メタル関連の必読サイト紹介(レビュー、コラム、インタビューその他) (10/26更新)
公開日: 2016/10/26 その他/コラム
全メタラー必読のサイト紹介
私が独断と偏見で選んだメタラー向けの素晴らしいサイトを紹介します。私が尊敬していたり、特に参考にしているサイトを掲載しました。順不同&随時更新です。
Mon Cauchemar Musica (2015年8月以降)
Mon Cauchemar Musica (2015年7月以前)
世界を代表するアヴァンギャルド・メタルバンドSIGHの川嶋未来氏による連載コラムまとめページ。
川嶋氏のアンダーグラウンド・メタルに関する知識は圧巻で、「非英語圏スラッシュ・メタルバンドの悲惨な英語詞」「Venomはメロデスの元祖」「QuorthonはVenomを聴いたことが無かったのか?」なんて内容はここ以外では読めません。その他、「音楽におけるジャンル分けの是非」「天才と凡才の違い」といった普遍的な話題も。また、インタビュー記事の文末に副えられているコラムもかなりディープな内容のものが多く、自分が興味の無いミュージシャンの記事でも絶対チェックしておきましょう。川嶋氏のブログと併せて、全記事必読。
また、川嶋氏は
EXTREME THE DOJO
最新情報やインタビューの充実度もさることながら、「それぞれのメタル元年」の資料的価値は見事。スラッシュやデスの歴史や、ブラストビートの起源を詳細にひも解いています。「HALL OF FAME」では、エクストリーム・メタルの名盤たちが紹介されています。こうした大手メタル雑誌ではあまり取り上げられない重要作品を紹介しているサイトは意外と国内に少なく、貴重なサイトなのは間違いありません。
Closed Eye Visuals
アンダーグラウンド・メタルからももいろクローバーZまで、幅広いジャンルに詳しいs.h.i.氏によるサイトです。メタル好きにとって、というか音楽好きにとって「プログレッシヴ・アンダーグラウンド・メタルのめくるめく世界」は必読の内容。コアなミュージシャン達の難解な音楽性が詳細に解説されています。隠れた重要バンドXYSMAの項で述べられている「"本場"でない環境」の話などもとても興味深く、自分の興味が無いミュージシャンの記事でも読んでおきましょう。ジェント好きにとってRAM-ZETの項は必読。リストアップされている全てのミュージシャン達の解説を書ききるのには相当な労力を要するとは思いますが、完成を心待ちにしております。英語圏のインタビューの抄訳も助かります。
また、サイト内の記事では、氏のTwitterでの連続ツイートもまとめられています。3rd以降のMESHUGGAHに変拍子やポリリズムは一か所も無いという指摘や、「BLACK SABBATH『Vol.4』の聴き方について:「アンサンブルの結節点」と「時間感覚」」、「「メタル」と言っても人によって指すものが違う・メタルは今でも「ダサい」のか・BABYMETALがメタルシーンに起こすであろう“意識の分断”」といった考察からライブレポートまで、幅広いトピックを扱われています。
最後に、こちらの「年間ベストアルバムの選定基準(「アルバム」というものについての個人的な評価基準)」は、私の音楽観やレビュー観に大きな影響を与えた名文です。色々なレビューを読んきた方も、これから書こうと思っている方も、是非ともご一読をお勧めします。
Decayed Sun Records
ランギラス氏によるDecayed Sun Records様は、「独りバンドのための自主レーベル」だそうです。音源のほか、充実した内容のレビューやコラムが多数掲載されています。
ダークな作風のものを中心に取り扱っているレビューは、そうした暗い音楽全般が基本的に苦手な私にも参考になるくらい有意義な内容です。LITURGY『The Ark Work』のレビューにおける踏み込んだ分析や、圧倒されるASTRONOID『Stargazer』のレビューなど、非常に勉強になります。
また、「音楽とストーリー」、「ポストメタルとヴィジュアル系」(どっちのジャンルにもあまり関心が無い私でも面白く読めました)、「ファーストアルバムの意義」など興味深いトピックを扱ったコラムは非常に個性的かつ読み応えがあります。そんな個性的な感性の方が作った音楽は必聴(無料でmp3をダウンロード可な作品もあります)。英語の文献を読む姿勢や、文章の構成など、私がこのブログを始めるにあたって最も影響を受けたサイトのひとつです。
Marunouchi Muzik Magazine
sin氏により運営されているサイトです。知名度の低いミュージシャンから、 EPICAやENSLAVEDといった大御所まで、レビューやインタビューが多数掲載されています。個人規模ながら、広範なジャンルのミュージシャン達に取材を続ける氏のバイタリティには感服。非常に情報的価値の高いサイトです。
