HOME > レビュー > パイオニアの新・試聴室に潜入! 熟練エンジニアの手によって、日々進化する音の聖地だ(2) <新・試聴室の音は?>
2016年10月24日/木村雅人
最初に「試聴室小」に通された。そこに入ってまず感じたのは、部屋自体の静かさと会話時の声の余韻が若干短めだったことだ。そう思っていると平塚さんが、すかさず説明をしてくれた。「実は新試聴室の完成度はまだ60%ぐらいかなと思っています。これはどちらの部屋にも言えるのですが、我々が最初に入った時はもっとデッド(反射が少なく音が響きにくい状態)な音響でした。そこで、壁面の吸音層に詰めているグラスウールを少しずつ抜いて音を確認しつつ、こまかなチューニングを経て現在の状態になっています」。
まるで筆者の気持ちを見透かされたような平塚さんの説明に驚きつつも、リスニングポイントに座った。
この時設置されていたシステムは以下の通り。
・スピーカー:B&W/ノーチラス801
・ユニバーサルプレーヤー:パイオニア/DV-AX10
・プリアンプ:マークレビンソン/No 326S
・パワーアンプ:パス・ラボラトリーズ/X600.5
・プロジェクター:JVC/DLA-X9
・スクリーン:スチュアート/LX120VST13BM(120インチ)
接続はプレーヤーとプリアンプ間がアンバランス接続で、プリアンプとパワーアンプ間はバランス接続となっていた。システム構成について平塚さんに訪ねると「このシステムはリファレンスとして常設している物で、製品開発時には該当製品をだけを都度入れ替えている」そうだ。つまりこの状態の音こそが、パイオニアのサウンドポリシーそのものといえよう。
まずはCDを試聴。1枚目は、ソフィー・ミルマンのアルバム『Sophie Milman』から「Agua de Beber」を選んだ。この部屋の音質の良さは、冒頭のドラミングだけですぐに分かった。良好な帯域バランスで音の情報量もかなり多いので、さきほど60%の仕上がりと言っていたが「それ以上なのではないか」と思ったほどだ。ただ、ひとつだけ個人的な好みを言わせていただくと、もう少し低域の押し出し感が素直であればと感じた。これもいずれ改善されていくのだろう。
2枚目は大阪市音楽団演奏、木村吉宏指揮による吹奏楽の名盤『保科洋作品集』から「風紋」を聴くと、先程と同様のサウンド傾向なのが分かる。この曲はアタックの強い低音が少ないせいか全体のまとまりがかなり高レベルに感じられた。
続いて「試聴室大」へ移動して、マルチチャンネルの試聴をさせていただいた。ドルビーアトモスやDTS:Xなどオブジェクトオーディオにも対応した7.2.4構成で、システムは以下の通り。
・スピーカー:パイオニア/S-1EX×6(L/R、LS/RS、LSB/RSB)、S-7EX(C)、S-CN301×4(トップフロント/トップリア)
・サブウーファー:パイオニア/S-W1EX×2
・ユニバーサルプレーヤー:パイオニア/BDP-LX88
・AVアンプ:パイオニア/SC-LX901
・プロジェクター:ソニー/VPL-VW1100ES
・スクリーン:オーエス/ピュアマットEA-150H(150インチ)
設置された状態を見て、サラウンドスピーカーがセンターよりリスニングポイントまでを結んだ位置から左右100°程度に配置されていたことが気になった。理由を聞くと「5.1ch再生時に、サラウンドバックとパラレルで出力するケースを確認するために、この配置となっている」と説明してくれた。なるほど、サラウンドとサラウンドバックの間隔はできるだけ離れていた方がチャンネル干渉も少ないし、パラレル出力であれば後方の包囲感の充実が図れるということだろう。
視聴したのはブルーレイで、トレインチャ・オーステルハウスのライヴ盤『Best Of Burt Bacharach Live』(輸入盤)と、『シカゴ スペシャルエディション』(ドルビーアトモス版)。
こちらの試聴室の第一印象は、チャンネルセパレーションの良さと、全スピーカーから発せられる低音の混濁の少なさ。スッっと立ち上がるサウンドの素直さも良好で、セリフが程よくシェイプされつつも聴き取りやすいのが秀逸だ。ドルビーアトモス再生時にはリスナーをドーム状に包み込むシームレスな空間描写が、トップレベルと言っても差し支えないだろう。
第3回は10月26日(水)の公開です。お楽しみに!
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