河野
「今、各地の自治体に、爆破を予告するメールが相次いで届いています。」
鈴木
「今年(2016年)に入って全国の主な都市だけで、少なくとも137件の爆破予告があったことがNHKの取材で分かりました。
この予告メールには、特殊な仕掛けが施されていたんです。」
河野
「今、各地の自治体に、爆破を予告するメールが相次いで届いています。」
鈴木
「今年(2016年)に入って全国の主な都市だけで、少なくとも137件の爆破予告があったことがNHKの取材で分かりました。
この予告メールには、特殊な仕掛けが施されていたんです。」
米津絵美記者(長野局)
「爆破予告のあった空港では、警察官らが朝早くから爆発物がないか警戒にあたっています。」
一昨日(19日)、長野県の空港を爆破するという予告があり、警察官や空港関係者が、不審物の捜索に追われていました。
市民
「恐ろしいですね。」
市民
「ぞっとします。」
長野県庁に送られてきたメールです。
“10月19日に、県内の空港と県内の各施設を爆破します。”
“身が震える。
早く逃げた方がいい。
それはできるよね?”
県庁でも一日中、不審物がないか点検にあたりました。
長野県 危機管理防災課 竹内善彦課長
「人々に対して恐怖を与えるものであり、非常に社会的にも許しがたい行為。」
自治体に対する爆破予告。
今年に入り、全国で相次いでいることが分かりました。
NHKが、全国の都道府県や政令指定都市など121の自治体に問い合わせたところ…。
66の都道府県や市などに「爆破予告」のメールが届いていたことが明らかになりました。
複数回届いている自治体もあり、件数はあわせて137件に上ります。
爆破予告の文面です。
ある特徴が共通しています。
文末になぜか「を」。
また「ナリ」という表現が多用されています。
そして、送信者の名前。
73件の予告に、「唐澤貴洋(からさわ・たかひろ)」と記されていました。
「唐澤」とは、いったい誰なのか。
1人の男性にたどりつきました。
都内の法律事務所。
“唐澤貴洋”は、実在の人物でした。
唐澤さんは、インターネット上の問題に詳しい弁護士。
爆破予告とは無関係で、名前を勝手に使われていました。
弁護士 唐澤貴洋さん
「わたしに対して業務妨害を考えてやっていると考えざるを得ない。
到底許されるべき行為ではないと思う。」
名前をかたられるきっかけは、唐澤さんの弁護活動でした。
ネット上の掲示板で中傷を受けていた高校生から依頼を受け、書き込みの削除などを掲示板の運営者に求めたところ…。
今度は、唐澤弁護士を中傷する書き込みが殺到するようになりました。
弁護士 唐澤貴洋さん
「これは、実際にインターネット上に投稿された、私に対する殺害予告です。」
さらに、家族の墓を突き止められ…。
弁護士 唐澤貴洋さん
「『何々家』のところを白塗り、土台のところにわたしの名前をスプレー書きされた。」
そして今年に入り、多数の爆破予告に名前を使われるようになったのです。
取材をしたこの日も、唐澤弁護士の名前で爆破予告があったと、警察から連絡がありました。
弁護士 唐澤貴洋さん
「日々、事件としてこういった爆破予告が行われてないかとか、きょうは変なことが起こらなかったが、あす起こるのではないかとか、(爆破予告を)している若者がいるのなら、直ちにやめたほうがいいと伝えたい。」
複数の人物が、唐澤弁護士の名をかたり、予告を繰り返しているとみられています。
そのうちの1人、元大学生の安藤良太(あんどう・りょうた)被告。
自治体に爆破予告を行ったなどとして、今日(21日)、執行猶予のついた有罪判決を受けました。
判決の前、私たちは東京拘置所にいた安藤被告と面会。
なぜ爆破予告を行ったのか、問いました。
安藤被告は、事件を反省しているとして、手紙で答えました。
安藤良太被告からの手紙
“唐澤弁護士のことをインターネット上のおもちゃとして、おもしろおかしく遊んでいただけです。
手軽な手段で、大きな反響が得られる。”
今も爆破予告が続いていることについては…。
安藤良太被告からの手紙
“模倣犯については、まさかこんなに出るとは思っていませんでした。」
相次ぐ爆破予告のメール。
捜査の目をまぬがれようとする仕掛けがほどこされていたことも分かりました。
企業や官公庁にネットセキュリティーの支援をしている会社です。
爆破予告のメールを分析してもらったところ…。
サイバーセキュリティー企業 スプラウト 岡本顕一郎さん
「自分の本当のIPアドレスを隠した状態でメールを送っている。」
一般のネット空間では、相手にメールを送ると、「IPアドレス」と呼ばれるパソコンの住所の記録が残ります。
この記録をたどれば、ネットに接続したパソコンを特定することができます。
ところが、爆破予告のメールでは「匿名化ソフト」が使われていることが分かりました。
このソフトを通すことで、「ダークウェブ」と呼ばれるネット空間に接続することができます。
この空間では、IPアドレスが次々と切り替わり、元のアドレスが匿名化されるのです。
ダークウェブを通じて爆破予告のメールを送ると、発信したパソコンを特定することが困難になります。
今年の爆破予告のうち、少なくとも28件はダークウェブを通したものでした。
この会社では、ダークウェブを使ったやりとりで違法な薬物や個人情報などが取り引きされ、さらなる犯罪の温床になると危機感を強めています。
サイバーセキュリティー企業 スプラウト 岡本顕一郎さん
「これは社会の大きな脅威になるのではないかと思う。
早急に技術的・法律的な分野で、また捜査機関でも対策を急がなければいけない。」
鈴木
「この夏、長崎では、小中学生が被爆者の証言を聞く会が予定されていましたが、爆破予告のために中止に追い込まれる事態もあったそうなんです。
今のリポートの中で、爆破予告した男は『遊んでいただけ』と言っていましたが、警察や自治体も対応に追われ、実在している方が被害をこうむっているわけです。
これは悪質な犯罪と言えますよね。」
河野
「今回の犯罪に使われていた『ダークウェブ』ですが、アメリカでは偽の身分証明書や武器の取り引きなどに使われているとして、FBIなども危機感を強めているということなんです。
日本の警察もサイバーパトロールを強化しているということではあるんですが、ダークウェブへの対策、急ぐ必要がありそうです。」