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おくちプロレス控室
最終発言2016/10/09 01:47:47 -
MS様に質問スレッド
最終発言2016/10/07 11:28:27 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/10/08 09:15:34 -
プレ貼り付け卓
最終発言2016/10/09 15:05:48
オープニング
●困った吟遊詩人
「はっはっはっはっは! その程度ですか!」
エージェント達に向かって、フリークスパレード世界に居座る『GM』は橙色の波動を放つ。『魅了』である。波動を受けてライヴスを乱されたエージェント達は、スキルを練る事が出来ないまま空に舞うGMを見上げる事しか出来ない。GMは片手に持つ竪琴を掻き鳴らし、激しい音波でエージェント達にダメージを与えていく。
「くそ……! スキルを封じられた上で全体攻撃とは……」
「こうもライヴスを掻き乱されていては、闘い続けるにも限界があります」
「辛いでしょう? 辛いでしょう! 次に何が来るか分かっていても、どうにもできないというのは!」
GMはエージェント達を嘲笑いながら、胸のエンブレムをつるりと撫でる。その瞬間に、彼の身体は白い輝きに包まれた。『鋼皮』を得たGMは、空中から妖精を呼び出し、その小さな体から放たれる光を受け取る。
「畜生! いい加減くたばったらどうだ!」
ジャックポットがGMにライフルを向ける。しかし、鋭い弾殻も鋼の守りに傷一つつけることが出来なかった。
「身を守りながら自らを強化する……いやらしすぎて反吐が出るな、貴様は!」
「ふふ、好きに言えばいい! 勝ったもんが勝ちなんだからねぇ!」
GMは白銀の銃を構え、ドレッドノートを撃ち抜く。そのまま大剣を振り回したGMは、中空から一気に斬りかかった。素早くソフィスビショップがカバーに入るが、大振りの一撃を受け止めきれずに仰け反ってしまう。
「ぐぅ、流石に重い……」
「いやいや、耐えますねえ皆さん。でもそろそろ限界ではありませんか?」
あちこちに生傷を作ったエージェント達を、GMは嘲笑いながら見下ろす。エージェント達はそれでもなお戦闘の意志を隠そうとしなかったが、通信機から飛んできた声が彼らの戦いを遮る。
「任務完了です! 撤退してください! 既に『ミンネジンガー』のデータは把握しました。撤退してください!」
「……了解した。撤退する」
HOPE内の一オペレーションルームにて、少女と青年がゾーン内での戦いを見つめていた。
「やれやれ。ガーディアンの処理にも追われているというのに、困ったものですね」
「示威篭城です。ゾーンルールに自らさえも縛り付ける事で本来以上の実力を発揮しているんですから、結局彼があのゾーンから出て悪さをする事は出来ません。好き好んであのゾーンに足を踏み入れる人間がいない限りは」
「かと言って、ドロップゾーンを制圧するには、あんなのでも放っておくわけにはいかないのですよねぇ。困りました困りました。どうしたものか……あのゾーンで戦う限り、あの七面倒で厄介なスキルに振り回されるに決まっているんですから。手練れの方達でも、初見で倒しきるのは消耗が大きくなりすぎるとオペレーターに判断されたくらいです」
「やはりゲームの事はその道のマニアに尋ねるのがよろしいのではないですか。意識を失っていた一般の方達も、意識を取り戻し始めています。彼らに聞くのは有りだと思います。ああいった、困った『GM』には一体何が効くのかを」
「ふむ。貴方の言う通りですね。少し探りを入れてみましょうか」
