• 蒼乱

【蒼乱】ギアンサル・カデンツァ

マスター:葉槻

このシナリオは2日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/10/06 12:00
完成日
2016/10/17 22:56

オープニング


 コボルド達の本拠地、地中深くの聖堂。
 浄化術を終えた術者達が半透明な神霊樹へと聖句を紡ぐ。
 暫くその聖句を聞いていた一体のパルムは、人の胸の高さ程まで浮遊するとその幹に触れた。
 その瞬間、パルムが触れた所からマテリアルの光が枝葉の先、地中に至るまで葉脈のように走り、一瞬にして誰もが知る青々とした葉を茂らせた神霊樹へと変わった。
「恐らくパルムを失うような何かがあって、神霊樹自身が眠っていたのでしょう。これでこの大陸の古い記憶を西方諸国の研究所でも調べられるようになったはずです」
 基本的に大精霊である神霊樹が枯れるということはない、と言われている。
 そのため、負のマテリアルに汚染されたり、歪虚に自身の持つマテリアルを狙われた場合などは非活性化状態になるのだという。
「それにしても、面白いですね。太古の昔に人が描いた壁画ですか」
 術者はぐるりと周囲を見回して頷いた。
「悲願達成までもう少しですね」
「そう、ですね」
 イズンは曖昧な笑みを浮かべてぎこちなく頷いた。

「あなた達人間を最大支援するよう、他の部族のコボルド王達へ通達を出した。尤も『救世主』であるあなた達への協力を惜しむコボルドがいるとも思えないがな」
 神霊樹が活性化して1番驚いたのは、ワ王亡き後青の一族の王となったケンのこの口調の変化だった。
 どうやら今まではこの地の神霊樹が眠っていた為に“この地方の言葉”が上手く変換されなかった事によってカタコトに聞こえていたらしい。
 逆に言えば、ケンからしても『何と聞き取りにくい言葉をしゃべるのかと思った』との事なのでいかに神霊樹の持つ通訳機能が重要かを痛感したイズンである。
 だが、やはり言葉を操れるのはコボルドの中でも一部の者だけであるという点に変わりは無かった。これは神霊樹やコボルドの持つ知性的な問題だけで無く、物理的な声帯的な問題もあるようだ、とはソサエティからの返答だった。
 一方で言語でのやり取りがスムーズになった事でこの地に住むコボルド達は西方文化圏にいるコボルド達より遥に知能が高く、文化的な生活をしていることも判った。
 いや、薄々察してはいたのだが、識者によると、太古の人々が残した道具や住居を使い、歪虚以外の外敵がいない中で群れ単位での生活をしているうちに彼らなりの文化が発達したのだろうとの事だった。

「竜の巣への入り方、か……。もしかするとここより南の遺跡から通じている道があるのかもしれぬが、そちらは竜が多く我々も殆ど出入りしていないのだ」
 竜達には不可侵領域のような物があり、コボルド達はそこを越えないよう生活してきたらしい。
 青の一族はコボルドの中でも最南端の位置に本拠地を置く群れであり、その分竜達との付き合い方も他の一族と比べても上手い方だったという。
 時折、双子竜のような高位の竜が戯れに無理難題を吹っ掛けて来ては虐殺行為に走ることがあったが、それでも一族郎党皆殺し等と言う事も無かった。
 ケンは長く息を吐いた。
 今回、ハンター達の活躍の結果、被害は一族の長であったワ王と、数日前に行方不明となっていた若いコボルドが一体。他のコボルド達はワ王の機転により己の側近さえも全て避難させていたと聞き、文字通り王は己の命と引き替えに一族を守ったのだと知った。
「ただ言えるのは、空を飛ぶ竜達はよく火口の辺りにいる。彼らが出入りする場所があの辺りにあるのではないだろうか」
「……なるほど。行ってみる価値はありそうですね」
「遺跡から通じる道が無いかはこちらからも探してみよう。我が父と同胞を殺したこと、必ず後悔させてやる」
 犬歯を剥き出しにしてケンが低く唸る。
「助かります。が、無理はなさいませんよう」
「それは救世主様にも言えよう。武運を」




 標高が高くなっても全く涼しくならないという特殊な環境に理不尽さを感じながら、イズンは黒い岩肌が剥き出しとなった山の火口へと遂に辿り着いた。
 火口の縁に立つと、そこからは見える風景に誰もが息を呑む。
 何キロにも渡る巨大な漆黒のカルデラ。その中央は底が見えないほど深いが、そこから強欲の飛竜が飛び出してくるのを見て、そこが竜の巣の入口の一つであることを確認する。
 他にも歩行タイプの大型竜が西側の洞穴から現れたのを見て、イズンはそこが竜の巣の奥へと繋がっていることを確信した。
「行きます」
 イズンの号令で一同は大型竜を殲滅した後、洞穴の中へと突入した。

 そこは緩やかな下り坂の続く広く暗い洞窟だった。
 イズンは手持ちのLEDライトを掲げ、慎重に降りていく。
 そして、ついに高い天井にただただ広く明るい空間に出た。

「「待っていたよ、ニンゲン」」

 その中央に伏せていたのは全長6m以上はあろうかという白い竜だった。

「「きっとお前達は来ると思っていたんだ。何しろ、強欲だからね」」

 複数の重たい足音が響く。
 イズンは自分達が待ち伏せられていた事に気付いた。

「「さぁ、遊ぼう?」」

 嬉しそうに楽しそうに白竜は告げると、鎌首をもたげたのだった。






 時は遡る。

『だから言っただろ』
 岩に腰掛け、頬杖を付いたマクスウェルが魂の片割れを抱きながら泣く幼い竜に向かって冷淡に言い放つ。
『お前らは歪虚としての誇りが足りねぇ。この世界を滅ぼすとか言いながら未だに“犬”すら滅ぼせてないところが、その証拠だ』
 泣き止まぬ様子に聞こえよがしに溜息を吐いて立ち上がると、抜き身の剣先で幼子の顎を無理矢理上げさせた。
『元に戻ればいいだろう。お前ら元は一体だったんだろう?』
 『マシュとマロはその力が器に対して大きすぎた為、産まれるときに二つに分けられた双子』それをマクスウェルに教えたのはまた別の竜だったが、それを知って面白いとこの双子竜に声を掛けた所、何故か“パパ”と懐かれた。
 辟易しながらも遊んで欲しいならまずはコボルドを滅ぼしてこいと言った所、今、丁度遊んでいる所だと言うのでちょっと入れ知恵をしてやった……結果がこの様である。
『ゲートの守護竜とやらが情けない。良いのか、このままだとニンゲンはここにも来るぞ。アイツらはお前らよりよっぽど『強欲』だからな。この世界の全てを蹂躙し尽くすぞ。そして、お前らの王も……』
「……いでち」
『あ?』
「許さないでち。犬っころより先に滅ぼしてやるでち……!」
「……マシュ」
 伸ばされた手を握って、マシュはこわばった表情でマロを見た。
 それから硬く両目を閉じて見開くと、力強く頷き大きく口を開いた。

 肉を食み、骨を噛み砕く音が響く。

『ククク……良いナリになったじゃないか。それでいい。さぁ、戦え! ニンゲン共を殺し尽くせ!』
 マクスウェルの辯舌が竜の巣に響く。
 引きちぎれた黄色とピンクのリボンを踏み躙りながら、堪えきれない哄笑を続ける彼の前には、怒りに満ちた瞳で睥睨する本来の姿を取り戻したゲートの守護竜がいた。


プレイング

キヅカ・リク(ka0038
人間(蒼)|18才|男性|機導師
○設定
機体の仕様は重装甲型
オファインは調整にだしていて留守

○心境
エアさんに手伝ってくれっていわれて人魚島からこっち来たけど…
え、え、何?
なんであんなに殺意丸出しなの?
恨みでも買ったの?死ぬの?

