2016年10月23日
欧米はいつ世界を支配したのか〜ヨーロッパって？
以下、下田淳著『「棲み分け」の世界史』（ＮＨＫブックス）に沿って、諸問題を眺めていきます。
先ず【ヨーロッパ】というものの登場は、いつ、どんなものであったか？
ヨーロッパをヨーロッパとして語るには、広く世界全体を認識している事が全体になりますよね。北があって、南があって、東があって、西があって、その上で、アジアやアフリカを意識して、ヨーロッパというものが本格的に意識されることになる。
これは日本の話でも同じですよね。「倭人」というのは中国大陸側からの呼称であり、倭に住む者を指していた。「倭」は地域名だったのでしょうか。やがて「倭国」という呼称が使用された。しかし、察するに当の倭人は自分たちの帰属国を「ヤマタイ」とか「ヤマト」と名乗っていた。或る時、何らかの理由で国号を「日本」に改めたと通知した。おそらくは「日の本（もと）の方角だから」という意味であり、これは「朝陽が鮮明だから」という意味合いの「朝鮮」という地名とも似て、要は、中華王朝から見たときに東の方向にある「日の出の方角、すなわち日の本」という事ですよね。基準は�狠羃抬瓩肪屬�れていた。そこが中心であるという基準がないと、「東の方向の国です」とか、「日の出の方向の国である」という自称も成立しない。
さて、ヨーロッパの場合はどうかというと、紀元前700年頃にギリシャの詩人でヘシオドスという人物が最初に『神統記』の中で使用したのが最初であるという。その次が紀元前500〜449年のペルシア戦争を記したヘロドトスの『歴史』であるという。ヘロドトスが使用した「エウローペー」が「ヨーロッパ」の語源であるという話は稀にチラホラと出てくるのですが、その「エウローペー」は地理的概念として使用されており、何を指していたのかというと、イスタンブールが面するボスポラス海峡よりも西の地域を指していたという。それよりも東はアジア。ん。これ、現在でも、ヨーロッパとアジアとの境界は、そこですよね。（厳密にはボスポラス海峡の西岸も少しだけトルコがあり、一般的に、また地図帳でもトルコは西岸であってもアジアの扱い。）
余談ながら、ギリシャ語そのものに影響を与え、アルファベットの元になったのがフェニキア文字であり、フェニキアとは現在のシリアやレバノンのあたり。そして「エウローペー」はセム語の「エレプ」とみられるとかで、結局のところ、フェニキア人は「夕暮れ」という意味で使用していたという。それがヘロドトスによって「ボスポラス海峡の西側」の意味で「エウローペー」と使用されたという事になる。となると【ヨーロッパ】という言葉も元々は、シリアやレバノンから見た時に「西の方角」、「日の沈む方向」の意味の言葉であった?!
で、ここまでで確認しておきたいのは、
「ギリシャはヨーロッパ、エウローペーである」、
という事なんですね。
実際に、ＥＵ離脱劇でもギリシャがＥＵから離脱するとなった際、鋭い批評家は、その事に言及していましたよね。「ヨーロッパにとってギリシャは欠かすことができないんです。ギリシャ神話があるから」と、説明した。すると、ミヤネ屋さんあたりが「そんなアホな。借金を返せない迷惑な人たちですやん」的な受け答えをしたのだったかな。当時の日本のマスコミの論調は総じて、そんなもので、
「何故、ＥＵはギリシャなんていう怠け者の国を斬り捨てないのだ！ ギリシャみたいな国こそが迷惑の根源じゃないかっ！」
という論調一辺倒だったので、よく記憶している。