まぁ、頑張りまっか
Pomas氏によるレビューブログ。一記事で一作品のみレビューする風潮が主流になった昨今、氏のKATATONIA愛がひしひしと伝わってくる『The Fall Of Hearts』のレビューや、ロシアのメタル・シーンを把握できるСЛОТの『Septima』のレビューなどでの全作レビューは、バンドの全体像を理解するうえで非常に有難いです。
また、全作レビューをされていない記事でも、 単純に文章量や歌唱スタイルの分類、および情報源といった点で読み応えのあるレビューが多いです。THE VISION BLEAKやFLAWといった、本国では人気があるものの日本での知名度がいま一つなミュージシャン達のレビューもとても参考になります。
From Samsara to Bliss
ZEPCLONE氏によるブログ。(彼以外の方も記事を書いています。)ハードコア、メタルやレゲエを中心に、多様なジャンルのレビューやライブレポートが日本語及び英語で掲載されています。
衝撃的内容の「Doom or Be Doomed : ドゥームメタルに関する哲学的考察」や、SHAI HULUDの『Misanthropy Pure』のレビューにおける歌詞と曲展開を関連付けた考察だけでなく、哲学的・宗教的内容の記事も多数あります。是非とも読んでおきましょう。
ISAMIMHZ
ISAMIMHZ(いさみめがへるつ)様は、個人で海外のバンドへのインタビュー/現地スタッフ/撮影/来日ツアーのサポート等を行っているフリーライター、一三三摩利那(イサミマリナ)氏によるウェブログサイトです。
SABATONという大御所から、IMMINENCEやOUR HOLLOW, OUR HOMEといった日本ではまだ知名度の低い新進気鋭のミュージシャン達が取り扱われたインタビュー記事はとても参考になります。また、臨場感溢れる写真が多数掲載されたライブレポートなどもあります。ファンクラブコラムやクラウドファンディングなども実施されており、とてもアクティブに活動されています。
METALGATE
adore氏によるサイト。コンテンツの充実度は言うに及ばず、ヘヴィメタルの門戸を広げようというサイト設立理念には感服。「STRATOVARIUS擁護論」「映画を通じてANVILのファンになった人たちへ」といったコラムは、メタルという文化や歴史を学ぶ上で、私のような若造にはとても参考になります。また、ブログで書かれているノリノリ系ゴシックブームの話など、興味深いトピックが多く扱われています。
Thrash or Die!
Toshi氏により運営されているウェブジンです。1997年設立で、主にスラッシュ・メタル系バンドのレビューやインタビューの他、AGENT STEELやOBLIVEONといった名バンド達の日本語支援ページが掲載されています。
B級C級どころではないZ級スラッシュ(初期Wild Rags RECORDS特集など)まで扱う膨大な情報量の為、メタル初心者が読むと逆に大火傷してしまうかもしれません。また、己の価値観に基づいて好き嫌いをハッキリと表明するレビューやコラムはかなり痛快です。貴重な情報の詰まった唯一無二のサイトなのは間違いありません。
Minor Mind Maniaxe
まっちゃん氏による、70年代ハードロック、NWOBHM、80年代のヘヴィメタルおよびその周辺のクサレメタルを紹介するサイト。1997年から現在まで運営されており、度肝を抜かれる情報量。NWOBHM情報サイトとしては世界トップクラスでしょう。220ページに及ぶ「蔵出しクサレメタル」とか、「Mausoleum Records特集」とか、「Ebony Recordsファンサイト」などなど。
そして、マイナー・メタル全般にそこまで熱の無い私がこのサイトを紹介したのは、なんといってもBLIND ORPHANSのファンページ「ブラオー日記」があるからです。BLIND ORPHANSを知らないメタラーが大半だと思われますが、何はともあれ読んでみてください。音楽を愛する全ての方に読んでほしい名文です。
PILGRIM WORLD
てつ氏によるプログレッシヴ・メタル/ロックを中心としたレビューサイトです。有名バンドのメンバーのサイドプロジェクトなど、日本では知名度の低いミュージシャンのレビューがとても助かります。大量に書かれているレビューは、音楽性だけでなく、関連バンドや似ているバンドなどのミュージシャン同士の繋がりを把握する上でも非常に助かります。
静謐の森
ドゥーム / ストーナー / スラッジ・コアのアルバム・レビューサイトです(管理人様の名前が分かりませんでした。すみません)。マイナーなこれらのジャンルについての膨大な量のレビュー等が掲載されています。
マイナーな作品を多く含む500を超えるレビューはそれだけで貴重ですし、年表や用語集といったコンテンツはとても勉強になります。上記のジャンルにこれから入門する方も、深くのめり込んでいる方のいずれにとっても有意義なサイトです。
