全焼した栗原敏勝容疑者の自宅を調べる捜査員や消防隊員ら=宇都宮市針ケ谷町で2016年10月24日午前10時14分、野田樹撮影
宇都宮市の宇都宮城址公園などでの連続爆発事件で、死亡した同市針ケ谷町の元自衛官、栗原敏勝容疑者(72)の全焼した自宅から家庭用の打ち上げ花火やクギを押収したことが栃木県警への取材で分かった。栗原容疑者の遺体が見つかった同公園からは複数の電線や乾電池、ビー玉のほか、クギが見つかったことも判明。県警は、容疑者が殺傷能力を高めた爆発物を自ら製造した可能性があるとみて調べている。
県警は24日、栗原容疑者の自宅や公園の爆発現場、公園近くの車両火災の現場を検証した。火の立ち上がり方や爆発音、目撃証言などから3カ所全てで爆発物が使われたとみられる。同時多発的に発生したことから県警は時限発火装置を使用した可能性もあるとみて捜査している。司法解剖の結果、死因は腹部などを損傷したことによる胸腹部挫滅だった。
また、県警によると、栗原容疑者は一時妻と娘への接近禁止命令を受けていた。2年前に調停の末、離婚した。現在は1人暮らしだったとみられる。
同公園の爆発現場では、半径40メートル程度の広範囲にわたって金属片が飛び散っていたことも分かった。現場近くにいた被害者の体には金属片が刺さり、内臓を損傷した人もおり、県警は殺人未遂容疑で捜査している。【田中友梨、野田樹】
昨秋から落ち込む様子
栗原容疑者は昨秋以降、周囲に自殺をほのめかすような言葉を口にしていたという。
約5年前から今夏まで容疑者が入会していた精神障害者の支援団体「栃木県精神保健福祉会」の興野憲史会長によると、昨秋にドメスティックバイオレンス(DV)を理由に妻から起こされた訴訟で敗訴したと周囲に語っていた。財産分与に関する不満などとともに、「死にたい」と度々漏らしていたという。
パソコンやカメラの扱いが得意で、同会では機関紙の製作を担当。理事も務め、会員らの悩みに熱心に耳を傾けていたという。興野会長は「基本的には穏やかで優しい人。ただ、何か一つ気になることがあると、いつまでもそれに執着するタイプ」と説明。昨秋からは「落ち込んでいる様子をよく見るようになり、今思えば自殺の兆候があったのかもしれない」と振り返った。6月中旬に「心身の障害により退会します」と申し出たという。【加藤佑輔】