何故か日本人は現行のＥＵ贔屓というか、財政タカ派の意見ばかりだったんでしたよね。その意識があるから、「ギリシャなんて斬り捨てられるべき」となり、英国のＥＵ離脱劇の後には「英国人は愚かな決断を下した。次にはスコットランドが英国から離脱した上でＥＵに参加することになる。愚かな選択をした英国は酷い目に遭うに違いないっ！」的な、願望を込めた国際情勢の説明になっていたりした訳で。実際、当時の言説は物凄く偏っていましたよね。英国が痛い目に遭ってくれないと自論の間違いを認めねばならず、どうしてもブレグジット（英国離脱）は愚かな決断であったと論じない訳にはいかない財政タカ派の執念というものが、そうさせてしまったのでしょう。
しかし、実際にはフランス人のエマニュエル・トッド、イギリス人のフレデリック・フォーサイスなどが後に発信している通りで、実際にはＥＵは泥舟であり、どこもかしもＥＵを離脱したがっているのが現実であり、わざわざ独立した後のスコットランドが現実問題として泥舟であるＥＵに加入するというシナリオは、ヨーロッパの人々が「悔し紛れの腹いせ」として語り出した言説に過ぎず、日本人は全くそんな言説を信じる必要性はありません旨、かなり丁寧に解説していたりする――。
確かに日本の解説者で大真面目に「スコットランドがＥＵに参加することになったら、どうするんですかっ！ 世界経済は大変なことになってしますよっ！」的な意見を語っていたのを目撃しましたが、言われてみると、その通りって気がしませんかね。今後、どこかの国がＥＵに新規加入すると予測できますゥ？ ったく。
あ。話を戻します。いや、確かに文明論的な文脈からすると、ヨーロッパとはギリシャから始まっているから、もし仮に、ヨーロッパ共同体を名称にしているＥＵからすると、「ギリシャを切り離してしまうことに抵抗が強い」という、そういう意識がホントにあったのではないかという気もしてくる。実は【ヨーロッパ】というものの歴史そのものは曖昧さを含み、そして少しズレた定義になってしまうのだ。
【ヨーロッパ史】と言った場合、そこにエーゲ海文明や、ギリシャ・ローマ文明が含まれるものであるような、そういう認識ありますよね。我々、日本人が「西洋の歴史は…」と言った場合、それぐらい古いものであるような認識がある。しかし、細かく眺めていくと違うらしんですよね。
大昔、「ゲルマン民族の大移動」というのを蛍光マーカーでマークした記憶があると思いますが、あれです。現代人が挙げるヨーロッパの国々というと、イギリス、フランス、ドイツあたりの国名が何を差し置いても列挙されることになりますが、その祖はゲルマン系民族であり、４世紀後半の民族大移動によって現在の欧州各地に南下して国を建てるなどして居住をした人々であり、ローマ文化に大きな影響を受けてキリスト教の影響を受けた人々である。
ギリシャ神話とヨーロッパの関係は？
ローマ（イタリア）を拠点とするキリスト教とヨーロッパ人の関係は？
ビザンツ帝国のコンスタンチノープルは現在のイスタンブールですが、コンスタンチノープルを攻めた十字軍の正体とはヨーロッパ人というよりも、むしろ、西ヨーロッパ人であり、途中からキリスト教徒になったゲルマン系の子孫であることに気づかれる。
ギリシャをＥＵから省くことに抵抗があるのも、イタリアを省くことにも抵抗があるというのは、実は【ヨーロッパ】という概念を掲げ、【ヨーロッパ人】を名乗る場合の、そのアイデンティティーに深く食い込んだ問題であるというのは、信憑性があるのではないだろか。ギリシャとイタリアを抜いて、ヨーロッパ共同体であると名乗り続けた場合、そのアイデンティティーに関わる概念が揺らいでしまう可能性があるというのは、一見、荒唐無稽に感じる問題でありながら、実はホントなのでは?!
