斎藤靖史、田中久稔
2016年10月23日01時45分
■終わらない水俣病 胎児性患者は今
『杢は、こやつぁ、ものをいいきらんばってん、ひと一倍、魂の深か子でござす。耳だけが助かってほげとります。
何でもききわけますと。ききわけはでくるが、自分が語るちゅうこたできまっせん。』
水俣病を描き、広く世に伝えた作家石牟礼道子さん(89)の「苦海浄土」(1969年)の一節だ。登場する少年「江津野杢太郎(もくたろう)」は、熊本県水俣市の胎児性患者、半永一光さん(60)がモデルになっている。
「一人でたたみの上にはって、もぞもぞしていました。あまり動けませんから。上がり框(がまち)に腰掛けて、物見して」。石牟礼さんは往時を振り返る。
半永さんは55年、水俣市で生まれた。漁師の家族は水俣病の発生で魚が売れずに困窮。半永さんは生後何年たっても首が据わらなかった。歩けず、言葉もほとんどしゃべれない。
幼い頃に家族から離れ、病院で…
残り:1214文字/全文:1587文字
トップニュース
新着ニュース
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞社会部