「エアさん…なにしたの…?」

あ゛あ゛も゛ー、面゛倒゛く゛せ゛ー!!


○戦闘
・撤退条件
重体3名発生
聖導師スキル枯渇時、倒せる目処がたたない

・委託事項
イズン隊→リザードマン精鋭対応、入り口確保

・全体工程
方針→崖下に落ちろ!
正面、右、左の3方向から白竜に接近
半包囲を維持、頃合いをみて囮が崖側へ誘導
合図と共に全員で崖から突き落とす
だめな場合は半包囲のまま撃破を目指す

・個人行動
左から接近、エアと随伴し常に彼の壁として白竜との間に立つことを優先
竜巻時は盾で壁を作りゲアラハの前へ
被害を抑える
その他攻撃も装甲と盾を頼りに極力自機で妨害
尻尾のなぎ払いなどの予兆動作は注意し見つければ仲間に通達、回避を促す

攻撃時は眼球を潰して死角を作る、スキル使用時に使う体の部位があればそれを狙い
後を引きずる傷を作る
防御壁を白竜が使用した場合は積極的に破壊を狙い味方への影響を抑える

エアが囮として動き出したら残り1回になるまでスラスターを使用し随伴
崖付近で味方が来るまでエアを守りながら時間を稼ぎ
全員揃ったところでトランシーバーで合図をだし、白竜突き落としへ
エアが落ちそうな場合、魔導鈎でカバー
巻き込まれないよう白竜の横に逃げ
最後のスラスター使用
高く舞い上がり下へ噴射
勢いと装甲の無駄な重さと魂の火力を載せて蹴りを叩き込み白竜を落としたい
「チィェストォオオ!!」
(シャウトでオナシャス)

尚、作戦がうまくいかず撤退の場合は殿として前へ
味方をとにかく出口に逃がしつつ自身で足止め
機体がだめな場合は降りて生身で抗戦
攻性で距離を作りつつ時間稼ぎ

マクスウェルは会話等で時間を稼ぎたい
ここの竜が凶暴になったのはおまえの仕業か
何が目的だ、という感じで
岩井崎 旭(ka0234
人間(蒼)|18才|男性|霊闘士
【心情】
強欲、か。テメーらドラッケンには毎回言われるな。
だから毎回返してやる。
俺たちは未来に向けて歩く者。今日よりも少しだけいい明日へと手を伸ばす者。

さぁ、来いよ白いの!
遊ぼうぜ。

【目的】
脱出、生還。
今のままでは逃げ切れそうもないので、白竜をどうにかする。
(崖から突き落とす。出来なければ、手傷を負わせて退却する)

【準備】
トランシーバの動作チェックは事前に済ませておく。
また、周りに合わせて砂塵の防御。自分とウォルドーフの口元をバンダナで覆っておく。
ウォルドーフには、牙を使う時には千切ってもいいと言い聞かせる。

【行動】
ウォルドーフと協力して左に回り込みながら接近して攻撃。
崖から落とすためにも、バランスを保つ部位である尻尾や足を重点的に狙う。
右や正面のチームに気を取られている間は<乱気流>で攻めを重点。
デカい相手なので、ウォルドーフと自分の体重、速さをハルバードの斧刃に込め、全力で。
左チーム狙いの場合<爆突風>の衝撃力で尻尾や手足を逸らす。

最終的な狙いである、崖からの突き落としの際は<現界せしもの>を発動。
サイズ差を埋めつつ、押し込むCAMに合わせて<爆突風>で体勢を崩す。

ウォルドーフが危ないときは、退却の足のためにも退路の方へ下がらせる。
重体が出た場合にも、ウォルドーフに乗せ、同様に下がらせる。
その際、ポーションを持たせていく。

【マクスウェルが来たら】
この白竜、エジュダハやその仲間たち(神宮寺MS:ドラグーン・ブルース)。
焚き付けたのはテメェか。
誇りを踏みにじったのは、テメェか!
時間稼ぎと、ぶん殴りたい素直な気持ちに従って、攻撃に出る。
コイツ用に(というか想定外用に)残しておいた<現界せしもの>の二回目や、他に残っているスキルがあれば使用。

<現界せしもの>が切れるタイミングでウォルドーフに乗って逃げる。
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
エルフ|15才|女性|闘狩人
『強欲』…か。そうね、確かにそれに関して否定はしない。
それでも…大切な人達と共に生きる為に、憎悪と悲しみの連鎖を終らせると決めたんだ。
だから…その憎悪を、殺意を全てぶつけてこいっ、私がその総てをこの刃を以て終わらせる…っ。
そして教えてやる。お前の王は…決してヒトに対して憎悪を抱いてたのではないと


◆目的
白竜の撃破

◆行動
・包囲まで
オリーヴェに騎乗し、三方位に展開された陣形の中央で行動。仲間との連携を意識。
基本的な立ち回りとしては、自身は攻撃に専念し回避はオリーヴェに任せる。
囮役が注意を惹きつけている間に懐へ潜り込む様に肉薄。敵の竜巻に対しては仲間の合図や前兆となる動作等があれば、耳を塞いで身を低くする等して耐える体勢を。
攻撃時は仲間の攻撃と少しだけずらして仕掛け、足や仲間達が攻撃し負わせた傷を重点的に狙い、傷を深くする等して本命の攻撃への布石を打つ。

・本命の攻撃から崖落とし
包囲を狭める事が出来たら、崖方向へ追い詰め落とす為に本格的な攻勢へ。
相手の防御手段諸共打ち破る勢いで、全ての技と確固たる意思を注ぎ込んだ渾身の一撃を叩き込む。その際、可能であるなら頭を下げた瞬間に顔を目掛けて。不可能なら今までの攻撃で深く負った傷目掛けて。

