分数コード

分数コード


分数コードとは、ベースラインを編曲する際の技法です。


「分数」というからには「分子」と「分母」が存在します。


分子:「和音」で、普通のコードです

分母:「ベースライン


ベースラインはコードのルートを基本にして作るのが原則です。


例えばコードが「C」ならば、拍の始めは「ド」の音を鳴らすことでコードをしっかり示すのが普通です。



しかし、あえてルートを弾かないという選択肢も当然あります。


これが「分数コード」と呼ばれるものです。




分数コードの表記


分数コードを楽譜上に書くときには、分子/分母の形で書きます。


「/(スラッシュ)」を使うので、「スラッシュコード」とも呼ばれます。


上の楽譜を、分数コードを使ったものに変えてみます。



「G/C」を「GonC」のように記載することもあり、オンコードとも呼びます。


<<分数コードを書く際の注意>>


分数コードの「分母」がベースラインということは基本的には単音です。


和音(コード)ではないということはメジャーもマイナーも存在しないので、ⅢやⅥのように本来マイナーが付く音を分母にする場合も「m」は付けずに「Ⅰ/Ⅲ」や「ConE」のような表記になります。


コードの上にコードを重ねる「アッパー・ストラクチャー・トライアド」というものがありますが、またの機会に説明します。




分数コードの使い道


わざわざコードを分数コードにアレンジするにはそれなりの意味があります。


1:浮遊感を持たせる
コードのルート音ではなく第3音を弾くようなパターンです。
ルートを弾かないのでコードのどっしりした感じが消え、逆にフワッとした感じになります。
例)Ⅰ/Ⅲ

2:安定感/不安定を保持する
オルゲルプンクト(持続低音)と呼ばれるベースラインです。
コードが変わってもベースラインはそのままキープして、安定感の変化を少なくする技法のことです。(特に主音か属音で伸ばすものを指します)

例えば主音で伸ばす場合はコードが、サブドミナント→ドミナントと変わってもベースラインはトニックのままなので、不思議な安定感が生れます。

しっとり落ち着いた感じのバラードを作りたい時、あるいは情緒的な雰囲気を極力削りたいロックな曲を作りたい時など、色んな場面で役に立つのがこのオルゲルプンクトです。

3:綺麗なベースラインを作る
例えば【Am-F-D-】というように、コードのルート音が2つずつ下がっていくことがあります。
この時、ベースラインに関しては流れをスムーズにするために【A-G-F-E-D-】と1音ずつ下げていくということがあります。
この時のコードが【Am-Am/G-F-F/E-D-D/C-】と分数になります。

ポピュラーなパターンは上記の3つで、他にも細かい使い方が幾つかあります。




聴き比べてみる


上の3パターンを聴いてみます。


1:浮遊感を持たせる
元の曲
コード:【Em-B-D-A-Am-G-Em】

「B」と「A」を第3音である「D#」と「C#」に変えて弾いてみます。

コード:【Em-B/D#-D-A/C#-Am-G-Em】

不安定な響きになったかと思います。


2:安定感/不安定を保持する(オルゲルプンクト)
元の曲
コード:【C-G-F-Fm-C】

ベースラインをずっとC(主音)で維持するようにします。

コード:【C-G/C-F/C-Fm/C-C】

安定感が出てきたのがわかるかと思います。

安定感があるので、ポップスではAメロで使われることが多いです。


3:綺麗なベースラインを作る
元の曲
コード:【F-D-G-G-G-G-C】

「G」が続くので、「C」で終わるようにベースラインを下げてみます。

コード:【F-D-G-G/F-G/E-G/D-C】

このようにベースが下がっていくパターンは多くのジャンルでよく使われる技法です。


3パターン聴いてみて分数コードを使ったからといって大きく変わるものではありませんが、こういう細かい気遣いをするしないで聴き手に届くものは全く違ってきます。


この「分数コード」はセンスだけではなかなか出てこないもので、知識がモノを言う部分です。