欧州エアバス・グループが大規模な組織改正を発表した。傘下のエアバスと合併する。欧州4カ国の政府が出資する企業を統合して発足した同グループは、「国」の影響力をそぐことに注力してきた。「普通の会社」として一般の株主に評価されるためには利益率を向上させる必要がある。
10年前の9月、欧州航空大手エアバスが開発するスーパージャンボ、A380が初めて、乗客を乗せて仏トゥールーズの上空へと飛び立った*。同社の経営陣は、この世界最大かつ世界初の総2階建てジェット旅客機を擁することで、ライバルである米ボーイングと肩を並べられるようになることを願った。
*=原文のまま訳した。トゥールーズにはエアバスの製造工場がある
だが、程なくして、問題が次々と明らかになる。2006年10月、エアバスはA380の引き渡しが遅れることを明らかにした。スケジュールの遅延は3度目のことだった。開発費はコントロールできないままどんどんと膨れ上がり、150億ドル(約1兆5400億円)に達した。この年、3人の最高経営責任者(CEO)が立て続けに辞任に追い込まれている。
エアバスはこれを契機に、長期にわたる大規模な近代化に着手。そして今年9月30日、エアバス・グループCEOのトーマス・エンダース氏が発表した一層の構造改革に至った。
■“母国への忠誠心”を弱める
同社は英国、フランス、ドイツ、スペインを代表する航空宇宙機器メーカー4社から成る企業連合、EADSとして1967年に発足した。エンダースCEOは株主である4カ国の政府が持つ影響力を低下させ、他の民間企業と同じく採算性を重視する企業にエアバス・グループを脱皮させるべく努力を重ねてきた。その試みは一応の成果を上げた。
だが、長年の経営がもたらした影響は同社の企業文化に深く根を下ろしている。エアバス・グループは傘下に、ジェット旅客機、防衛・宇宙、ヘリコプターの3つの事業部門を抱える。ジェット旅客機部門は、自分たちは本質的にはフランス企業であるといまだに考えている。防衛・宇宙部門は、ドイツ企業としてのアイデンティティーを持ち続けている。
9月に明らかにした構造改革で、エンダースCEOが率いるエアバス・グループは、傘下のエアバス──同グループにおける最も重要な部門でありA380など民間航空機のビジネスを手掛けている──と合併することを決めた。新しい社名は「エアバス」。エアバス・グループの傘下にある他の2部門は新生エアバスの子会社となる。これにより、それぞれの国に対する忠誠心は理論的には薄れるはずだ。