●野蛮な口喧嘩
君達が呼ばれたのは、彼らがそんな会話をしてから数日経ってからの事だった。
「……この映像の通り、厄介なスキルを使いこなし、彼は我々の事をあしらい続けています。それを皆さんに、今日その手で終わりにしていただきたいのですよ。先日、ドロップゾーンから皆さんが救助した方々に尋ねたんです。GMが困るのは何かって。もちろん幾つかありましたが……私はそのうちの一つに着目しました。『リアル言いくるめ』です」
何だそれ、と君達の中で少なからず疑問が浮かぶ。白衣の少女は、得意げに腕組みをしつつ、助手の青年に顎で指示する。青年は頷くと、段ボール箱の中からいくつかのメガホンのような機械を取り出し、君達に回していく。
「説明しましょう。リアル言いくるめとは、時として口プロレスとも言われるTTRPG界の大技です。根本的な判定はダイスロールで行われるTTRPGを、口八丁で自分有利に持ち込む……この行為に泣かされたGMは一人や二人ではありません! あれがゾーンルールを利用して我々に対応しているというのなら、こちらも対抗してやればいいのです!」
今一つ言っている事がよくわからない、と君達の中の誰かが首を傾げたかもしれない。メガホンを配り終えた青年は、柔和に微笑み言葉を付けたす。
「改めて説明しますと、何度かに分けて色々なエージェントさんに戦闘データを重ねてもらった結果、あの愚神……『ミンネジンガー』はゲーム『フリークスパレード』を模したゾーンに自らを強く縛り付ける事によってそのゾーン内での支配力を増し、本来デクリオ級では持ち得ない実力を手にしている事が明らかになりました。しかし、その方法は諸刃の剣。我々の言い訳が合理的でさえあれば、あれは拒むことが出来ないのです」
少女は大きく頷くと、戦闘中の映像を一時停止し、愚神の持つ竪琴を指揮棒で指した。
「例を挙げるなら、例えばこの竪琴を鳴らして攻撃する技。あれは聴覚に訴えて攻撃しているようなので、何とかして音を聞かないようにすれば無力化できるはずです。現実の戦いだとライヴスの影響も関わるから無理ですが、要するに口八丁であの愚神を丸め込めば、殆ど無傷で勝つことだって不可能ではないはずなのです」
「今皆さんに手渡したのは、貴方達の発言にライヴスを乗せて愚神に影響を与える道具です。ジャンク品から急ごしらえで作ったのですぐに壊れてしまうかもしれませんが、一回も使えれば、皆さんなら大丈夫だと信じています」
「さあ、あのいけ好かない吟遊詩人に鉄槌を下しましょう!」
解説
●ミッションタイプ:【敵撃破】
このシナリオはクリアと成功度に応じて様々なボーナスが発生します。
詳細は特設ページから「ミッションについて」をご確認ください。
●登場敵
デクリオ級愚神『ミンネジンガー』
『フリークスパレード』の世界を模した領域にとりつき、そのゲームシステムを取り込んで自らを本来の実力以上に強化している厄介な存在。幾人ものエージェント達の努力で、ようやく攻略の糸口をつかんだ。
・特殊攻撃。ファーストフェーズ中、順繰りに使用。回避不可。『フリークスパレード』に登場するスキルが改造されている。
魅了
ターン中敵はスキルを使用できない
鋼皮
ターン中のダメージを9割減少させる
聖銃
敵一体に現在体力の4割のダメージを与える。この攻撃で戦闘不能にはならない。
・通常攻撃。メインフェーズごとに順繰りに使用。彼本来の能力も強化されている。
ニーベルンゲン
竪琴の音で全体攻撃。5の固定ダメージ。必中。
アーサー
妖精を召喚して加護を受ける。次のターンの命中を二倍にする。
ローラン
大剣で攻撃。単体に重い一撃。
・???