・渾身の一撃時
憎悪と悲しみの連鎖を断ち切り、大切な者達と共に歩む未来を切り開くという自身の願い、そして…この一撃を絶対に通すという確固とした意志を己が心に宿し、マテリアルとかつて青龍から聞いた強欲王…かつての赤龍の想いを言葉と共に刃に込めて放つ。
「お前の殺意も憎悪も分からなくなはい…。だけど、お前の王は…本当にヒトに対して憎悪を抱いていたか?その為に世界を滅ぼすモノとなったのかっ?忘れたのなら教えてやる…っ、お前の王は…この世界を救いたかっただけだっ、ヒトや世界に対して憎悪を抱いてないっ。本当に自分達の行いが王が望んだ事か思い出せ…っ」

スキル適宜使用
ロニ・カルディス(ka0551
ドワーフ|20才|男性|聖導士
随分とご立腹のようだが……
こちらも易々と討たれる訳にはいかないな

■行動
基本方針としては、白竜の撃退を念頭に置いて対峙する。
俺達が白竜と、イズンとモブ覚醒者達がリザードマンの対応を主に実施。
白竜に対しては正面と左右の3班に分かれて対峙し、半包囲状態から攻撃を集中させる。
この時、白竜の背後に向けて囮を出し、注意がそちらに向いたらノックバック攻撃で
後方へと強制移動させ、崖へと落とせないか試してみる。
リザードマンに対しては、魔術師系の個体を優先して狙いつつ、
退路の確保ができるように駆逐していく。
また、こちらの回復スキルが尽きる、あるいは3人重体者がでたら撤退へと目的を切換える。

俺個人の行動としては、正面班で主に回復役として立ち回る。
味方と密集しすぎず、かつヒールの射程に収まる程度の距離を維持。
初手はレクイエムを使用して白竜に行動阻害を付与。
以降効果が切れるたびにかけ直す。
その後は味方の回復に専念。
遠距離の味方にはヒールを使い、近距離の味方は可能なら集まってもらい、
ヒーリングスフィアで纏めて回復する。
回復スキルが尽き場合、自分の回復にはヒーリングポーションを使用。
ブレス対策として、手持ちのハンカチなどの布で、鼻や口もとを覆っておく。
撤退に切り替える場合は、妨害するリザードマンの排除を優先しつつ殿を務める。

回復スキル使用時
「回復はするが、あまり長く持たないと思ってくれ。」
ミグ・ロマイヤー(ka0665
ドワーフ|13才|女性|機導師
「龍と言えども歪虚に踊らされているようでは獣と同じじゃな。」
正直事情がよくわからない身で人数合わせの助っ人として今回の突入戦に参加したミグにしてみれば
この展開は災難でしかない。かつての大規模戦にて轡を並べて闘ったブルードラゴンと比しても情けなや
としか思えない状態には同情を禁じ得ない。
されど戦は戦。待伏せからの襲撃とあれば是非もなし。一矢も報いず撤退などあり得ん。むしろ根絶やしにしてやるくらいの覚悟で戦闘に臨む。

仲間とは連携。

戦闘時においてはトランシーバーを「連結通話」にて接続。味方同士の相互連絡の基地局として機能する。CAM同志を主に連携を取って各員が孤立しないように注意。

基本位置は戦場後方でモブ部隊の支援と退路確保。又愛機の魔導ドミニオンのカーゴスペースを生かして負傷者の回収役も担う。

主敵はリザードマン達。モブのハンター部隊を支援して、トカゲどもをスラスターライフルでひき肉に変えていく。
モブハンターたちにはミグの撃ち漏らしの掃討を依頼。連携して増えた端から刈り取っていく。中距離は射撃で対応。近距離はアックス若しくはドミニオンそのものを利用して蹴り殺すなどして無駄な動作を排除していく。
難易度が高すぎるようなら「人機一体」もしくは「機動の徒」を使ってCAMと一体化したかのごとく行動。使用順番は、「機導の徒」から使い切って「人機一体」は後半の難しい状況の時に優先的に使用。

負傷者の回収についてはミグ自身がCAMを降りての収容手伝いは無理なのでモブ各員でドミニオのカーゴルームに搬送してもらう。そのため、ミグ自身は入り口付近からCAMを動かさない。半ば砲台のようなポジショニングで活動。

強欲竜らが全滅していれば白龍の突き落としに協力。突進した勢いで相手をのけぞらせたところで人機一体で足払いしてバランスをくずさせて支援。

撤退になれば、殿として最後の一人が洞窟を出るまで出入り口を死守。
エアルドフリス(ka1856
人間(紅)|27才|男性|魔術師
まさかこの竜、あのお嬢さん方か?マシュか、マロか…いや、両方か
「参ったな。可愛らしかったのに、随分な姿になっちまったもんだ」
こりゃあ…責任を取らにゃならんだろうかねぇ

■行動
恨みを買った自覚は充分にある
狙われるのが避け得んのならせめて有効に活かそう

前回遭遇時の情報仲間に共有
マスカレードとバンダナで口鼻覆いゲアラハの面の位置も調整し砂塵対策

逃しちゃくれんようだから此処で撃破する心積もり
白竜を半包囲で押し込み崖へ突き落とす方針で
作戦齟齬は調整、基本リクに従う

俺は左翼担当
前衛優先でウィンドガストかけ竜巻相殺企図
防壁対策に仲間と別方向から波状攻撃仕掛け氷蛇咬で行動阻害
「先日はこいつがよく効いたんだったねぇ」
ゲアラハの一撃離脱近接攻撃も交ぜ
味方と攻撃集中し可能なら顔面狙い

竜巻の前兆察知に努め発動時ゲアラハの耳塞ぎ
怒りは極力距離を取る

漸次交戦位置ずらし崖側へ誘導
徐々に言葉で煽りを加え冷静さを奪いたい
「随分必死だな、遊びなんじゃあ無かったのかね?」
「ははっ、嫌われたもんだ。それとも気に入られてるのかな」

崖まで5~3sq程度になったらリクと共に抜け出し崖側へ回り込む
我々は囮だが完全包囲狙いに見えるように振る舞い
「所詮コボルド相手に悦に入る程度の器か。強欲を名乗るにゃあ不足だな、お嬢さん?」
「笑止。甘言と物に釣られた己の浅はかさを呪い給え」
皆の攻撃機会を作りつつ崖際へ引き込み仲間のスキルによる弾き出しへ繋げ
巻き込まれんようゲアラハの敏捷性と跳躍力頼みに出口側へ脱出

交戦中は常に狙われる事前提で
ゲアラハの回避頼り土壁と盾で致命傷避け
たとえ戦闘不能でもゲアラハに帰還厳命
俺はまだ死ぬ訳にゃあいかん、待ってくれてる人が居るんだ

マクスウェル介入時は会話に持ち込み交戦は避ける


「我々は弱い。故に知恵を絞るし数を恃む。力に溺れた者に非難される筋合いは無いな」
…懐柔の目が全く無かったかと問われりゃ俺には判らんよ
リュー・グランフェスト(ka2419
人間(紅)|18才|男性|闘狩人
「気が合うな。強欲だってのは同意するぜ」
何もかもを守りたいと、あらゆる理不尽に抗いたいっていう【強欲】
その心の赴くままに、戦っているのだからな!

