前回は、知的生産の要素を5つに分解してみました。
- 情報摂取(Infomation intake)
- 記録管理(Log management)
- 知的作用(Intellectual function)
- 概念構築(Concept making)
- 表現制御(Expresstion control)
ここに「姿勢」(Attitude)を加えて、Aliiceと名付けたところで終わりました。
今回はその続きです。
Five-pointed star
せっかく5つの要素が出てきて、互いがそれぞれに関係しあっているのですから、それを配置してみましょう。
「知的生産の五芒星」(Aliice pentagram)です。一気に中二病っぽくなってきましたね。わかりやすくて良い感じです。
情報摂取
どのような情報を仕入れるのか。
知的生産の「原材料」は、もちろん情報なので、どのような情報を、どのようにインプットするのかは非常に重要なテーマです。現代ではメディアの多様化が進んでいると共に、玉石混淆感もハンパではありませんので、
- 多様な情報をどう捌くのか
- 情報の信頼性をどう確認するのか
- それぞれの情報とどう付き合うのか
といった包括的なテーマが出てきます。その下に、「ツイッター・ポートフォリオの構築法」や「読書の仕方」などが配置されることになります。現代であれば、そこに「効率よいググり方」なども含まれるでしょう。
ともかく、知的生産のスタートラインとなるエレメントです。
記録管理
どのような情報を、どのように記録し、保存するのか。
「情報」そのものは、実体を持たないので、それを記録として保管しておく必要があります。「情報摂取」で仕入れた情報もそうですが、自分で考えたことや、日常の記録もここに含まれます。
現代はビッグデータ時代に突入しつつありますが、個人の情報環境も似た方向に向かっていて、これまでとは比べものにならないくらいに豊かな環境が安価で手に入りるようになっています。その使い方は、改めて考えておく必要があるでしょう。
知的作用
情報をどのように加工するのか。
ごく簡単に言えば「いかに考えるのか」ということです。情報を手に入れて終わりでは、それは知的生産とは言えません。「頭をはたらかせる」必要があります。分析や考察を行うだけでなく、着想を促すような視点を持つこと。それらすべてが知的作用です。
ただしこのエレメントは、発散的かつ流動的なものです。人間の脳は連想的に働いているので、あまり脈絡がありません。ある要素について、多重的に考えたり、矛盾的に考えたりもします。ある意味、混乱的・混沌的状況です。知的作用は、それらを積極的に引き受けます。
概念構築
思考をどのようにまとめるのか。
知的作用はカオス的なものでしたが、そのままでは「アウトプット」として成立しません。「他の人にわかるかたち」にならないのです。よって、その遊体的なものを一つの形に固めなければいかません。構造を与えるのです。
基本的にそれは、一つの「断面」でしかありません。構造体を作るのに「断面」とは妙な表現かもしれませんが、ようは構造の作り方にはいくつもパターンがありうる、ということです。なにせもともとはカオスなものなのです。そこに一定の脈絡や文脈を与えて、他の人にわかりやすい形に整えるのですから、やり方はいくらでもありえます。つまり「唯一の正解」というものはありません。
一般的に発想法と呼ばれるものは、上記の「知的作用」と、この「概念構築」の組み合わせによって成立しています。前半パートを「知的作用」が担当し、後半パートを「概念構築」が担当するのです。もちろん、この二つも相互に影響しあっているので、そこまで綺麗に切り分けられるわけではありません。あくまで便宜的な切り分けです。
表現制御
概念をどのように伝えるのか。
うまく構造が完成しても、それが他の人に伝わるかは表現次第です。これが適切にできないと、「アウトプット」を受け取ってもらうことができません。
文章がよいのか、箇条書きがよいのか、図解するのがよいかといったこともありますし、もっと単純に「文章術」みたいなものもここに含まれます。もちろんこれは単独で取り出せるものではなく、上記四つの要素と関わっている点には注意が必要です。
さいごに
これからこの連載では、これら5つのエレメント(+1つの姿勢)について書いていきますが、くれぐれも「それぞれの要素は相互に関連しあっている」点には留意してください。その点を忘れると、途端に知的生産の全体性が損なわれます。
「文章の書き方」のようなテクニックが、それだけではあまり機能しないのも、その人の文章力を支えているのが表現制御だけではないからです。その他の要素があってこそ、知的生産という1つのプロセスが完成します。つまり、テクニックが役立たずなのではなく、抜けている視点がある、ということです。
それを踏まえた上で、次回から5つの要素(+1の姿勢)について考えていくことにします。
▼今週の一冊:
ひさびさに頭をガツンとやられた一冊です。
知的誠実さを重んじる人間からしたら、どこまでもふざけたタイトルなのですが、非常にラディカルな切り口から、「本を読むこと」を分析しています。全面的に同意できるものではありませんが、著者が提示する話は、たしかにと頷けることも多いのです。
もちろん、私は書評を書く本については、一行目から最終行までちゃんと読んでいます。でも、それは一つの「形式」(スタイル)でしかないのもたしかです。
» 読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)
Follow @rashita2
電子マガジンの作成が中盤あたりまできました。書籍の進行で言えば、ゲラの直前といったところでしょうか。10月中は厳しそうですが、11月20日までには完成しているはずです。というわけで、11月20日に「東京ライフハック研究会」が開催されますので、よろしければどうぞ。
» 東京ライフハック研究会vol.16 – いろいろなタスク管理 – 2016年11月20日 – こくちーずプロ(告知’sプロ)
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由
11月05日(土) ベストな一日を作るための記録の取り方・活かし方
『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』(佐々木正悟・著)の内容をベースに、タスクシュート時間術、すなわち仕事を予定どおりに終わらせるための時間管理の考え方とツールを駆使した具体的な方法をお伝えします。
今回のテーマは、
-ベストな一日を作るための記録の取り方・活かし方
です。
タスクシュート時間術の根幹は、ログ(記録)とレビュー(ふり返り)です。
ログを残すことで、その後のレビューを通して未来の自分に役立てることができます。
では、どんなログをどれぐらいの詳しさで残せばいいのか?
レビューを行うときは何に気をつければいいのか。
時間は限られていますので、すべてを詳細にログに残すことはできません。
レビューにおいても、ログを隅々まで読み返していては時間がいくらあっても足りません。
未来の自分に役立てるためのレビューの方法をご紹介したうえで、そのようなレビューを行うためのログの取り方を解説します。
「記録がどうしても続かない・途切れてしまう」「残した記録をどのように活かせばいいのか分からない」といったお悩みをお持ちの方はぜひご参加ください。
好評いただいている個別相談の時間もご用意していますので、知識としては理解できているとは思うものの、なかなか実践に結びつけられず苦戦している、という方は、ぜひこの機会にブースターとしてご活用ください。
本日時点で、残り6席ですので、ご検討中の方はお早めに。
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