とある状況で使う最終兵器。命中時ある部位にダメージ。
●シナリオ限定スキル『リアル言いくるめ』
このシナリオ中1回だけ使用できる、本来不可能な事を可能にするスキル。
ポケットに本来持っていない道具を隠し持つ、敵の攻撃をスキルなど使用せずに無効化する、敵へのダメージをバフなしで倍にする、など、上手くすれば相当な無茶が可能。一フェーズ中に使用できるのは一人だけ。ただ、主張の根拠がないとミンネジンガーの反駁によって無効化される場合もある。
●フィールド状況
夜。円形の広場になっており、床は石畳で出来ている。周囲はレンガ造りの家が並んでいる。空は良く晴れている。屋根の上には昇る事が可能。家は張りぼてで、中に入る事は不可能。
●成功条件
一人も残り体力20%を切らない。
プレイング
リプレイ
●#1
不死の王の召喚
2D6で判定 基礎目標値17(スペシャルは適用されない)
成功した場合、そのPLの全ての状態異常を解除し、行う判定はこの戦闘中自動成功する。他PLによってこの儀式が行われた場合、同じ種族に属するPLは行動を放棄し協力を宣言する事で目標値を1下げることが出来る。
『なるほど、これをしろと言うのね?』
凛道(aa0068hero002)の差し出したルールブックを見つめ、レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)は不敵に微笑む。しかしその実、身体は先の戦いでボロボロだ。彼女が戦場に立ち続けるための希望を叶える最終兵器。それがこれなのだ。しかし、愚神はケラケラと笑って首を振る。
「待ちなよ。絶対不可能じゃないか。助けてくれる味方が今はいないでしょ」
レミアは首を振る。そのままメガホンを口に当て、大胆不敵に声を張る。
『いいえ、無理ではないわ。何故なら今はエージェントと愚神との戦い。“エージェント”によって儀式が行われるなら、“エージェント”の協力で目標値を1下げられて然るべきでしょう?』
「ま、それもそうか」
愚神はあくまで余裕な態度を崩さない。妨害する気もないようだ。レミアはそんな愚神に背を向けて、仲間達を見渡した。
「協力してくれるわね?」
エージェント達は揃って頷いた。
レミアを取り囲むようにエージェントは立ち、両手をレミアの方へかざす。
「結局確率は3%以下だし。出せるとは思えないけどねぇ」
愚神は煽るが、あくまでレミアは動じない。不敵に笑って、その手に6面ダイスを二つ握りしめる。
『そうね、確かに出せないわ』
レミアは天高々とダイスを放り投げた。満月の明かりを受け、赤青二色のダイスは煌めく。誰もの目がダイスに注がれる中、レミアだけは愚神を見上げて大胆不敵に微笑んでいた。
『出てしまうんだもの。仕方ないわよね』
地面に落ちたダイスが示すは、
6と6。
瞬間、闇は地から天から飛び出し、一つの影を作り出す。不死の王。夜のみ生きることを赦された者の主。真っ直ぐにレミアと対峙したかと思うと、彼女の躯へ一気に吸い込まれていった。
金色の髪の毛は一層艶めき、唇は紅く濡れる。総てを惹きこむ光を瞳に宿し、彼女は会心の笑みを浮かべた。
『この感覚、久しぶりね……』
今ここに、レミアは不死の女王に返り咲いた。身体を変化させ、使い魔を使役し、五体を再構築する、運命への諦めを踏破した人でなし。彼女は両腕をふわりと広げ、ミンネジンガーを見据える。刹那、ミンネジンガーは呻いてひっくり返り、ライヴスを乱す波動が弾けて消えた。
「おおおっと。本当に不死の王を呼び出すなんて。いやはや。よくやる」
『当然の帰結。何故ならわたしは生まれついての不死の女王。夜に生き夜を征くミディアンの女王。その力を目の当たりに出来る事、光栄に思いなさい』
「ふむ……まあいいさ。たまにはこんなイレギュラーも無いとつまらないし」