【行動】
「ちっ!はめられたかよ」
白竜を睨み付け、撤退指示があるまではわき目も振らずに全力で戦う

3方に分かれ半包囲して戦闘
金目、セレスティアと共に右側から攻める班
紅狼刃でとにかく班からあまり離れない様に、二人を中心に不規則な円を描く様に動き回り狙いを拡散
竜巻に対しては紅狼刃にできるだけ身を低くさせて耐える
防御壁は攻撃して壊し、その際に強度と厚みを頭にいれる
防御壁を破壊し仲間の攻撃を通す
自分の近くに建てたなら、『竜貫』で貫通させて白竜を狙う
「覚えておけ!紋章の刃は竜をも貫くと!」

双子だと分かったら
「はっ!あん時のガキどもかよ!」
正体が分かったら毒づくと同時に、こいつらの言ってた言葉が頭を過ぎる
(パパとか言ってやがったよな・・・こいつらに悪意を吹き込んだ親玉がいる・・・?)
こいつらよりでかい竜とかか?冗談じゃねえぞと思いながら警戒
撃退できたら油断せず速やかに撤収を提案

今は白竜に集中だ
決して軽んじていい相手じゃない
「ふざけんな!倒される覚悟も無しに暴力を奮う餓鬼が一端に語ってるんじゃねえよ!不愉快だっ」
ただ楽しむ為に命を弄ぶ事を、どんな理由があってもゆるさねえ!

竜の足元注意し、脆そうな場所に辺りをつけてノックバックさせる方向を声と指差しで指示

一斉攻撃の際には紅狼刃の速度を生かし崖に落ちない様に気をつけながら近づき、尾を狙える位置に
足もそうだが竜のような大型爬虫類を支えているのは尾だ
仲間達がノックバックを仕掛けようとする中、それを生かす為にバランスを崩す事を念頭に尾をぶった切りにいく
「いっけええええええええ!!」
『心の刃』で一意専心に力を刃に託し紅の輝きを纏った刃による『薙ぎ払い』で尾の切断を試みてバランスを崩す

撤退時には、仲間を守りつつ後退
セレスティア(ka2691
人間(紅)|19才|女性|聖導士
皆でこの窮地を脱しましょう。

◯行動
イェジドに乗って戦闘。
リュー君達と共に右側に回って戦闘します。
治療役に徹し、2人の同班2人の中心に位置する様にしてすぐにサポートに入れる様にします。
自分含めて負傷者が2人以上でていれば『ヒーリングスフィア』、
個人なら『ヒール』を使用。
治療役として立ち回る為、騎士というあり方としては不本意ではありますが銃と盾を駆使し、ダメージを避ける為、前には出ない様にして戦闘。
孤立しない様に常に仲間についていき、攻撃の邪魔をしない様に一歩離れ、着かず離れずをキープ。

自班に限らず怪我をした人には治療していきます。
スキルが尽きたら即座に仲間に周知し、撤退の判断材料にして貰います。

竜巻はイェジドと共に身を低く。
白竜の怒りに対しては『ヒーリングスフィア』を立て続けに使用。

リザードマンが白竜攻撃の邪魔になるなら、イェジドと共に接近し排除。
銃撃をしながら牽制して、イェジドの『マウントロック』『クラッシュバイト』で攻撃。
「こちらは任せて。白竜に攻撃を」
暗いならライトで照らすなどしてサポート。

一斉攻撃時には目を狙って銃撃。
たいした痛みにはならなかったとしても、目への攻撃は無視出来ないはず。
少しでも一斉攻撃から気をそらすことができれば・・・
気心のしれた幼馴染であるリュー君が攻撃する際にはそれをサポートするように銃撃をしかけて連携します。

○白竜
「私達が強欲というなら、そう言えばいい」
どう思われようとも私は戦うだけ。
未熟な私には、それしかできないから。
それでも、傷つけられ殺されようとする人を見過ごすコトなんてできない。
ただ殺そうとする相手を許す事はできない。
「奪われるのが嫌なら、奪うのを止めなさい!貴方達がされたくない事は、皆。嫌なの。
そんな事もわからないの!」

この子達は…叱られたことがなかったんじゃないのかしら…
もし、なんて考えるのはそれこそ傲慢かもしれないけれど…
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409
人間(蒼)|24才|男性|機導師
久しぶりだなマシュ、マロ。それが本当の姿か?
あっちの姿も可愛いかったけど、これは綺麗って感じだな。
……いつかこんな日が来るとは思ってた。でも、まだ先だと思っていたぜ。
もう少しお前達と話しをしたかったんだけどな。

馬鹿だな、遊びなんだからお前達にはね返ってくる事だってあるさ。
痛いのが嫌なら、痛くない遊びをすれば良かったんだ。
退屈で寂しいのなら、オアシスに来れば幾らでも相手をしてやったのに……。

……お前達にも俺達にも使命がある。
互いに譲れないものがあるなら、後は力で決めるだけだ。

最後に、これだけは言わせてくれ。お前達のした事は許されない事だし、
お前達もお前達なりの理由で俺達の事が嫌いだろうが……俺はマシュとマロの事、結構好きだよ。
もう意味のない事かもしれないが、友達になれなくて残念だ。さあ、戦ろうか。
悪いが俺は遊びじゃないぞ。遊びで誰かを傷つける程格好悪くはないんでな

■行動
白竜に挑む。半包囲陣形。正面所属。重体3名発生で撤退。
砂塵対策に目はゴーグル、鼻口は布で覆っておく。

ヴェルガンドを操り真っ向勝負。デルタレイを撃ちながら剣で斬撃。
ヴェルガンドの質量と合わせてで崖まで押し込む。
竜の攻撃は盾で防ぎつつ、一撃の重さによっては攻性防壁発動。
吹き飛ばしは行わず、行動阻害だけを与える。最後に使うので2発は残す。
戦闘中は真剣に戦いながらも折角スピーカーがあるので色々話しかけてる。
集中を乱すというより、これが最後なら出来るだけ多く言葉を交わしたい。半分くらい雑談。

崖近くまで追い込んだら囮の2人が引きつけるので黙る。
合図と同時に攻性防壁の吹き飛ばしを発動して崖へ突き落す。

失敗したら撤退条件満たすまで抗戦。

■おまけ(白竜が崖から落ちなかったら)
(倒した):オルゴールを葬送曲代わりに鳴らして消えるまで傍にいる。攻撃されるかもは覚悟の上
(倒せなかった):以前言われた捨て台詞を返しながら飄々と逃げる
金目(ka6190
人間(紅)|23才|男性|機導師
…苦手なんですけどね、戦闘。
明らかに怒っているお嬢様を前に、早々に立ち去りたいところだけれど
そうも行かないらしい。

