ゼロ・ダーク・サーティ スペシャル・プライス [DVD] (2014/06/03) ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク 他 商品詳細を見る |
9.11から二年後。パキスタンに配属されたCIA工作員マヤ(=ジェシカ・チャステイン)は、先任のダニエル(=ジェイソン・クラーク)に案内され、テロリストへの尋問を目の当たりにする。対テロ戦争の現実にショックを受ける彼女だったが、相次ぐ爆破テロからアルカイダ壊滅への使命を新たにする。同僚の死、上司の無理解を乗り越えて、ビン・ラディンの連絡係、「アブ・アフマド」を追いかけるが……
2011年5月11日に実行されたウサーマ・ビン・ラーディン殺害を、一人の女性分析官の視点から描いた映画
オバマ大統領ら米国首脳陣がリアルタイムで作戦を見て、快哉を叫んだことで有名だが、映画は作戦の8年前、9.11の二年後から始まる
冒頭はCIAの職員によるアルカイダ関係者への拷問である。爪こそ剥がさないものの、殴打に水責め、騒音による睡眠妨害とただの運び屋にも容赦がない
最初は引いていたヒロインも、使命感から抵抗を無くして、切れ者の分析官に“成長”していく。拷問をしていたダニエルが精神的に消耗してしまうのと対照的だ
クライマックスは海兵隊の突入作戦で、半ばドキュメントとなる。ラストにヒロインが「これから、どこへ行く」と聞かれ、無言で涙を流す場面は、復讐を果たした後の虚無感を漂わせていた
同じ監督の『ハートロッカー』より、共感できる幕引きだった
マヤのモデルには諸説あり、50年先の情報公開まで待つしかないらしい
イスラマバードのホテル爆破事件、アフガニスタンのチャップマン基地における自爆テロ事件と、実在の事件への関わりを考えると、従事したCIA職員の逸話を掛け合わせたものと思える
映像的にはドキュメント調か、サスペンスに徹するのか、振り切れていないので、いまいちインパクトが足りない。劇的すぎた『ハートロッカー』の反省だろうか、良く悪くも手堅すぎる出来だ
その分、再現に徹する海兵隊突入の方が印象が強かった
ビン・ラーディンとその連絡係の家族がいる屋敷へは、海兵隊がヘリで降下した。事前通告なしに行うためにパキスタン空軍の迎撃を回避する必要があるので、ステルス性を強化されたブラックホークが使用されている(一機不時着するトラブルがあり、その機体は破壊されている)
屋敷は護衛こそいないものの、半ば立て篭もることを考えて要塞化されており、海兵隊員たちはドアをいちいち爆破しなければならない
突入する兵士の命には代えがたいからか、最初からビン・ラーディンの捕獲は考えておらず、出会えば即、射殺している
巻き添えに女性が一人なくなっており、泣く子供たちをあやしながら、彼らに本人確認をさせるシュールな光景もあった
目標を倒した後は、パキスタン空軍が展開するまでの少ない時間で証拠物件を収集し、騒ぐ近所の住人には「近づくと撃つ」と警告。この一件だけ切り取れば、海兵隊がテロリストである
テロと戦う者はテロリストに近づかざる得ない、という対テロ戦争のジレンマがよく表現されている
関連記事 【DVD】『ハートロッカー』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)