呟き、愚神は竪琴を掻き鳴らす。封じる術もなく、エージェント達は等しくダメージを受けた。しかし、吸血鬼の女王が甦った今、さしたる問題ではなくなったのである。
●#2
『おいおい、もうレミア一人でいいんじゃないか? って言ってる場合じゃねえな』
榊 守(aa0045hero001)は苦笑しつつチートモードのレミアを一瞥する。魅了反射も考えたが、最早必要ない。彼は目を閉じ、言いくるめを今一度練り直す。その間に、愚神はその身体を白い輝きに包む。鋼皮の発動だ。
「いやいや。本物の吸血鬼さんに向かい合われちゃこっちも困るねえ。……さあ、僕の可愛い可愛い妖精さん、こっちにおいで!」
愚神が叫んだ瞬間、夜天から光の羽根を広げた一人の妖精が舞い降りてくる。その瞬間、不意に守はかっと目を見開き、メガホンを取った。
『そこだ! 俺はその妖精を貴様から寝取る!』
「ネ、ネトル?」
征四郎は思わず守の方をまじまじと見つめる。姿こそ変われどまだまだ幼い少女、大人の話はわからない。
『(何言ってるの……?)』
『(セラス、わかんなーい)』
「(あーあ……)」
それとなく理解している非リアの神様もいるが。外道魔法少女は口悪幼女と一緒に肩を震わせている。レミアは腕組みをしたまま、曰くありげの笑みを浮かべる。そんな少女達の様子には構わず、守は不意にコートの前ボタンをスタイリッシュに外し始めた。
『妖精さん。君はそれでいいのかい。全て諦めてしまうのかい。偽物の王子様に尽くし続ける生を、そのまま甘受し続けるのかな』
妖精はわからないといった様子で首を傾げる。シャツのボタンも外しながら、色男の笑みを浮かべ、守はさらに言葉を続けた。
『君だって本当は諦めちゃいないんだろう。ほら、聞こえないか。君が本当に諦めていなければ、心の奥底から叫びが聞こえるはずだ』
得意げな守の言葉に惑い、妖精は驚いたように周囲を見渡す。
『さあ、ともに革命しよう。この世界を!』
守は一気にコートとシャツをはだけ、歴戦の記憶が刻まれた逞しい肉体を妖精に見せつけた。一陣の風が吹き抜け、ばらばらとコートがはためく。
「ひゃっ」
『(ったく、しょうがねえな)』
突然の事に、紫 征四郎(aa0076)は思わず顔を背ける。しかしここはチャンス。ガルー・A・A(aa0076hero001)は主導権をひったくると、イメージプロジェクターを愚神に向けた。
『おい妖精! ナンパ男と変態、どっちを選ぶんだ!』
刹那、愚神は裸エプロンの変態となった。
「(うわぁ)」
木霊・C・リュカ(aa0068)はため息をつく。青白い痩せっぽちが裸エプロンを纏って、見ていると筆舌に尽くしがたい感覚になる。妖精も顔を真っ赤にすると、一気に守の胸へと飛び込み、彼の頬にキスをした。
妖精の力が守へ流れ込んでいく。身体が軽くなった守は、妖精の小さな頭をそっと撫で、勝ち誇った顔で愚神を見上げる。
『お前を助ける健気な薔薇は、もう俺のものだ。返して欲しけりゃ、力づくで奪うんだな』
「ふふん……別に構いやしないさ。僕には奥の手があるんだ」
腕組みをして、愚神は相変わらず動揺する様子は見せない。御神 恭也(aa0127)は武器を構えたまま、呆れたように呟くしかなかった。
「そんな格好で言われてもな……」
ダメージを9割方切ってくる敵を殴っても仕方ない。守の誑しぶりが最高に輝いたまま、戦いは次のステージへ続くのだった。
●#3
「全く。君にはこれでも喰らってもらおうかな!」
裸エプロン姿のまま、どこからともなく取り出した純白の銃を守へ向け、愚神は銃弾を放つ。望むところと、守はその銃弾を受け切った。
『ぬるいな。お前の怒りは所詮そんなもんか。じゃあ征四郎、ガルー、任せたぜ』
『そうだな。どうすっか……』