皆の顔を見、腹を括る。
他の誰かにこの場を任せるようなら、僕は未だ工房に居る。


○事前
鎧・外套にて砂塵対策
通信機の使用可否確認
イズンさん等の構成把握

○戦闘
前回、僕たちは奇襲という手を使い
お嬢様は、それを覚えて、お怒りだ
お嬢様だけに注意を向けぬよう通信で警戒呼びかけ

竜巻を警戒し3方に分かれる
僕は右翼

障壁出ても構わず超重練成、僕の斧では重さが足りない、か?
リューさんの攻撃を竜に届かせるべく動く

攻性防壁は行動阻害の効果与えられる距離にて使用
後退効果は「その時」まで封印

距離を詰め攻撃
下がって回復
声掛け合い皆と良く連携

エアルドさんが動きに合わせ、崖との距離、皆の配置を頭におきつつ竜と距離開かぬよう追い位置取り
…イェジド、いいなぁ。早くてもふい。貯金をしよう。
グリムバルドさんとタイミング合わせ、背後からの攻撃と見せ
同時に範囲攻撃受け、攻性防壁にて崖に向け、押す

撤退の判断が出たらイズン隊に合流
負傷者が居れば、動けるものと協力し
ミグさんのドミニオンへ収容補助

歪虚は歪虚。
マテリアルを喰い、何も残さぬ者。
共に在る事ができないのなら、情が湧かないうちに。
正直、あの姿でなくなってほっとした。
あの可愛らしい名を与えた誰かの気持も考えずに済む。

何かを欲することは、何かを諦めること。
僕は、強欲ではない。

リプレイ本文


 生まれたときからセカイはこの有様だった

 生まれたときからトクベツで
         トクベツだからここに縛られた


 最初の100年ぐらいはここを守るということを叩き込まれた

 次の100年ぐらいは多くの仲間達と同じように眠って過ごした

 次の100年くらいはエジュダハ達の目を盗んで外に出ることを覚えた

 その後の100年くらいで犬っころで遊ぶことを覚えた


 ここに縛られた身体は、餓えていた

 このタイクツから逃れる方法をずっと探していた




「「さぁ、遊ぼう?」」
「ちっ! はめられたかよ」
 そう言って鎌首をもたげた巨大な白竜を睨み付け、リュー・グランフェスト(ka2419)がイェジドの紅狼刃と共に身構える。
(あぁ、あの双子が成長したらこんな感じになるのかな)
 グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)はその白い鱗を見て何故かあの双子竜を連想した。
 そして、ふと足元に目を向けるとちぎれた2本のリボンが見えた。桃色と黄色のそれはグリムバルドがあの双子竜に贈った物、だったはずだ。
『マシュ、マロ……なの、か?』
 ヴェルガンド越しに名を呟いた。
 そして、呼ばれた当の白竜は少し困ったように首を傾げた。
「「……どうしてばれたのかな? 折角、威厳たっぷりにしてみたのに」」
「え……?」
 その言葉を聞いてセレスティア(ka2691)が両手で口元を覆い、金目(ka6190)の、覚醒してその名の通りの金色の瞳が大きく見開かれて、二度瞬いた。
「はっ! あん時のガキどもかよ!」
 リューが毒づくと同時に、以前マシュが言った言葉が脳裏を過ぎる。
(パパとか言ってやがったよな……こいつらに悪意を吹き込んだ親玉がいる……?)
 更に大きな竜が出てくる可能性に至り、リューは慎重に周囲を見回す。
「参ったな。可愛らしかったのに、随分な姿になっちまったもんだ」
 エアルドフリス(ka1856)が咥えていたパイプから火を落として嘆く。
「マシュか、マロか……」
 エアルドフリスもまた落ちているリボンに気付き、声が反響の為に二重に聞こえている訳では無いことに気付く。
「両方か」
「「凄いね。そうだよ。マシュとマロはひとつになると大きくなれるんだよ。“時が来るまで大きくなっちゃいけない”って言われてたけど、ニンゲンを滅ぼす事にしたから、おっきくなったんだ」」
 凄いでしょ、と言わんばかりの得意げな物言い。姿と声そして口調までも違うのに、あの双子が無い胸を張りながら言っている姿が目に浮かんで、グリムバルドは強く目を瞑ると静かに首を振った。
「「本当に、良く来てくれたね。お前はあたし達を騙してマロに酷いことしたから、絶対許さないよ」」
 強い怒りの視線を一身に受け、まさか、人間の女性よりも先に竜のお嬢さん(?)にこんなにも恨みをぶつけられることになるとは……と、エアルドフリスは頭を掻いた。
「はは。こりゃあ……責任を取らにゃならんだろうかねぇ」
『……久しぶりだなマシュ、マロ。なるほど。それが本当の姿か? あっちの姿も可愛いかったけど、これは綺麗って感じだな』
 ヴェルガンド越しにグリムバルドが声を掛けると、白竜は首を傾げる。
「「お前、誰?」」
 そう言われて、グリムバルドは愕然としたが、現在はヴェルガンドに乗っている為、白竜にはヴェルガンドがしゃべっているように見えるのだろう。
 そこに気付いたグリムバルドは危険を承知でハッチを開放した。
「俺だよ!」
 コックピットから身を乗り出して顔を見せる。すると白竜も「「あぁ!」」と声を上げ、そしてトーンダウンした。
「「……せっかくくれた“オシャレ”。切れちゃった」」
 白竜の視線の先には2本のリボン。予想外の言葉に、思わずグリムバルドは言葉に詰まった。そして、続いた言葉に身体が硬直した。
「「お前はイイ奴だから、見逃してあげようかなって思ってたけど、一人は寂しいから、やっぱり一緒に殺してあげる」」
「マシュ……マロ……」
 衝撃に動けないグリムバルドの金色の双眸は、白竜の夜色の瞳の奥に静かに大きく燃える怒りの炎を見た。
 その直後、入口側で銃声と剣戟の音が響き、グリムバルドは全身を大きく震わせ我に返るとヴェルガンドのハッチを閉め、操縦桿を握り締めた。
「「ねぇ、なんで? あたしに会いに来たんじゃ無いの……? あたしと遊ぶために来たんじゃ無いのっ!?」」
 入口付近を見た白竜は、怒声と共に背後で凄まじい風の音が響いた。
 そこにはイズン・コスロヴァ(kz0144)と10人のハンター、そしてミグ・ロマイヤー(ka0665)が操縦するハリケーン・バウの姿がある。
「「……そう、いいよ。そんなにそいつらが好きならもっと呼んであげる!!」」
 空間が揺れるほどの咆吼。
「「今日はちゃんとニンゲンと遊ぶ準備をして待っていたんだ。ここなら誰にも怒られない。いっぱい遊べるよ! さぁ、遊ぼう、ニンゲン!!」」
「……いいぜ、さぁ、来いよ白いの! 遊ぼうぜ!」
 静かに状況と成り行きを観察していた岩井崎 旭(ka0234)が相棒であるイェジドのヴォルドーフと共に白竜の左側へと回り込む。
 イェジドのオリーヴェに乗ったユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)はロニ・カルディス(ka0551)、グリムバルドと共に白竜の正面へと走った。
 右側にはイェジドの紅狼刃とリュー、同じくイェジドと共にセレスティア、金目が走る。

