クリシェとは
クリシェとは「半音差か全音差の緩やかな音程差で移動していくフレーズ」のことを指す言葉です。
特に「コード全体は変化してないけれど、あるひとつの旋律だけ変化していく」ときに「クリシェ」と呼びます。
コードが【C-D-Em-F】のような単純にコード全体が緩やかに動くものは普通「クリシェ」とは呼びません。
例えば下図のような感じです。
「ド」・「ミ」はそのままで「ソ」の音だけ変化していきます。
クリシェを聴いてみる
上の例は「ソ」の音が上がっていくものでしたが、下がっていくパターンもあります。
海の見える街(魔女の宅急便)を例にしてみます。
コードのベースは通常ルートが配置されるのが一般的ですが、ルート以外の音を選択した場合を⇒分数コードといいます。
1小節目の【Bm/D】はメロディーは「Bm」、ベースは通常「B」にするのが一般的なのですが3度上である「D」にするということです。
他の分数コードもルート以外を弾くということです。
ではなぜルート以外の音にする必要があるのでしょうか。
わざわざ分数コードにしなくても曲的には成立しています。
しかし分数コードにすることによってある変化が起きています。
その変化とは、分数コードにしたことによって、ベースが隣の音に進行しているということです。
前半のベースラインは【E-D-C-B-A】と順番に下がっています。
しかも後半部分でも分数コードは使われているのですが、ここのベースラインは【E-F#-G-G#-A-B】と今度は順番に上がっています。
前半部分のベースラインは下降して、後半部分のベースラインは上昇しているということです。
ここで分数コードを使わない場合
曲的には成立していますが、分数コードを使った方と比べるとベースが忙しいというかスムーズさに欠けている感じがします。
コードは同じなのにベースの動き1つで曲の印象が変わるということは、ベースが「司令塔」であるということがわかるかと思います。
クリシェとは上がったり下がったりするものですが、単音ではなく2音以上の場合をハーモニック・クリシェ、ベースラインがクリシェになっている場合を(ベース)ライン・クリシェと呼びます。
(ベース)ライン・クリシェとは、・トップ(上の音)・ミドル(真中の音)・ボトム(ベース)などを隣の音に上下に移動させて旋律を作るテクニックです。
1番上の「クリシェとは」のサンプルはトップ(上の音)が移動するタイプで、「海の見える街」はボトム(ベース)が移動するタイプのものです。
隣の音に進行することでより横のラインがスムーズになります。
クリシェの使い道
クリシェも分数コードと同じように、編曲のアイディアの1つとして使ったりします。
「同じコードが続くときに、穏やかに変化させて彩りを与えたい」というのがクリシェを盛り込む最も一般的な目的です。
コード全体は同じものが続く
変化するのは1音のみ
全音/半音差の穏やかな移動をする
という特徴から「#」や「b」の入った音でもすんなり組み込めます。
クリシェはアレンジだけではなくリフの個性を決定づける要素にもなります。
ここぞという時に露骨に目一杯使うといいかと思います。