ビザンツ帝国の前身は東ローマ帝国。ゲルマン人はというと途中から南下してきてローマを首都にした西ローマ帝国があったが、それを弱体化させたのがゲルマン系民族であり、現在のドイツやフランス、イギリスの直接的な先祖なんですよね。西ローマ帝国を滅ぼしたのはゲルマン人オドアケルとされており、それが西暦467年。その後にゲルマン系民族は西ヨーロッパ地方に広まって当たり前のようにキリスト教の文化圏となる。後述しますが、西ヨーロッパの祖はフランク王国であり、そのシャルルマーニュ大王（カール大帝）の即位は西暦800年である。
ゲルマン人に滅ぼされなかった東ローマ帝国は後にビザンツ帝国となりますが、そのビザンツ帝国がオスマン帝国に滅ぼされたのが1453年。その後、宗教的な後継者になったのはロシア正教ですが、そういえばロシアについては�爛茵璽蹈奪儉瓩箸いΤ鞠阿�ら切り離されるのが通例ですよね。
「ヨーロッパ」というとキリスト教のイメージが強いものの、「あれ？」という感覚がある。キリスト教の文明ではあるのですが、途中から吸収した人たちが西ヨーロッパ人であり、今日ともなると西ヨーロッパ人が「ヨーロッパ人」の代表になっている事に気付かされる。
現在の我々がイメージするところのヨーロッパ人はキリスト教文化圏の人々である。しかし、キリスト教の歴史と突き合わせてみると、西ヨーロッパの歴史とは、そういう感じなんですね。伝統的なヨーロッパ人というべきか、そのキリスト教的な正統性と言ってしまうと語弊がありますが、歴史的文脈の中で、思いの外、【ヨーロッパ】とか【ヨーロッパ人】という歴史、その歴史の中のアイデンティティーはキリスト教を巡るもの、歴史的経緯を巡るもの、その文脈が頑健ではないんですよね。
翻って、現在のヨーロッパとは西ヨーロッパのそれを指しており、西ヨーロッパが華々しく活躍しはじめるのは大航海時代あたりからなんですよね。
一方でビザンツ人は自らを「ローマ人」と名乗っていたという。ローマといえばイベリア半島の、あのローマですが、何故か当時のコンスタンティノープル、現在のイスタンブールに住んでいたビザンツ人が「ローマ人」と自称していたという。アイデンティティーとしては、東ローマ帝国から脈々と継承されていたが故にビザンツ人は自分をローマ人だと名乗っていたのでしょう。
で、そのビザンツ人にして、西方の人々、西の方角の人々を「フランク族」と呼んでいたという。確かに時代考証をすれば、おそらく、その当時の文化水準からすると西方の人々とは「野蛮な人たち」に過ぎなかったっぽいんですよねぇ。
実際、（現在の我々がイメージするところの）【ヨーロッパ人】というアイデンティティーが確立するのは、早くてもマキャベリあたり、後はモンテスキューあたりだそうで、そうなると15〜18世紀頃であるという。しかも、それが指しているのは西ヨーロッパ文明を指しているだろうから、歴史を伴なった醸成されたであろうアイデンティティーというのは微妙になってくる。キリスト教の正統性を巡る問題があるし、一口に【ヨーロッパ人】とは言ってくれるがギリシャ神話やローマ神話との関係性はどうなるのかという問題がありそうですからね。（ギリシャをＥＵから除外して、イタリアを除外してしまった場合、「ヨーロッパ」という名称の元に形成されている文明圏の何かが崩れてしまうのはホントの可能性があるのでは？）
先ず【ヨーロッパ】というものの登場は、いつ、どんなものであったか？
ヨーロッパをヨーロッパとして語るには、広く世界全体を認識している事が全体になりますよね。北があって、南があって、東があって、西があって、その上で、アジアやアフリカを意識して、ヨーロッパというものが本格的に意識されることになる。
これは日本の話でも同じですよね。「倭人」というのは中国大陸側からの呼称であり、倭に住む者を指していた。「倭」は地域名だったのでしょうか。やがて「倭国」という呼称が使用された。しかし、察するに当の倭人は自分たちの帰属国を「ヤマタイ」とか「ヤマト」と名乗っていた。或る時、何らかの理由で国号を「日本」に改めたと通知した。おそらくは「日の本（もと）の方角だから」という意味であり、これは「朝陽が鮮明だから」という意味合いの「朝鮮」という地名とも似て、要は、中華王朝から見たときに東の方向にある「日の出の方角、すなわち日の本」という事ですよね。基準は�狠羃抬瓩肪屬�れていた。そこが中心であるという基準がないと、「東の方向の国です」とか、「日の出の方向の国である」という自称も成立しない。
さて、ヨーロッパの場合はどうかというと、紀元前700年頃にギリシャの詩人でヘシオドスという人物が最初に『神統記』の中で使用したのが最初であるという。その次が紀元前500〜449年のペルシア戦争を記したヘロドトスの『歴史』であるという。ヘロドトスが使用した「エウローペー」が「ヨーロッパ」の語源であるという話は稀にチラホラと出てくるのですが、その「エウローペー」は地理的概念として使用されており、何を指していたのかというと、イスタンブールが面するボスポラス海峡よりも西の地域を指していたという。それよりも東はアジア。ん。これ、現在でも、ヨーロッパとアジアとの境界は、そこですよね。（厳密にはボスポラス海峡の西岸も少しだけトルコがあり、一般的に、また地図帳でもトルコは西岸であってもアジアの扱い。）
余談ながら、ギリシャ語そのものに影響を与え、アルファベットの元になったのがフェニキア文字であり、フェニキアとは現在のシリアやレバノンのあたり。そして「エウローペー」はセム語の「エレプ」とみられるとかで、結局のところ、フェニキア人は「夕暮れ」という意味で使用していたという。それがヘロドトスによって「ボスポラス海峡の西側」の意味で「エウローペー」と使用されたという事になる。となると【ヨーロッパ】という言葉も元々は、シリアやレバノンから見た時に「西の方角」、「日の沈む方向」の意味の言葉であった?!