 一方混乱しつつも状況を理解しようと努めていたキヅカ・リク(ka0038)は、震える手で操縦桿を握り締めて動けずにいた。
 人魚島から帰って来たところをエアルドフリスに手伝って欲しいと請われてこの灼熱の大地に引っ張り込まれ、どうやら竜の巣が見つかったらしいということで来てみれば、巨大な白竜が猛烈な殺意を剥き出しにして待ち構えているというこの事態である。
『エアさん……何したの……?』
 そして何より、この白竜に対し、どうやらエアルドフリスが何やら“やらかした”ようだ。
 怒りに震える声でエアルドフリスに問うと、エアルドフリスはインスレーターのモニターから顔を背けて頬を掻いていたりする。
 グリムバルドや白竜の言葉から察するに、どうやら可愛らしい? 2匹の? 竜? が、この白竜になった???
『エ・ア・さ・ん?』
 一文字一文字区切るように名を呼ぶと、エアルドフリスはゲアラハの上で後頭部を掻きながら、もう片方の手で“ゴメン”とジェスチャーする。
「詳しくは、終わってから、な?」
 そう言うと、旭の後を追って左側へと走っていく。

 あ゛あ゛も゛ー、面゛倒゛く゛せ゛ー!!

 キヅカは操縦桿が折れんばかりに握り締めると、エアルドフリスの後を追った。


 正直今回の突入戦にたまたま参加したミグにしてみても、この展開は災難でしかなかった。
 良くわからないが、あの白竜と因縁のある者がいて、良くわからないが、待ち伏せされて、この有様。
 白竜と対面しているその後ろからは続々とリザードマンがやってきたので、ユニットの無いまま参加した者のフォローにと入ってみれば、八つ当たり的に激しい突風のような攻撃を受けるし、奥からリザードマンが更に増援としてやってくる。
「さりとて戦は戦。待伏せからの襲撃とあれば是非もなし。一矢も報いず撤退などあり得ん。むしろ根絶やしにしてやるわ」
 ミグは長い前髪を掻き上げた後、外部スピーカーをオンにした。
『イズン殿、ミグが撃ち漏らしたモノの対処を頼むのじゃ! まずは着実に一体一体仕留めるのが肝心じゃ』
 作戦の責任者であるイズン・コスロヴァ(kz0144)にそう話しかければ、彼女は大きく頷き、直ぐ様ハンター達に指示を出しながら自身もまた弓を引き絞って傷付いた一体へと矢を放つ。
 ハンター達への細かい指示は任せて良さそうだ。そう判断したミグは続けて襲いかかってくるリザードマンへと照準を合わせた。
 慣れた操作、やり慣れた動き、いつも通りの結果として、リザードマンが蜂の巣となって転がる。その流れを当然の物としてミグはハリケーン・バウと連動している指先でトリガーを引いた――が、しかし銃弾が飛ばない。
「!?」
 よくよくモニターを見れば、ハリケーン・バウの右の手指関節部分に小さなエラーサインが見える。
 モニターを拡大してエラーを吐き出している部分を見れば、そこには小さな石礫が綺麗に入り込んでいる。
「先の嵐……いや、竜巻の時か……!」
 銃から手を離し、右手を振るが外れず。左の指で何度か弾いてやって、ようやく入り込んでいた礫はころりと外れて地面に落ちた。
 その間にもハンターとリザードマン達は激しい攻防を繰り広げている。
「くっ、なんとセコイ技じゃ……!!」
 地味な嫌がらせのよう、そうミグは思ったが、しかし搭載型ユニットにとって、モニターや関節部、動力部というのは人間と殆ど変わらない。
 生物では無い為、精神干渉系の魔法は一切効かないが、物理的な状態異常というのは影響を受ける。それを思い知り、ミグは軽く唇を噛んだ。
「ミグさんっ! イズンさんっ!!」
 セレスティアの悲鳴のような緊迫した声にミグが顔を上げ、再びあの竜巻に巻き込まれた。
 激しい揺れと共にコックピット内が暗くなりエラー音が響く。
「イタタ……今度はなんじゃ……!?」
 強かにヘッドレストへと後頭部をぶつけたミグはモニターを見て絶句する。
 カメラ部分に砂が付着した為、文字通りの“砂嵐”でモニター一面が埋まっていた。
「くぅ! 洗浄とワイパーは……」
 当然、ある程度の異物除去機能は搭載されている。それを機導師の意地と誇りで手動に切り替え、一刻一秒でも早く立ち直るように、また、同時に他にも先ほどのような小さな異物混入が無いかを確認する。
 その間にも無事だったスピーカーからはさらにリザードマンの増援が来た旨と、苦戦する仲間達の声が聞こえる。
「……っ! よし、行くぞ、ハリケーン・バウ!」
 モニターが回復すると同時にミグは銃口を仲間を襲おうとしていたリザードマンへと向け、今度こそ流れるように引き金を引くと、リザードマンの頭部を吹き飛ばした。




 お前達は門の守護竜としてふさわしい竜とならなければならない

 ――あり得ない。僕より若いこんな半端者が守護竜だなんて、僕は認めない!

 門の守護竜はここから出てはならない

 ――気易く話しかけるな。僕には僕の役割がある

 我らの偉大なる王は、今は遥か北の地に捕らわれておいでだが、時が来ればそこからお出になる
 その時まで力を蓄えてけ。それがお前達の務めだ

 ――君たちは守護竜なんだ! 軽率な行動は慎めと何度言ったら……!

