「核なき世界」の実現に向けて、今こそ日本の役割が問われている。
オーストリアやメキシコなど30カ国以上が、核兵器禁止条約の早期締結を目指して、2017年から交渉を開始するよう求める決議案を国連総会の第1委員会(軍縮)に提出した。核保有国(米露英仏中)は反対しているが、非核保有国には賛成する国々が多く、決議案は11月初めまでに採択される可能性が高い。
日本は、核軍縮は核保有国と非核保有国が協力し、段階的に進めるべきだという考えで、禁止条約には賛同していない。今のところ決議案に「賛成」「反対」「棄権」のいずれで臨むか明らかにしていない。
だが、日本は唯一の戦争被爆国として、核保有国と非核保有国との「橋渡し役」を務めると言ってきた。禁止条約の交渉に建設的に関与し、核保有国と非核保有国の溝を埋めるよう努めるべきだ。
米国は、禁止条約の交渉開始に強く反対している。理由として、核抑止の観点から安全保障を損なうリスクがあることや、米露英仏中のみに核保有を認めた核拡散防止条約(NPT)体制を損なうこと、核保有国の協力がなければ核兵器の削減につながらないことを指摘している。
米国などは、決議案の採択を阻止しようと切り崩し工作を展開しているようだ。だが、こうした工作や日本の投票行動にかかわらず、決議案は採択されると見られている。
決議案には、17年の3月と6〜7月の2回に分けて、国連本部で交渉のための会議を開くことが明記されている。これに沿って交渉が始まることになるだろう。日本は、決議案に反対すべきではない。
非核保有国の中で、日本と同じく米国の「核の傘」に依存し、段階的な核軍縮を求めている豪州、カナダ、ドイツなども、禁止条約の交渉開始に反対姿勢を強めている。日本の立場はいっそう苦しくなっているように見えるが、同時にその役割はさらに重みを増していると言える。日本の外交努力に期待したい。
一方、これとは別に、日本は23年連続となる核兵器廃絶決議案を第1委員会に提出した。年限を切らずに将来の全面的な核廃絶を目指すもので、NPT体制を強化し、段階的に核軍縮を進めようという内容だ。
日本の核廃絶決議案は毎年採択されているが、昨年は米英仏が棄権し、中露が反対した。米国が賛成しなかったのはオバマ政権では初めてで、決議案が核兵器の「非人道性」に言及したことを、警戒したためとされる。今年の決議案も「非人道性」に触れている。「核なき世界」を提唱した米国はもちろん、5核保有国の賛同を得て採択されるよう望む。