ガルーは守の方を窺い唸る。あんな色ボケを見た後では、何をしたものかと悩む。空を仰げば、裸エプロンのまま相変わらずふわふわ浮いている愚神の姿。その紛う事無き変態ぶりに、ガルーは思わず腹が立った。その苛立ちのまま、顔を顰めてガルーはメガホンを取る。
『おい、人間が空を飛ぶためには、2メートルの厚さの筋肉が必要だと知っているか?』
「はぁ? いきなり何の話だい?」
『お前は見たところ殆ど人間と変わるところはねえようだが……どうしてお前は空を飛べるんだ? 大きな翼があるわけでもなし。ライヴスで飛んでいるのか? そんなに無駄遣いしてたら、そろそろお前の身体そのものがヤバいんじゃないのか? さあ、お前がふわふわ飛び続けてんのは物理的に無理があるんだ。そろそろ落ちて来い!』
「……じゃあ逆に問わせてもらうけれど、吸血鬼はその身を霧に変えることが出来ると知っているかい?」
『あん?』
「これは吸血鬼の形態変化のちょっとした応用だ。その身を霧のように軽くして浮いているのさ」
その言いくるめは通らんと、誇らしげに語る愚神。しかし、レミアがいたのが運の尽き。レミアはじっくりと頷くと、その身をいきなり黒い霧へと変じ、一直線に愚神の方へと迫った。
『ええ。長らく使っていないから、すっかり忘れていたわ。……で、誰の許可でその吸血鬼の力、使っているのかしらね!』
黒い霧の中から声が響き渡り、いくつもの赤い瞳が輝く。その眼光で強引に愚神の身体を射竦めると、いくつもの細長い腕を伸ばし、愚神を蠅のように地へ叩き落とした。
「ほほうっ! これは予想外……」
霧は再び形を変え、可憐で冷酷な少女の姿へと変わる。代わりに夜へ浮きながら、彼女は勝ち誇ったように愚神を見下ろしていた。
『ああ、愉しい愉しい。まだ愉しませてもらうわよ?』
『(レミアこええ)』
ケントゥリオ級もかくやと思わせるレミアの力を前に、ガルーは内心でツッコミを入れる。同時に、狒村 緋十郎(aa3678)なら今のレミアの渾身の一撃で責め抜かれたいと考えるのだろうな、と愚にも付かないことを考えてしまう。そうしてぼんやりしてしまったガルーに向かって、愚神はローランを構える。相変わらず裸エプロンのまま。
「やってくれたねえ。君の指摘で、思わず墓穴を掘ってしまったよ!」
愚神は岩をも断つ大剣をずるずると引きずりながら、ガルーに向かって迫ってきた。当たろうと思っても当たれる気がしない。ガルーは溜め息をつくと、征四郎を呼んだ。
『おい、任せた』
「はい。任されます……」
征四郎はずかずかやってくる変態に蔑むような目を向けながら、振り回される大剣に合わせてライヴスミラーを発動した。剣は力なく跳ね返り、持ち主へと襲い掛かる。愚神は大剣の重みに耐えきれず、そのまま下敷きになってひっくり返る。
「うおおっ! ……いやいや、これは参ったな」
「まだ笑ってられる余裕があるなんて、驚きですよ」
へらへら笑う愚神を、征四郎は溜め息交じりに見下ろすのだった。
エージェント達は殆ど何も出来ない愚神を適当に攻撃する。愚神の能力を着々と削り取り、彼らの勝ちは揺るぎないものになりつつあった。
●#4
「(さあて、ここからは俺達のターンだ。リンドウ、打ち合わせ通りに頼むよ)」
『Yes, Master. 参ります』
レミアを前にして魅了を使えずにいる愚神に向かい、凛道はメガホンを取る。
『さて、この度はこのフリークスパレードのゲーム、隅から隅まで理解して参らせていただきました。私は前回与えられたロールを達成しています。これによって人狼として成長した私は、この二回目の戦いにおいては新たなるスキルを取得、行使することが出来ます。そうでしょう、GM』
「……だねえ。それは認めないわけにいかない。で、一体どんなスキルを取得するんだい?」
『“月下の盟”。自らの攻撃を放棄し、人狼を味方NPCとして3体召喚するスキルです』