 私はもう長くない。私の最後の我が儘を許しておくれ

 ――僕には仲間を守るという役割が、君たちには門を守るという役割が……

 王の下へと向かう。後は頼んだぞ、私の……




 竜巻の直後、キヅカのインスレーターによる銃撃は障壁によって阻まれた。
「強欲、か。テメーらドラッケンには毎回言われるな。だから毎回返してやる。俺たちは未来に向けて歩く者。今日よりも少しだけいい明日へと手を伸ばす者!」
 旭は赤い腕輪をひと撫ですると、背にしたエクスプロイトを抜き、ウォルドーフと共に尾を狙って斬り掛かった。
 また逆サイドからはリューも同じように尾を狙い紅狼刃と共にオートMURAMASAを振り下ろす。
 しかし、その尾を大きく左右に振ることで、旭とリューの攻撃のタイミングがずれ、効果的な一撃を与えきれない。
「「もーさぁ。お前達はそればっかりだね」」
 うっとうしそうに尾で地面を薙ぎ払う。
 土埃が立ち、その度に小さな揺れが足元から伝わってくるのを感じる中、ロニは魔導バイクを操縦しつつ、セラフィム・アッシュを構えて慎重に白竜の出方を待つ。
「「そればっかり。面白くない」」
 白竜の注意が完全に自分から逸れた瞬間を捕らえて、ロニは朗々とレクイエムを歌い始めた。
 白竜の周辺を神秘の力が満たし、その動きを縛る。
「「……何、これ? 面白い! 何これ、面白い!!」」
 だん、だん、とその場で足踏みをして己を縛る力に抗いながら、ロニを見る。
「「それ、何? 面白いね、知らない言葉だ。何? 何したの???」」
「……鎮魂歌だ。お前達歪虚やアンデッドなどの死んでいる存在の行動を阻害する」
 答えるまで執着されそうな勢いに圧されて、ロニが正直に答える。
「「ちん、こん、か? 変な名前! でも面白い、それ面白い、もう一回やって! ねぇやって!!」」
 予想外の反応に何と対応した物かと絶句するロニに、グリムバルドがモニター越しに苦笑しながら頷いた。
『歌ってやってくれ。多分、“歌”を聞くのが初めてなんだ』
 グリムバルドの言葉にロニは怪訝そうに眉を顰めるが、頷いて拘束力の無いただの鎮魂歌を歌う。
 ――ヒトは会話が上手でちね。
 初めて会った時、話しかけたハンター達との会話に双子は夢中になった。
 あのコボルド達の拠点での戦いの時も、プレゼントを渡して話しかけている間はずっとハンター達との会話に夢中だったと報告を見た。
(退屈で寂しいのなら、オアシスに来れば幾らでも相手をしてやったのに……)
 次、会うことがあったらと用意していたオルゴールが、鞄の中でカタリと音を立てる。
 グリムバルドは下唇を噛み、目の前の“白竜”を見据えた。
『でも、マシュ、マロ。俺達の相手を忘れて貰っちゃ困るぞ』
「「大丈夫、忘れたりしないよ! ちゃんと遊んで、殺してあげる!」」
 ヴェルガンドを操縦しながらでは自分の攻撃を放つことは出来ない。
 入口付近の剣戟にこれ以上白竜が気を向けないよう、グリムバルドはこちら側に気を引く為にも積極的に声を掛ける。
(いや、違う)
 自分が、白竜と話したいのだと、なるべく多くの言葉を交わしたいのだとグリムバルドはヴェルガンドを操る手を止めずに思う。
 恐らく、これが最後になる。そう、何かがグリムバルドに告げていた。

「『強欲』…か。そうね、確かにそれに関して否定はしない」
 ユーリがオリーヴェと共にオートMURAMASAを手に構えてから全身を鞭のようにしならせ、マテリアルの青白い雷を纏った一撃を白竜の胸元へと叩き込んだ。
 それでも、大切な人達と共に生きる為に、憎悪と悲しみの連鎖を終らせると決めたユーリの剣筋に迷いは無い。
「だから……その憎悪を、殺意を全てぶつけてこいっ、私がその総てをこの刃を以て終わらせる……っ。そして教えてやる。お前の王は……決してヒトに対して憎悪を抱いてたのではないと」
 ユーリの言葉に白竜はズンズンとユーリへと近付いた。
 慌ててエアルドフリスがゲアラハに命じて轟風刀で、キヅカのインスレーターがアサルトライフルで足元を狙うが、それを物ともせず進む。
「「お前、王にあったことがあるの? そうなの? いいなぁっ! いいなぁっ!!」」
 ユーリに顔を寄せ、白竜が紡いだ言葉に誰もがぽかんと白竜を見上げた。
「「ねぇ、かっこよかった? 赤くておっきいって聞いたんだけど、どのくらいおっきいの? ねぇ、何か言ってた? お話したの?」」
「お前……メイルストロムに……赤龍王に会ったことが無いのか……?」
 旭の問いかけに、白竜は大きく頷いた。
「「一度会いに行ってみたいんだけど、ダメって言われちゃった。『お前は門の守護竜だから、勝手に出歩くな』だって。みんな会ったことあるの? ホントに?! いいなぁ、ずるいなぁ!」」
 白竜の巨大な右前足が、ユーリごとオリーヴェを薙ぎ倒した。
「っ!!」
 オリヴィアと共に地面へと倒れ込んだユーリの脳裏には、自分の無事を祈るマーゴット(ka5022) の姿が浮かぶ。ユーリは2、3頭を振ってすぐに立ち上がると、オリーヴェへと駆け寄りその無事を確認した。
「「もー! ちょこまか煩いっ!! そんな一斉に来なくてもちゃんと相手してあげるよ? もう本当にみんな欲張りさんだなぁ」」
 果敢に白竜へと向かうリューと旭をイェジドごと、白竜の尾が薙ぎ払う。
 セレスティアは傷だらけのイェジドに癒しの力を送りながら手綱を握り締めた。
「私達が強欲というなら、そう言えばいい」
 でも、と強い意志を持って、セレスティアは白竜を叱った。
「奪われるのが嫌なら、奪うのを止めなさい!」
「「ニンゲンこそ、マロを殺そうとしたくせに!」」
「あなた達はコボルドをたくさん殺したでしょう!? 貴方達がされたくない事は、皆。嫌なの。そんな事もわからないの!」
 セレスティアの叱咤に、白竜はその夜色の瞳を瞬かせる。
「「だって世界は滅ぼさなきゃいけないんだもん! でも、あんな犬っころでもいなくなったらもっと退屈になっちゃうから、だから、少しずつにしてただけだもん!」」
 退屈はイヤ、遊びたい、話したい、知りたい、見たい、聞きたい、もっと、もっと、もっと!!
 白竜から感じる強欲というにはあまりに幼い欲求にセレスティアはその海色の瞳を見開いた。
 この子達は、叱られたことがなかったんじゃないのか……そんな風に思っていたセレスティアはそうじゃ無いのだと直感した。
「あなた達の回りには……誰もいなかったの……?」
 呼べば湧いてくるリザードマンはいても、一緒に何かを考えて教えて学べるような、友と呼べるような、そんな竜が、いなかったのではないか。
 歪虚に“成長”という概念があるのかそもそもが疑問だが、北で見た龍達に比べて、あまりにもこの白竜は“幼い”。そんな印象がセレスティアの中で強く形作られていく。
「「おばちゃんも、何だか偉そうなおじちゃんも、エジュダハも、みんなみんなみんなあたしにここにいろって言う! 遊んでって言ってもダメって言う! みんな、いつか時が来るまではって言う! いつ? ねぇ、そのいつかっていつなのっ!?」」
 エジュダハの名に、旭が声を上げようと口を開くより一瞬早く白竜が吼える。
 周囲の負のマテリアル濃度が一気に上がり、肌が粟立つ。呼吸をするだけで臓腑を蝕まれるような痛みが旭を、ハンター達を襲った。
 思わず身をくの字に折ったエアルドフリスには呆れ顔でそれから不敵な笑みを浮かべるアウレール・V・ブラオラント(ka2531)の顔が、衝撃に胸を押さえたキヅカにはいつでもそばで見守ってくれているエイル・メヌエット(ka2807)の微笑みが、膝を付いた金目にはドロテア・フレーベ(ka4126)と交わした約束が、リューにはリラ(ka5679)の祈りの声がそれぞれを奮い立たせる。
 甚大な被害にセレスティアとロニが立て続けにヒーリングスフィアをそれぞれ前衛に立つ仲間へと施しに走る。
「「パパが教えてくれたんだ。それはもうすぐだよって。だからもう大きくなっていいんだって。ニンゲンは強欲だから、放っておくとあたしたちをみんな殺しちゃうから、だから先に殺そうねって!」」
「さっきから、パパ、パパって誰だよ!」
 リューが臓腑を食い破られるような痛みを抑え、苛立たしげに問う。
「「知らない。パパはパパでいいもん。強くて格好良いんだ。それに色々知ってて、教えてくれる」」