ロケットニュース24
海外のおもしろ&変テコニュースを掲載しているサイトです。サイト内を「メタル」で検索してみてください。刺激的すぎる記事が多数掲載されています。また、メタラーを自称するなら、辺境音楽マニアハマザキカク氏は当然ご存じですよね。そんなハマザキ氏が書く記事は信じられないほどディープ。コアなメタラーなら知らないでは済まされません。笑える記事から真剣なものまで。とても面白いです。
そして、ハマザキカク氏の著書『デスメタルアフリカ: 暗黒大陸の暗黒音楽』及び『デスメタルインドネシア: 世界2位のブルータルデスメタル大国』も必読です。正体不明の珍バンドから、普通に個性的でカッコいいバンドまで記載されています。非常に充実した内容で、冗談抜きでメタル史に残る名著です。ぜひ読んでおきましょう。
VICE JAPAN
VICE Japanとは、「世界30ヵ国以上に支部を持つデジタルメディア。世界中で制作・厳選されたプレミアムでエッジーなコンテンツを日々5千万人以上に提供。」だそうです。ディープなカルチャー全般を扱っているだけあって、上質かつ愉快な記事が多数掲載されています。
メタラーは、基本的にHEAVY METALタグの記事を押さえておけば良いでしょう。ABBATHへのインタビューや、「ぼっちメタル」など。HEAVY METALタグ以外にも、ニューヨーク・ハードコアの軌跡や、「バンドTシャツ・デザイナーの苦悩」等のトピックも要チェックです。
Rate Your Music
Sputnikmusic
人気投票形式のレビューサイト。食べログとかの音楽版みたいなものです。検索欄にミュージシャンの名前を入力すれば、そのバンドの作品の客観的評価が点数で分かります。どちらのサイトでも、だいたい3.6以上なら高評価と捉えて良いのではないでしょうか。Sputnikmusicはパンク・ハードコア系のバンドが高評価を取りがちな傾向があります。こんな感じで、ジャンル毎のランキングもあります。簡単な英語のみ使われているので、使いこなすのは決して難しくありません。
音楽を探すうえで、個人のレビューサイトを参考にするのはもちろん良いのですが、そういうサイトではどうしても書き手の主観が入り込んでしまうものです(もちろん、それは全く悪いことではありませんし、そっちの方が面白いと思います)。なので、個人のレビューサイトと上記のサイトを併用して音楽を探すことを強くお勧めします。誰かが酷評していた作品が海外では歴史的名作扱い、なんてケースもありますから。
また、こうしたサイトでは大勢のメタラーから高評価のミュージシャンを知ることが出来ます。いわゆる"音楽通"が集まるサイトなので、結構コアな作品が高得点になっていたりもします。まずは本流を押さえることはジャンル全体を把握する上で肝要です。
ひとつ注意事項も書いておきます。両者のサイトには
・初期の作品が高評価になりがち
・あまり"芸術的"、"先進的"でない作風の、普通に売り上げの高い人気バンドの点数が低くなりがち
という2つの特徴があります。色々なバンド名で検索してみると、傾向が見えてきてなかなか面白いですよ。ちなみに、こうした海外のサイトでは、日本と海外での人気バンドの違いが確認出来たりして面白いです。
また、類似サイト、というかメタルに特化したサイトとしてMetal Stormが有名ですが、そちらはDecayed Sun Records様のガイドラインを参考にして下さい。
選出基準的なもの
現在の私が特に参考にしているサイトのみを掲載しました。もちろん、上記以外にも見ている/見ていたサイトはありますが、挙げていったらキリが無いので。選出基準という程ちゃんとしたものではありませんが、私が最近よく参考にするサイトの傾向として
・一つの記事の文字数が多い
・非日本語圏の情報を参照している
・レビュー以外の記事が掲載されている(コラムやインタビュー等)
・筆者の文体や感性が自分の肌に合う
こういう点があります。
私は次から次へとマイナーな作品を聴く性分ではありませんので、「数回聴いた作品を簡潔なレビューで紹介する」というタイプのレビューサイトは、一部を除いて参考にしておりません。また、英文インタビューの日本語訳などが掲載されている、あるいは参考にしたうえでレビューを書かれているサイトはそれだけで情報的価値が高く、非常に参考になります。
とはいえ、私がまだ発見していないサイトも当然あります。私の守備範囲外のジャンル(ブラック、ゴシックやドゥーム等)やマイナーな作品ばかりをレビューしているサイトなんかはどうしても見つけにくいのです。それにもちろん、このリストは私の好みが全開です。なので、このリストに載っていないサイトが低レベルとかそういう話ではありません。言うまでも無いことですが、念のため。
