記事作成日:2016/10/23 19:37 │ 最終更新日:2016/10/23 19:37
見る角度によって色合いを変え光り輝くコガネムシやタマムシの羽は、その美しさから古くより様々な調度品の装飾に用いられてきました。そんな甲虫の美しさに魅了された現代の男性が、一人作り上げた壮大な昆虫の芸術品が、群馬県のとある公民館にひっそりと展示されています。今回ご紹介するのは、板倉町中央公民館「昆虫千手観音」です。
写真:フジイ サナエ
地図を見る渡良瀬遊水地に隣接する群馬県「板倉町中央公民館」は、東北自動車道館林インターチェンジから車で15分ほどの場所にある、3階建の建物にイベントホールや会議室などが設けられた総合施設です。
中央公民館はエレベーターで2階に上がった場所が吹き抜けのロビーになっていて、その一画に地元出身の芸術家の方々が寄贈した絵画や彫刻作品がたくさん並んでいるスペースがあります。その中に、高さ180cmはあろうかという大きなガラスケースが。
写真:フジイ サナエ
地図を見るガラスケースの中に展示されているのが「昆虫千手観音」。像の装飾にはカナブンやタマムシの他カブトムシ・オニムシ・カナムシ・カミキリムシなど約2万匹が用いられており、制作期間は約6年という大作です。
写真:フジイ サナエ
地図を見る昆虫は像のパーツごとに大きさを揃えて隙間なく敷き詰められており、作者の几帳面な性格やこだわりの強さがにじみ出しています。
この像を作ったのは、板倉町に住む昆虫採集が趣味の稲村さんという一般男性。長年昆虫の標本を作って来られただけのことはあり、昆虫はどれも今にも動き出しそうな生き生きとした状態が保たれています。
写真:フジイ サナエ
地図を見る昆虫千手観音は唐招提寺金堂の千手観音像をモデルに作られており、体の正面で印を結ぶ四本の手と、背後に放射状に並ぶ数十本の腕、その隙間にびっしりと小さな手のような物体が背後を埋め尽くしていますが、これは千手観音の手を表現したクワガタムシの頭部です。カナブンとタマムシの緑色が基調の像の中で、クワガタの赤茶色の甲羅が赤い炎のように鮮やかなコントラストを生んでいます。
写真:フジイ サナエ
地図を見る稲村さんが昆虫千手観音を作り始めたきっかけは、お孫さんが捕まえてきた虫がすぐ死んでしまうので、供養のために仏像の形にして残そうと思ったことが始まりだったそうです。次第に像の制作にのめり込むようになり、遠くまで虫を探しに行くようになった稲村さんでしたが、やはり仏像制作という名目で命ある虫に注射を打つ瞬間は罪悪感にさいなまれ、何度も制作を断念しようと思ったといいます。
無数の小さな命で構成された千手観音像は、台座の隅に至るまで決して手を抜くこと無くこだわり抜いて作られ、ただの珍品としてではなく芸術作品としての完成度の高さで見る人の心を掴んで離しません。
群馬県板倉町中央公民館の昆虫千手観音、いかがだったでしょうか。虫好きな方もそうでない方も、その造形美に圧倒されることと思います。渡良瀬遊水地からも近いので、散策の際にはぜひ立ち寄ってみていただきたい隠れスポットです。
中央公民館の休館日は毎週月曜日と祝日、年末年始。開館時間は午前8時30分から午後5時15分です。
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