全体の概要についてはこちらをどうぞ
前回のおさらいはこちら
まとめて観たい方はこのカテゴリへ
第29話のOPナレーションとあらすじ
フェザーンは正確には国家ではなく、
銀河帝国の中で内政の自治と、
交易の自由を認められた一自治領である。
成立以来150年あまり。
だが、その真の目的が、
地球教による宗教支配にあることを知るのは、
政治の中枢部にいるごく限られた人々だけである。
ラインハルトが科学技術統監のシャフトの提案を受け入れ、
イゼルローン攻略の大胆な作戦を考えている頃、
地球教をバックに持つフェザーンが暗躍していた。
同盟の高等弁務官のヘンスローと面会し、
5000億ディナールの借款の即時返済を求めた、
ヘンスローが「それはできない」と答えると、
ケッセルリンクはヤンが同盟政府に批判的だと言って、
彼を排除したほうがいいのではないかと恫喝する。
一方のイゼルローンでは、
フレデリカがユリアンに通信し、軍曹から曹長に昇進したと告げた。
キャゼルヌはそれをたいへん喜び、
自宅にユリアンとヤンを招いて会食するが、
彼には懸念していることがあり、
それを話すためにヤンを呼び出したのであった。
同盟ではトリューニヒトが最高評議会議長となっていたが、
軍の関係者はみな彼の息のかかった将校だった。
キャゼルヌはヤンの立場を心配し、
保身に務めるよう注意をし、ユリアンにも協力を頼んだ。
だが、トリューニヒトはすでに、
ヤンの存在を疎ましく思って陰謀を企てていた。
さらにフェザーンはルビンスキーが自国の計画を磐石なものにすべく、
ケッセルリンクを使ってある秘策を考えていた。
帝国ではラインハルトが作戦が進まないことに苛立ち、
それを見た首席秘書官のヒルダは一抹の不安を覚える。
彼女はキルヒアイスの墓を訪れ、
「あなたがいてくださったら・・・」とつぶやくのであった-。
第29話の台詞
デグズビィ「先日の汝の話、詳しく聞こうか」
ルビンスキー「はっ、申し上げましたように、
従来の帝国・同盟の力の均衡を保つのではなく、
経済面を含めて帝国への協力の比重を高めます。
その手始めといってはなんですが、
帝国の科学技術総監・シャフト技術大将のプランを支援し、
帝国軍にイゼルローン要塞を攻略させます」
デグズビィ「帝国と同盟の均衡を崩してそれをどう利用するのか」
ルビンスキー「ですから、ローエングラム公爵に全銀河系を統一させ、
しかるのちに彼を抹殺してその遺産をすべて手中にする。
それでよろしくはありませんか?」
デグズビィ「上手い考えのようだが、いささか虫が良すぎはしないか?
あの襦子(こぞう)にはオーベルシュタインとかいう曲者もついておる。
そうやすやすとこちらの思惑に乗るとは思えん」
ルビンスキー「なかなか情勢に通じていらっしゃいますな。
しかし襦子(こぞう)とて全能ではありません。
全能であれば昨年のように、
腹心のキルヒアイス提督を失うこともなかったでしょう。
乗じる隙は充分にあります。
権力は集中すればするほど、小さな部分を押さえることによって、
全体を支配できます。
来るべきローエングラム王朝において皇帝ラインハルトを倒し、
それに取って変われば、すなわち全宇宙の支配権を手中にするわけです」
デグズビィ「その構想を良しとしても、同盟に配した手駒はどうする。
いまや同盟の経済は汝らによって完全に支配されておるし、
先のクーデターでトリューニヒトを助けた経緯もある。
フェザーン流に言えば、投資が無駄になる。そうではないか?」
ルビンスキー「同盟の権力者たちは、
国家を内部から腐食させるのに役立ちます。
およそ歴史上、外敵の攻撃だけで、
滅亡した国家というものはありませんからな。
国家を弱体化させるには頂上の腐敗。これに勝るものはありません」
デグズビィ「フェザーンも事実上は国家だ。
同盟のように頂上が腐りはじめてはおるまいな?」
ルビンスキー「これは手厳しい。肝に銘じておきましょう。
ところで堅い話はこれくらいにして、別に一席設けてありますので」
デグズビィ「いや、そのような気遣いは無用。
重ねて申しておくが、先代の自治領主がいかなることに相成ったか、
決して忘れぬことだ。そして何より汝が、
いまの地位にあるのがどなたの意向によるかをな」
ルビンスキー「はっ」
(中略)
ケッセルリンク「帝国はドラスティックに改革されつつあります。
強大なローエングラム王朝は遠からず誕生するでしょう。
そうなれば、同盟と同時にその新王朝を倒すのは容易ではありません」
ルビンスキー「よしんば倒せたとしても、
そのあとに来るのは分裂と混乱だ。
これを収拾するには強大な軍事力と長い時間が必要となる。