また、この記事で紹介したサイトの関係者、あるいはそれ以外の方で、なんらかのご意見やご感想があったら、ブログの右側にある投稿フォームか私のTwitterアカウントの方によろしくお願いします。
私が思う現状のメタルのレビュー界の問題点については、以下の項を参照して下さい。上記の選出基準とも関係がありますので、この記事に記載します。以前公開していた長々としたレビュー批判記事のほぼ要点のみを纏めたものです(あの記事は、本当に無駄に長々としていて分かりにくくて申し訳ありませんでした)。
現在のメタルのレビューの大半に挙げられる特徴として
・文章が短すぎる(300字未満のレビューしか見当たらない作品すらある)
・難解な音楽性のミュージシャンを「プログレッシヴ」「カオティック」「知的」といった定型句"のみ"で表現している
・レビューする作品をたったの3回前後しか聴いていない(発表日時や更新頻度からの推測が主だが、レビュアー本人がそう語っている場合もある)
・レビュアーの音楽的知識が不足している(楽器を弾けない場合が大半)
・第一次情報(ミュージシャン本人のインタビュー等)を参照していない
といった点が挙げられます。もちろん、全ての項において例外は当然ありますし、これらのいくつかの条件に当てはまっていて優れたレビューを書いている方々は居ます(この辺りは各々の好みですが)。私がこういった条件の全てを満たしている訳ではありません。
しかしながら、こういった特徴に当てはまるレビューの数が増え、それを真似する方が増え、というサイクルが発生しているのは間違い無いと思います。もちろん、どんなレビューを書くのかは各自の自由ですし、書いてくれるのは本当に有難い話です。とても参考になりますし、マイナーな良作を知るきっかけにもなります。が、上記の特徴(とくに視聴回数)に当てはまるレビューしか見当たらない作品が大半だという現状は、読み手にとって好ましい状況とは思えません。メタルは定型化しており、インパクト重視の作品が多いのは確かです。が、"聴けば聴くほど味が出る"作品はいくらでもあるはずです。何度も聴かなければ分からない細かいアレンジや奥深さがあるはずです。たった数回聴いた程度で、そういった妙味にたどり着けるはずはありません。その作品にしか無い独自性や奥深さを、私は知りたいです。
(ついでに言うと、以上の多くの点を満たしているレビューは聴いてみるきっかけや音楽性を知る助けにこそなれ、それによって読み手のその作品に対する評価が左右されるレベルでは無い、というのが私の考えです。他人が数回聴いて下した評価を気にするよりは、自分で聴いて判断した方が絶対に良いと思います。せっかくYoutubeがある時代なのですから。「あのレビュアーが低評価を下していたからこの作品は良くないんだ。聴く必要は無いな。」...こうした精神性はあまり好ましいものでは無いと思います。)
また、英語圏の情報を参照する風潮はもっと広まって欲しいです。日本語圏では、「アヴァンギャルドかつ難解だ」といった風なレビューで片づけられている高度な音楽性の名盤も、英語版Wikipediaページではその作曲技法やテーマが詳細に書かれている場合すらあります。その作品に対する優れたレビューの数は日本の比ではありません。英語圏と非英語圏には、こういった"埋められない情報格差"があります。有意義な第一次情報を参照した「その作品を既に知っている人が参考になるレビュー」、あるいは「英文インタビューの和訳」や「充実した日本語版Wikipediaページ」というものがもっと増えてほしいと願っています。そういったモノが増えなければ、作品の表層だけをなぞり、その奥深さを味わうことの出来ないリスナーが増える一方だと思います(難解な音楽性のミュージシャンは、この傾向が特に顕著だと思われます)。
さらに言わせてもらうと、新譜を手際よく紹介するの"だけ"がレビューではありません。数回聴いた作品を紹介する新譜レビューサイトが大半を占めている為、そういった誤解をなさっている方は多いとは思います。 が、何十回と聴いた作品を深く掘り下げるようなレビューこそ、読みたい方は多いはずです。そうしたレビューというものは、月に何十枚も新譜を買っているレビュアーにはなかなか書けないものです。Twitterが普及してからというもの、「ブログを始める=ある程度の覚悟が無いとダメ」だと錯覚している方も多いとは思いますが、違います。ブログとは本来気楽に始められるものです。開設には10分と掛かりません。メタルのレビューは数が少ないので、書けば検索上位には絶対来るはずです。Amazonのレビューでも良いです。書いてみて、自分のその作品に対する理解がより深まるかもしれません。気軽に始めてみましょう。
何十回も聴いたうえで書かれたレビュー、音楽性の変容が伝わる全作レビュー、否が応でも愛情が伝わる気持ちの入ったレビュー、英語圏の情報を参照したレビュー、英文インタビューの和訳、充実したWikipediaページ、そうした文章が増えることを期待しています。それでは。