で、ここまでで確認しておきたいのは、
「ギリシャはヨーロッパ、エウローペーである」、
という事なんですね。
実際に、ＥＵ離脱劇でもギリシャがＥＵから離脱するとなった際、鋭い批評家は、その事に言及していましたよね。「ヨーロッパにとってギリシャは欠かすことができないんです。ギリシャ神話があるから」と、説明した。すると、ミヤネ屋さんあたりが「そんなアホな。借金を返せない迷惑な人たちですやん」的な受け答えをしたのだったかな。当時の日本のマスコミの論調は総じて、そんなもので、
「何故、ＥＵはギリシャなんていう怠け者の国を斬り捨てないのだ！ ギリシャみたいな国こそが迷惑の根源じゃないかっ！」
という論調一辺倒だったので、よく記憶している。
何故か日本人は現行のＥＵ贔屓というか、財政タカ派の意見ばかりだったんでしたよね。その意識があるから、「ギリシャなんて斬り捨てられるべき」となり、英国のＥＵ離脱劇の後には「英国人は愚かな決断を下した。次にはスコットランドが英国から離脱した上でＥＵに参加することになる。愚かな選択をした英国は酷い目に遭うに違いないっ！」的な、願望を込めた国際情勢の説明になっていたりした訳で。実際、当時の言説は物凄く偏っていましたよね。英国が痛い目に遭ってくれないと自論の間違いを認めねばならず、どうしてもブレグジット（英国離脱）は愚かな決断であったと論じない訳にはいかない財政タカ派の執念というものが、そうさせてしまったのでしょう。
しかし、実際にはフランス人のエマニュエル・トッド、イギリス人のフレデリック・フォーサイスなどが後に発信している通りで、実際にはＥＵは泥舟であり、どこもかしもＥＵを離脱したがっているのが現実であり、わざわざ独立した後のスコットランドが現実問題として泥舟であるＥＵに加入するというシナリオは、ヨーロッパの人々が「悔し紛れの腹いせ」として語り出した言説に過ぎず、日本人は全くそんな言説を信じる必要性はありません旨、かなり丁寧に解説していたりする――。
確かに日本の解説者で大真面目に「スコットランドがＥＵに参加することになったら、どうするんですかっ！ 世界経済は大変なことになってしますよっ！」的な意見を語っていたのを目撃しましたが、言われてみると、その通りって気がしませんかね。今後、どこかの国がＥＵに新規加入すると予測できますゥ？ ったく。
あ。話を戻します。いや、確かに文明論的な文脈からすると、ヨーロッパとはギリシャから始まっているから、もし仮に、ヨーロッパ共同体を名称にしているＥＵからすると、「ギリシャを切り離してしまうことに抵抗が強い」という、そういう意識がホントにあったのではないかという気もしてくる。実は【ヨーロッパ】というものの歴史そのものは曖昧さを含み、そして少しズレた定義になってしまうのだ。
【ヨーロッパ史】と言った場合、そこにエーゲ海文明や、ギリシャ・ローマ文明が含まれるものであるような、そういう認識ありますよね。我々、日本人が「西洋の歴史は…」と言った場合、それぐらい古いものであるような認識がある。しかし、細かく眺めていくと違うらしんですよね。
大昔、「ゲルマン民族の大移動」というのを蛍光マーカーでマークした記憶があると思いますが、あれです。現代人が挙げるヨーロッパの国々というと、イギリス、フランス、ドイツあたりの国名が何を差し置いても列挙されることになりますが、その祖はゲルマン系民族であり、４世紀後半の民族大移動によって現在の欧州各地に南下して国を建てるなどして居住をした人々であり、ローマ文化に大きな影響を受けてキリスト教の影響を受けた人々である。
ギリシャ神話とヨーロッパの関係は？
ローマ（イタリア）を拠点とするキリスト教とヨーロッパ人の関係は？
ビザンツ帝国のコンスタンチノープルは現在のイスタンブールですが、コンスタンチノープルを攻めた十字軍の正体とはヨーロッパ人というよりも、むしろ、西ヨーロッパ人であり、途中からキリスト教徒になったゲルマン系の子孫であることに気づかれる。
ギリシャをＥＵから省くことに抵抗があるのも、イタリアを省くことにも抵抗があるというのは、実は【ヨーロッパ】という概念を掲げ、【ヨーロッパ人】を名乗る場合の、そのアイデンティティーに深く食い込んだ問題であるというのは、信憑性があるのではないだろか。ギリシャとイタリアを抜いて、ヨーロッパ共同体であると名乗り続けた場合、そのアイデンティティーに関わる概念が揺らいでしまう可能性があるというのは、一見、荒唐無稽に感じる問題でありながら、実はホントなのでは?!