教条主義者にはそれがわからないらしい」
ケッセルリンク「閣下の計画は、
そのローエ ングラム新王朝の経済面を支配する、
一種の分割統治でありましょう。
確かにそれでは再生地の親権政治という、
地球教の目的に適わないのでは?」
(中略)
ユリアン「僕、軍人になりたいんです。提督のような志のある軍人に」
ヤン「私の志は歴史の研究者になることなんだよ。
いまでも一日も早く退役して、
歴史書に埋もれる生活がしたいと思ってるんだから」
(中略)
キャゼルヌ「俺がこんなことを言うのもな、
我らが敬愛する元首閣下のことが気になるからだ」
ヤン「トリューニヒト議長が何か?」
キャゼルヌ「笑ってくれても構わんが、実のところ、
最近、俺は奴が怖いんだ」
ヤン「・・・・・・」
キャゼルヌ「詭弁と美辞麗句だけが売り物の、
二流の政治家と思っていたが、
この頃、何やら妖怪じみたものを感じるんだ。
なんというか・・・そう。悪魔と契約でも結びでもしたかのような印象だ」
ヤン「どうしてそこまで・・・」
キャゼルヌ「奴の政治家としての異常な生命力さ。
アムリッツァの敗戦もこの前のクーデターも、
本来なら奴の致命傷となるはずのところを、
逆に結果として奴を利することになっている。
いまや軍部の中枢もトリューニヒト閥によって占有されてしまった」
(中略)
ヤン「私が保護者として完全には程遠いことはよく承知していますよ。
だけど私だって独身だし、
欠損家庭で育ったんですからね。人並みに親がやれるはずが-」
キャゼルヌ「子供は完全な親を見ながら育つというわけじゃないさ。
むしろ不完全な親を反面教師にして、
子供は自主独立の精神を養うんだ」
(中略)
ヤン「人間にとって最大の罪は人を殺すことであり、
殺させることなんです。
軍人というのは職業としてそれをやるんです」
(中略)
ユリアン「何ですか?」
キャゼルヌ「ヤンは昨日のことはよく知っているし、
明日のこともよく見える。
ところが、得てしてそういう人間は、
今日の食事のことはよく知らない。わかるか?」
ユリアン「はい。わかるつもりです」
キャゼルヌ「今日の夕食に毒が盛られていたとする。
それに気づかなければ、
いくら明日や明後日のことがわかっていても、
ヤン自身にとっては意味がなくなる。そいつもわかるか?」
ユリアン「つまり僕に毒見役をしろとおっしゃるんですね?」
キャゼルヌ「・・・そういうことだ」
ユリアン「いい人選をなさいますね。キャゼルヌ少将」
(中略)
ルビンスキー「ある人間を自分の思い通りにしようとするには、
相手をある状況に追い込み、行動の自由を奪い、
選択肢を少なくすれば良い」
ケッセルリンク「・・・・・・」
同盟の支配者たちはヤンを恐れている。
できることなら失脚させたいが、
帝国との戦いを考えればそうも行かない」
ケッセルリンク「皮肉にもローエングラム公の存在が、
ヤンの安全を保障しているわけですな」
ルビンスキー「そうだ。いわばヤンは、
同盟と帝国の間に張られた細い一本の糸の上に、
バランスを取って立っているようなものだ」
妙香の感想
敵の暗躍振りが色濃く描かれた回でした。
キャラのセリフに重要なものが多くて、
またもや引用が長くなってしまいました。
地球教は軍事力をまったく持たないので、
フェザーンを利用して銀河を手中にしようとしているんですね。
でも、ルビンスキーは司教に、
絶対の忠誠を尽くしてはいないようです。
かなりの野心家だと思うので、
彼自身が独自に銀河を治めたいと考えているでしょう。
キャゼルヌとヤンのやり取りは興味深かったですね。
最初のコミカルな会話も良かったんですが、
親友(先輩)としてヤンを心配するキャゼルヌが、
同盟の政治状況をよく見ていたことに驚きました。
政治は陰謀と嫉妬が渦巻く世界です。
ヤンは何もわかってない振りして、
本当はすべて承知していると思いますが、
キャゼルヌはヤンの弱点を知っているから、あえて忠告をしたんですよ。
こういう友達を持てるって幸せですよね。
あと、ケッセルリンクの弁舌もすごかったです。
同盟・帝国双方の弁務官を丸め込んで、
計画をまんまと進めてしまったんですから。
経済力が命のフェザーンは、
こうした智謀で敵を翻弄して行くんですが、
舌先三寸で状況を変えてしまう力は怖いですね。
帝国ではラインハルトの苛立ちが目立ちましたが、
やはりキルヒアイスがいないと駄目なんでしょうか。
いかに有能なヒルダといえども、
ラインハルトの心まで癒すというのは難しいようです。
次回は「失われたもの」です。
銀河英雄伝説のファンになった理由
人物とあらすじ