JR九州 きょう上場で完全民営化 LINEに次ぐ大型上場

JR九州 きょう上場で完全民営化 LINEに次ぐ大型上場
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JR九州は25日、東京証券取引所に株式を上場し、発足から29年で完全民営化します。上場時に想定される時価総額は4000億円を超え、ことし国内では、無料通信アプリを運営するLINEに次ぐ大型上場となる見込みです。
JR九州は昭和62年、旧国鉄の分割・民営化に伴って発足し、株式は独立行政法人の鉄道・運輸機構が保有してきました。国は路線の維持などを目的に事実上の国民負担でおよそ3800億円に上る「経営安定基金」を設け、JR九州は、この基金の運用益を赤字の穴埋めに充ててきました。

主力の鉄道事業は、現在もほとんどの路線で赤字が続いていますが、駅ビルやマンションの開発などで収益力が向上したことから、鉄道・運輸機構が保有する株式をすべて売却し、25日、東京証券取引所1部に株式を上場することになりました。JRの鉄道会社が株式を上場するのは、「東日本」「西日本」「東海」についで4社目です。

上場時に想定される時価総額は4000億円を超え、ことしに入って国内では、無料通信アプリを運営するLINEに次ぐ大型上場となる見込みです。

JR九州は、上場によって経営の自由度が高まり大規模な資金調達も可能になるとして、さらに事業を多角化して収益力を高めたいとしています。

上場までの道のり

昭和62年4月1日、旧国鉄の分割・民営化に伴って発足したJR九州は、管内を走る29のすべての路線が赤字でした。国は、路線の維持などを目的に事実上の国民負担で、およそ3800億円に上る経営安定基金を設け、JR九州は、この基金の運用益から年間100億円余りを、赤字の穴埋めに充ててきました。

政府はJR各社について、「経営基盤の確立など条件が整いしだい、できるかぎり早期に完全民営化する」としているため、JR九州は特色ある観光列車で利用者の増加を図りました。なかでも注目を集めたのが、平成25年に運行を始めた九州各地の観光地をめぐる豪華な寝台観光列車「ななつ星」です。料金は最も高いものでは、3泊4日で150万円を超えますが、現在も予約の平均倍率が20倍を超える人気で、外国人観光客の利用も増えています。

5年前の平成23年には博多と鹿児島中央を結ぶ九州新幹線も全線開業し、こちらも利用者数は増加傾向にあります。しかし九州では、全国を上回るペースで人口減少が進んでいるほか、高速道路網の整備に伴う高速バスとの競争、それに格安航空会社の相次ぐ就航などで厳しい競争環境が続いています。このため、JR九州は鉄道以外の事業に積極的に乗り出し、経営の多角化を進めました。現在では、駅ビル開発やホテル経営、マンション販売といった不動産関連事業に加え、飲食店の国内外への出店や農業分野にも参入しています。

この結果、現在は、売り上げの半分以上を鉄道以外の事業が占めるに至り、収益力がついたとして、国はJR九州の完全民営化に踏み切りました。これにあわせてJR九州は、事実上の国民負担で設けられた経営安定基金、3877億円の全額を取り崩し、独立行政法人の鉄道・運輸機構に支払う九州新幹線の鉄道施設を使うための料金の前払いなどに充てました。

合理化に懸念の声も

完全民営化について地元の利用者からは、利用が少ない路線の廃止や、すでに管内の駅の半分以上に上っている無人化といった合理化が一段と進むことを懸念する声もあがっています。

無人化が検討されている北九州市のJR筑豊線の若松駅がある地元の自治会の平野建会長は「ホームからの転落といったトラブルはいつ起きるか分からず、駅の無人化は不安です。経営のスリム化は民間企業としては当然だと思いますが、利用者の安全を第一に考えてほしいです」と話しています。