ビザンツ帝国の前身は東ローマ帝国。ゲルマン人はというと途中から南下してきてローマを首都にした西ローマ帝国があったが、それを弱体化させたのがゲルマン系民族であり、現在のドイツやフランス、イギリスの直接的な先祖なんですよね。西ローマ帝国を滅ぼしたのはゲルマン人オドアケルとされており、それが西暦467年。その後にゲルマン系民族は西ヨーロッパ地方に広まって当たり前のようにキリスト教の文化圏となる。後述しますが、西ヨーロッパの祖はフランク王国であり、そのシャルルマーニュ大王（カール大帝）の即位は西暦800年である。
ゲルマン人に滅ぼされなかった東ローマ帝国は後にビザンツ帝国となりますが、そのビザンツ帝国がオスマン帝国に滅ぼされたのが1453年。その後、宗教的な後継者になったのはロシア正教ですが、そういえばロシアについては�爛茵璽蹈奪儉瓩箸いΤ鞠阿�ら切り離されるのが通例ですよね。
「ヨーロッパ」というとキリスト教のイメージが強いものの、「あれ？」という感覚がある。キリスト教の文明ではあるのですが、途中から吸収した人たちが西ヨーロッパ人であり、今日ともなると西ヨーロッパ人が「ヨーロッパ人」の代表になっている事に気付かされる。
現在の我々がイメージするところのヨーロッパ人はキリスト教文化圏の人々である。しかし、キリスト教の歴史と突き合わせてみると、西ヨーロッパの歴史とは、そういう感じなんですね。伝統的なヨーロッパ人というべきか、そのキリスト教的な正統性と言ってしまうと語弊がありますが、歴史的文脈の中で、思いの外、【ヨーロッパ】とか【ヨーロッパ人】という歴史、その歴史の中のアイデンティティーはキリスト教を巡るもの、歴史的経緯を巡るもの、その文脈が頑健ではないんですよね。
翻って、現在のヨーロッパとは西ヨーロッパのそれを指しており、西ヨーロッパが華々しく活躍しはじめるのは大航海時代あたりからなんですよね。
一方でビザンツ人は自らを「ローマ人」と名乗っていたという。ローマといえばイベリア半島の、あのローマですが、何故か当時のコンスタンティノープル、現在のイスタンブールに住んでいたビザンツ人が「ローマ人」と自称していたという。アイデンティティーとしては、東ローマ帝国から脈々と継承されていたが故にビザンツ人は自分をローマ人だと名乗っていたのでしょう。
で、そのビザンツ人にして、西方の人々、西の方角の人々を「フランク族」と呼んでいたという。確かに時代考証をすれば、おそらく、その当時の文化水準からすると西方の人々とは「野蛮な人たち」に過ぎなかったっぽいんですよねぇ。
実際、（現在の我々がイメージするところの）【ヨーロッパ人】というアイデンティティーが確立するのは、早くてもマキャベリあたり、後はモンテスキューあたりだそうで、そうなると15〜18世紀頃であるという。しかも、それが指しているのは西ヨーロッパ文明を指しているだろうから、歴史を伴なった醸成されたであろうアイデンティティーというのは微妙になってくる。キリスト教の正統性を巡る問題があるし、一口に【ヨーロッパ人】とは言ってくれるがギリシャ神話やローマ神話との関係性はどうなるのかという問題がありそうですからね。（ギリシャをＥＵから除外して、イタリアを除外してしまった場合、「ヨーロッパ」という名称の元に形成されている文明圏の何かが崩れてしまうのはホントの可能性があるのでは？）