凛道はそう言い放つと、天高く浮かぶ満月に向かって甲高く吼える。瞬間、建物の屋根を乗り越えて、3体の人狼が凛道に向かって集まってきた。凛道はその姿を見つめながら、さらに愚神へ向かって言葉を続ける。
『このNPCは一度ダメージを受けると自動撤退。カバーリング以外の自発行動は不可能。……そして、僕の行動判定にプラスの効果を与えることが出来る』
人狼達は凛道の前に降り立つと、跪いて真っ直ぐに彼の事を見上げる。
「貴方は我らの救い主。この命、貴方に捧げる!」
『ああ。共に行こう。アレの暗躍で……征四郎さん、そろそろあのみっともない姿のままにするのは終わりにしていただきたい……』
「あ、すみません」
裸エプロン姿の愚神を指して語りを入れようとした凛道だったが、今一つ締まらない。征四郎は慌ててプロジェクターの電源を切った。途端に、愚神は元のシルクハットに黒いコートの姿へと戻った。
凛道は咳払いすると、改めて声を張り上げた。
『共に行こう。かの者こそが、我らが一族、吸血鬼、人間を引き合わせ、三つ巴の戦いを強いていたのだ。僕達が征するべきは、あの憎々しい神だ!』
人狼達は遠吠えを以てこれに応える。愚神は溜め息をつくと、懐から竪琴を取り出した。
「やれやれ。一度のダメージで撤退だというなら、これで全部お陀仏だ。無に帰る」
「そうはさせませんよ!」
竪琴を弾こうとしたその腕を狙い、征四郎は紫の外套を翻して鋭く踏み込む。その一閃を見た愚神は、さっと身を翻した。
「それを喰らっては堪りませんねえ――」
しかし、逃れた先にはウレタン噴射機を構えたセレティア(aa1695)の姿が。
「ならこれでも喰らっておいたらどうですか?」
大量のウレタンが飛び出し、竪琴に纏わりつく。そこへさらに水筒の口を開いて投げつけた。水を吸ったウレタンは途端に固まり、竪琴を固めてしまう。
「さあ、これでその竪琴はもう使い物にならないでしょう?」
「おやおや……」
愚神は竪琴を振るが、ろくな音は鳴りそうにない。それを見て取ったレミアは、黒翼を広げて魔剣を構える。
『あら。わたしが壊してやろうかと思っていたけれど、こうなったら直接手を下してやるだけね』
普段の膂力がさらに増幅され、そのはけ口を求めるレミアの身体が竜の歯ぎしりの如く鳴き叫んだ。しかし、慌ててセレティアが割って入る。
「ま、待ってくださいレミアさん。わたし達もやりたいことがあるんです!」
『なぁに? セレティア。わたしの攻撃を遮って、一体何がしたいの?』
レミアは剣を担ぎ、真っ直ぐにセレティアを見据えた。
「真の吸血鬼になったり、色ボケになってみたり……こんな楽しい戦い、さっさと終わらせたら勿体無いじゃないですか!」
セレティアはぐっと握りしめた拳を掲げ、力強く熱弁する。
『ふうん……確かにこの楽しみ……友人であるあなたに御裾分けしないわけにはいかないわねえ。いいわ。ティア、わたしの攻撃を遮っただけの価値がある言いくるめを見せなさい』
尊大で寛大な命令。セレティアはぴしりと敬礼で応えた。愚神は得意げにケラケラと笑う。
「おやおや。これは最後の切り札を出す機会がありそうですね……」
「……ならさっさと出したらどうだ」
あくまでうろたえない愚神を見つめ、恭也は肩を竦めるしかなかった。
愚神の秘策とは? セレティアがやりたい事とは? 事態は5ターン目へもつれ込む。
●#5
「さて、ほぼ詰んでしまいましたねえ」
愚神は腕組みして、得意げに自らの不利を悟る。
『(まだまだ俺つえーをあきらめてない顔ね。ほかに自慢できることがないのかしら。かわいそ)』
セラス(aa1695hero002)は呆れたように呟く。
「(まあ、容赦はしませんけどね)」
『(そーね! セラス達の仕事は愚神をぼこぼこに叩きつぶすことだもの!)』
「(そういうことです)」
