韓国大法院(最高裁判所に相当)=キム・ソヨン裁判長=は19日、脱北者のAさん(49)が亡くなった祖父の遺産の分与を求めて親族を相手取り起こした訴訟の上告審で、二審判決を支持してAさんの敗訴を確定させた。
Aさんの父親は6・25戦争(朝鮮戦争)中の1950年に韓国で義勇軍に入隊し、行方が分からなくなった。死んだと思われていたが、北朝鮮で結婚して暮らしており、2006年に亡くなった。04年には中国のブローカーを通じ、韓国の家族に「これまで北朝鮮で暮らしていた」と伝える手紙を送った。
09年に脱北して韓国に来たAさんは、あちこちを尋ね回った末に父の兄弟、姉妹を探し出した。Aさんはその後、自分の祖父が1961年に他界した際、おじとおばに先山(祖先の墓地がある山)を遺産として残したことを知った。Aさんはおばたちに「相続した土地のうち父の相続分を分けてほしい」と求めたが拒否されたため、訴訟を起こした。
韓国の民法は、相続が行われてから10年たつと財産の相続を要求する権利がなくなると規定している。祖父の遺産の相続は50年も前に行われたため、民法に基づけばAさんが祖父の遺産の分与を要求する権利は消滅している。
一方で、2012年に制定された「南北家族特例法」は、脱北者も遺産相続を要求できると定めているが、Aさんのケースのように、遺産の分与を求める訴訟をいつまで起こせるのかに対する明確な規定がないことが問題となった。
一審は「南北の分断状況を踏まえ、脱北者は10年過ぎても相続を要求する権利があると見なすべきだ」として原告勝訴の判決を出した。だが大法院は判決文で「脱北者を例外扱いすれば相続に対する法的安定性を損なう恐れがある」としてAさんの訴えを退けた。一方で「脱北者の相続権を保障するための制度的補完は立法府(国会)の領域だ」とした。