経済情勢に応じて年金制度を見直す財政検証で行う。厚労省は所得代替率を計算する際に、分母となる現役世代の収入は税や社会保険料を除いた手取りとし、分子の高齢者の年金は税や社会保険料を含めた収入としていた。

 21日の衆院厚労委では、民進党の長妻昭氏の質問に対し、塩崎氏は計算方式を変えた場合の所得代替率について「役割を果たせないこともありうる」と述べた。その上で「次期財政検証に向けて議論する」として、2019年度の財政検証の際に新しい計算方式を検討する考えを示した。

 会社員の夫と専業主婦の2人のモデルケースでは、13年度の厚生年金の所得代替率は62・6%とされている。厚労省によれば、仮にいずれも手取りで計算すれば53・9%に低下。いずれも税や社会保険料を含めると50・9%になるという。

 実質賃金が上がり続け、経済成長率が実質0・4%のプラスが続くという前提では、43年度の所得代替率は50・6%と試算されている。厚労省は計算方式を変えた場合の試算を明らかにしていないが、13年度の再計算後の下げ幅から見ると50%を割り込みそうだ。

 所得代替率は欧米では税や社会保険料を両方含めるか、両方除外して算出するのが一般的だという。安倍晋三首相は1月の衆院本会議で「新たに年金を受給される方の所得代替率は50%が確保されることを確認している」と強調している。(井上充昌)

 <訂正して、おわびします>

 ▼22日付1面の厚生労働省の年金試算の記事について「不適切な計算方式を使い、現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合(所得代替率)が高く算出されるようになっていた」とあるのは、「法律に基づく現行の計算方式では、欧米の一部の国の計算方式に比べて所得代替率が高く算出されていた」と訂正します。「政府は厚生年金の所得代替率について『50%以上を維持』と公約しているが、将来的に割り込む可能性が高くなった」とあるうちの「将来的に割り込む可能性が高くなった」は削除します。現行の計算方式では50%を割り込まないように法律で定められています。

 また、塩崎恭久厚労相が21日の衆院厚労委員会で「年金の試算について『役割を果たしていないこともありうる』と述べ、不十分だと認めた」とあるのは、「計算方式を変えた場合の所得代替率について『物差しとしての役割を果たせないこともありうる』と述べた」の誤りでした。答弁内容を取り違えました。

 「年金 不適切な試算/厚労省 支給割合高く算出」の見出しは「年金 支給割合高くなる計算法/欧米と異なる方式」に訂正します。

 ◆年金試算の仕組みについて、後日、改めて報じます。

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