セレティアは頷くと、二人の男達に向かって叫んだ。
「凛道さん、榊さん、一気に仕掛けてください!」
『了解』
『結局仕掛けるのか……』
守はセレティアの言葉にツッコミを入れつつ、一息に殴り掛かる。レミア、凛道、そして人狼達も正面切って愚神へ突っ込んでいく。しかし、鋼皮を発動している愚神が大剣で守りを固めれば、攻撃など殆ど通らない。二人の一撃はあっさりと止められてしまった。余裕綽々に構えている愚神だったが、わらわら集まる敵の影で、恐ろしい計画が進行している事には気づかなかった。
「Humpty Dumpty sat on a wall!」
リズミカルに叫び、セレティアは蛙飛びアッパーの要領で、『陰陽』の一撃を愚神の尻に叩き込んだ。気合いと共に大量のライヴスを叩き込み、そのまま天高々と拳を掲げて愚神を吹き飛ばす。地面に墜落した愚神は、よろよろと立ち上がりながらにやりと笑みを浮かべる。
「いやあ。まさか君のような少女が中々に下劣な部位を狙おうとは」
「魔法少女は常にキュートでファンシー。しかし、いざという時には恥じらいを棄ててでも敵を討つ! それが真の淑女……!」
「ええ?」
征四郎の戸惑いをよそに、セレティアはメガホンを取る。
「さあ、私は今の攻撃で貴方の身体の内部にライヴスを送り込みました。これは、体内でライヴスを暴れさせて弾けさせる、いわば電子レンジのような攻撃……すなわち、いくら鋼の皮膚で防備を固めようと、この攻撃には意味が無い!」
「おやまあ」
愚神が首を振った瞬間、ライヴスの爆発が彼の纏う白い輝きを吹き飛ばした。煙を上げて地べたを転がる愚神。その様をセラスは嘲る。
『(汚い花火!)』
「(まったくですね)」
拳を固めながら、セレティアは尋ねた。
「Haughty Humpty Dumpty, 電子レンジでチンされた気分はいかが?」
「ふむ……これは、ああ。参ったねえ」
「All the king's horses and all the king's men Couldn't put Humpty together again……さあ、そろそろ年貢の納め時ですよ。今度こそお願いします。レミアさん、恭也さん」
『わかったわ』
「あいわかった」
レミアと恭也は剣を以て一斉に愚神へ殴り掛かる。愚神の身体はもうボロボロだ。
●#6
「聞け、愚神。対決型のゲームは対立するグループに公平性が保たれていなければならない」
既に虫の息の愚神に向かって、恭也はメガホンを取って最後の言いくるめを与える。
「しかし、6ターンの間にGMのお前はこちらに勝利のための情報を提示していない」
『(するまでもなくもうボロボロだけどね)』
「一方的に蹂躙される(はずの)現状は、PLの俺達が明らかに不利(だった)。これはゲームとは言えない」
「何言ってんですか」
不死の女王が復活しようが、妖精を寝取られようが、カンチョーされようが笑みを崩さなかったトリブヌス級メンタルの愚神も、恭也の屁理屈には流石に真顔だ。伊邪那美(aa0127hero001)も心の奥で突っ込み続ける。
『(泣きっ面に蜂……)』
「即ちだ。お前はGMとしてふさわしからざる所業を行ったと判断せざるを得ない。だが、もうゲームも佳境だ。その銃の使用禁止で手を打とう(?)」
『(屁理屈ひどすぎて、何だか愚神が可愛そうになってきた……ちょっと共鳴解いてよ)』
「(む?)」
言われるがまま、恭也は共鳴を解いた。伊邪那美は恭也からメガホンを受け取ると、愚神に向かって語り掛ける。
『ねえ、キミって友達いないんじゃないの?』
「は?」
『じーえむって、遊戯の進行者なんでしょ? 大体、進行者だけが楽しくて参加者がつまらないなんてよくないよ。だからみんなに嫌われちゃうんだよ』
