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【社会】

戦後を記憶?謎の瓶 横浜のホテル天井裏から…

「70年前の空気が入っていますよ」と語るバーテンダーの太田圭介さん

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 終戦直後に連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官が宿泊したことで知られる横浜市中区の「ホテルニューグランド」の天井裏から、黒ずんだウイスキー瓶が見つかった。瓶の中には終戦直後に進駐し、ホテルを宿舎にしていた米陸軍中佐の名刺が一枚。いたずら心で瓶を隠して日本を去ったのか−。想像をかき立てる七十年前のタイムカプセルは今後、ホテルで展示される予定だ。 (梅野光春)

 瓶は今年六月、ホテルの耐震工事をしていた作業員が見つけた。一九二七(昭和二)年に開業した本館の二階宴会場「フェニックスルーム」の天井裏の梁(はり)の上に横たわっていた。

 瓶には細い紙が貼られ、ローマ字で「McNAMARA」、片仮名で「マクナマラ」と鉛筆書きがある。中に「EUGENE J.McNAMARA」(ユージーン・J・マクナマラ)の名前と陸軍中佐の階級が刷られた名刺があり、名刺裏に滞在期間と部屋番号を示す「1946−1948」「316−317」などの文字が記されていた。

 ホテルニューグランドは四五〜五二年の間、米軍に接収されていた。四五年八月三十日に進駐のため厚木飛行場に降り立ったマッカーサー最高司令官が、同日から三日間、滞在したことも知られる。

 マクナマラ中佐もこのホテルにいたのか。調査を頼まれた横浜市の市史資料室主任調査研究員の羽田博昭さん(58)は、当時の米軍の電話帳から、ちょうどこの時期にマクナマラ中佐が夫婦でホテルを宿舎にしていたと確認した。瓶の発見場所はちょうど三一六〜三一七号室の真下だった。

瓶の中にあった「EUGENEJ.McNAMARA」と米陸軍の中佐の肩書が記された名刺=いずれも横浜市中区で

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 だが謎は残る。居室の床に穴を開けた痕跡はなく、下の宴会場から置こうにも、床から天井まで約五メートルの高さがある。工事をした清水建設の北沢俊太郎さん(56)は「はしごを掛け、くぎで打ち付けられた天井板を外せば置けるけども…」と疑問を感じたままだ。

 瓶の生い立ちも不明だ。白色透明のガラス製で黒いスクリューキャップ付き、高さ二十センチほど。ポケットに入る平らな形で容量約五百ミリリットル。「連邦法により瓶の再利用を禁ずる」という意味の英語が刻印され、米国で製造された酒瓶と考えられるが、銘柄を示すラベルや刻印はない。

 瓶を調べたホテルのメインバー「シーガーディアンII」のチーフバーテンダー・太田圭介さんは「真相を知るのは瓶だけ。当時の空気を詰めたまま『見つかるまで長かった』と思っているのでは」と想像する。

 七十年前の空気を「熟成」した瓶は、マクナマラ中佐を知る人が見つかれば−との期待も込め、一般公開される。問い合わせはホテルニューグランド=電045(681)1841=へ。

 

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