(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年10月20日付)

ソフトバンク、半導体設計の英ARM社を買収

英ロンドンでの会見を終えた、ソフトバンクの孫正義CEO(左)とARMホールディングスのスチュアート・チェンバース会長(2016年7月18日撮影)。(c)AFP/NIKLAS HALLE'N〔AFPBB News

 日本有数の富豪でテクノロジー投資家の孫正義氏が、軍資金不足のために野望の実現に待ったをかけられたことは、これが初めてではなかった。

 孫氏が経営するソフトバンクは先日、英国の半導体設計会社アーム・ホールディングスを320億ドルで買収するために多額の借り入れを行い、バランスシートを拡大させた。だが、未来を見通す自分の能力を信じて次々に企業を買収している孫氏は、もっと投資をしたいと思っていた。

 では、人間と機械、そしてインターネットがもっと密につながった世界にするというビジョンを描いている孫氏は、その実現に必要な大金をどこから調達するつもりだったのか。

 その答えは先月、13機の飛行機とともにやってきた。乗り込んでいたのはサウジアラビアからの派遣団500人あまり。その筆頭は改革派のムハンマド・ビン・サルマン・アル・サウド副皇太子、「MBS」というイニシャルで知られる人物である。

 孫氏にとって幸いなことに、副皇太子はサウジの包括的な近代化を目指す「ビジョン2030」という自らの肝いりプロジェクトの実行を急いでいた。

 その6週間後、2人はサウジの首都リヤドで会うことになった。総額1000億ドルという、この種のものとしては史上最大のプライベート・ファンドの設立計画をスタートさせるためだ。計画が実現すれば、孫氏はテクノロジーの未来に投資できるようになり、サウジはその果実を得られる可能性が出てくる。