平然と、むしろ説き伏せるような口調で伊邪那美は愚神に語る。彼女に全く悪気はない。だが、これがもし人間に語っているならこれほど痛い言葉もないだろう。恭也は呆れるしかなかった。
「俺より心を痛めつけにかかっている……」
「ふ、ふふふ! くくく、どうせこんな銃は役に立たない。この銃でいくらばかばか人を撃とうが死にやしないんだからさ! もう僕には何もない。使う時が来たね……奥の手を!」
エージェント達は慌てて身構える。幾度となく示された奥の手。その全貌がついに明かされる時が来たのだ。
「ふふ。怯えているのかな? さあ、僕は今から――」
「“命乞い”をする!」
その瞬間、愚神は素早く身を伏せる。誰もが嘆息してしまうような、見事な土下座の姿勢だ。
「すみませんでした! 僕は、僕は愚神としては全くの落ちこぼれで……ろくに戦う術なんて持ち合わせていなかったんです。そんな時に出会ったのが、このゾーンで。ここなら僕も輝ける……そう思って! 本当にすいませんでした! どうか、何でもしますから!」
『ん?』
「(ふふ……この哀れな姿。心を痛めないわけにいかないだろう……!)」
愚神は地面に額を擦り付けながら、ひっそりとほくそ笑む。そんな彼は、エージェント達が間合いを詰めている事に気付かなかった。
「……命乞いはそれで終わりか?」
恭也の冷淡な声。
「え? まあ……」
『じゃあ、死んでください』
凛道の鋭い一撃が愚神の頭を捉えた。愚神は吹っ飛んで転がり、力なく顔だけ上げる。武器を構えたエージェント達が、一斉に彼に向かって突っ込んでくるところだった。それを見た愚神は狂ったように笑う。
「ははははっ! なら目に焼き付けるがいい! ろくな攻撃方法も無く、命乞いも無視された愚神が、一体どんな末路を辿るのか!」
愚神の笑い声、エージェント達の攻撃が弾ける音が、広場の中に虚しく響いた。
●AfterPlay
「これで、よしと。皆さん、無事で、よかったです」
泉 杏樹(aa0045)は皆に出来た小さな傷を癒やし、にっこり微笑む。緋十郎はあんまり無事ではないのだが。ぐったりと壁にもたれ、心臓を抑え呻いていた。
「うむ……反動が。味わい深い反動が来ている……」
『所詮はゲームね。またしばらく使い物にならないかしら』
「だが、レミアの真の力、見られたのは良い経験だった。いつか、真祖レミアに……」
『やっぱり言ったかこの人』
緋十郎の呟きを聞き逃さず、ガルーはぼそりと呟いた。その目は幼女四人組とリュカ達の方へと向けられる。
「セラス、わたし達の戦いはどうでしたか?」
『うん。全く淑女な戦いぶりよ!』
ウェットティッシュで手を拭きながら、セレティアとセラスは満面の笑みを交わす。伊邪那美はその横でニコニコしているが、征四郎は困ったようにリュカを見上げる。
「あの、あれは淑女のたしなみとしては」
「うーん……いいんじゃないかな! 活躍したんだし!」
「そう、ですね。はい。そうです」
『マスター、征四郎さん、評価が甘すぎやしませんか……?』
そんな様子を見ていた杏樹も、そういえばと守に尋ねる。
「杏樹、寝ていて、わからなかったけど、榊さん、どうだったの?」
『え? うむ……』
『代わりに教えてあげるわ、杏樹。守はねぇ……』
「マジ勘弁ですレミア様」
すかさず守はレミアの前に跪いて頭を垂れる。これまた見事な命乞いの態勢だ。
「なに、したの?」
『いえ何も』
『セラスが教えてあげるわ! うーんと……』
『やめて』
「なら、俺が」
『御神もかよ』
「いやぁ、ここは俺が」
『リュカぁっ!』
「よく、わからないけど、めっ、よ!」
『はい、ごめんなさい』
安寧を取り戻した夜の街は、エージェント達の笑い声で満たされた……
Fin
結果
| シナリオ成功度 | 成功 |
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