「……龍と言えども歪虚に踊らされているようでは獣と同じじゃな」
 リザードマンを屠りながらもミグは白竜の言葉に耳を傾けていた。その中で、ミグは一つ確信したことがあった。
 “パパ”は竜ではない。
 だからどうだという話しではあるが、あの竜に強くて格好いいと言わせる存在であるということは、更に上位の歪虚であろうということは想像に難くない。
「イヤな予感がするのぅ……」
 倒れたハンターの一人をハリケーン・バウの背後に庇い、ミグは状況の把握を続けながらも攻撃の手を休めること無くリザードマンを撃ち抜いた。

 金目は元々戦闘が苦手だった。
 明らかに怒っている白竜を前に、早々に立ち去りたいと、胃の奥から迫り上がる不快感を何度も無理矢理飲み込む。
 それでもその身に傷を負い、傷付く仲間を、傷付くイェジドを、白竜を、皆の顔を見、腹を括る。
 ――他の誰かにこの場を任せるようなら、僕は未だ工房に居る。
 金目は優雅な白鳥の両翼にも見える両刃斧を大きく振りかぶり巨大化させると、白竜の左後ろ脚へと樹木を倒すときの如く斜め上から振り下ろした。
 しかしその一撃は透明な壁に阻まれ、白竜には届かない。が、金目にはこの瞬間に一つの確信を得た。
「リューさん!」
「ふざけんな! 倒される覚悟も無しに暴力を奮う餓鬼が一端に語ってるんじゃねえよ! 不愉快だっ」
『行きたまえ我が弟子よ! その心の赴くままに、正しいと信じたことを為したまえ!』
 かつて久我・御言(ka4137)に言われた言葉そのままに。
 ただ楽しむ為に命を弄ぶ事を、どんな理由があっても許さないとリューは心を振動刀に乗せ、名の如く白竜の全身を横から貫通させるような一撃を見舞った。
 悲鳴のような咆吼を上げ、白竜がよろめいた。
「「……今のはちょっと痛かったよ。……ふぅん、じゃぁ、お前は倒される覚悟があるんだよねっ!?」」
 怒りの色を強めた白竜が左前脚で紅狼刃の顎を掴むと、リューごと地面へと叩き付けた。
 地面を転がる間、神城・錬(ka3822)のつっけんどんな表情と交わした約束がリューの脳裏を過ぎり、リューは負けられないと振動刀を支えに立ち上がった。
 その目の前には、顎を捕らえられたまま持ち上げられている紅狼刃の姿。
「紅狼刃っ!!」
「「お前にはあっても、この犬っころにはあるのかな?」」
 白竜の手から逃れようともがく紅狼刃の蹴爪など意にも介さない様子で、反対の手で紅狼刃の首元に手をかけた。びくん、と紅狼刃の全身が跳ねた。
「やめろぉおおおっっっ!!!!」
「ダメぇっ!!」
 リューがなりふり構わず白竜へと走りだし、セレスティアが悲鳴を上げて全身を硬直させた。
 その白竜の右前脚を、氷の蛇が喰らい捕らえた。
「先日はこいつがよく効いたんだったねぇ」
 エアルドフリスが左唇を持ち上げて睨め上げる。
 白竜はその視線を受け、紅狼刃をリューへと投げつけると上半身をエアルドフリスへと向けた。
「「うん、それ嫌い……でも、あたしもひとつ覚えたよ……!」」
 白竜の全身の筋肉が大きく緊張を孕んだのを見て、キヅカはインスレーターで盾を構えてエアルドフリスの前へと走り込む。
 それは360度の尾での薙ぎ払いだった。
 範囲内にいたリューは後方の壁まで飛ばされ、意識を失う。
 リューだけでは無い。ユーリ、金目、グリムバルド、旭、キヅカはもちろんのこと、狙ったエアルドフリスにもその尾の一撃は届こうとしていた。
 が、インスレーターが身を挺して盾となったことと、何故か白竜の前に月光を背負った無限 馨(ka0544) の姿がちらつき、狙いが狂ったお陰でエアルドフリスは致命傷を追わず、地面へと転がり落ちるだけで済んだ。
 白竜はそんなエアルドフリスを見て、キヅカを見た。
「……お前、硬いから嫌い」
 白竜のそんな言葉にキヅカは失笑しながら「そりゃどーも」と再度盾を構え直すとエアルドフリスを庇う様に立つ。
 ズンズンと地響きを立てて白竜は歩みを進め、低くうなり声を上げているゲアラハの前に立った。
 先ほどの紅狼刃への動きを思い出し、エアルドフリスは背筋が凍った。
「ゲアラハ! 逃げろ!!」
「「逃がさないよ」」
 エアルドフリスの声にゲアラハが動くより先に、白竜はゲアラハの尾を掴み放り投げた。
 地面へと叩き付けられたゲアラハは二度地面で跳ねて動かなくなった。
「「許さないよ。マロにしたことも、あたしたちを殺そうとしたことも。あのお話も、花も、全部全部嘘だったこと、絶対に許さない」」
「笑止。甘言と物に釣られた己の浅はかさを呪い給え」
 傷だらけになろうとも、ゲアラハが倒れようともエアルドフリスの挑発は止まらない。
「所詮コボルド相手に悦に入る程度の器か。強欲を名乗るにゃあ不足だな、お嬢さん?」
「「……そうだ、おばちゃんの臭いがしたのに、生きていたんだから、おかしいって思わなきゃいけなかったんだ。おばちゃんの代わりに殺してあげる。それで、ほめてもらおう。うん、そうしよう、それがいいね」」
 エアルドフリスはこの場を切り抜ける為に、生きて帰る為に、少しずつ少しずつ奥の崖へとキヅカと共に後ずさる。
 中央ではユーリが、右ではグリムバルドが、金目がそれぞれに攻撃を繰り出すが、その何れも白竜の気を引くほどの一撃にはならない。
「エアルドフリス!」
 ロニがヒールを飛ばし、セレスティアもイェジドの脚力を借りてエアルドフリスの傷を癒やしに駆けつける。
「このっ!」
 旭がウォルドーフと共に白竜の足元へ行くと、踊り狂う烈風の如き二連撃で後ろ脚の爪先を切り落とした。
「「しつこいなぁ! じゃぁ、お返しだよ!!」」
 旭を見た白竜は、恐ろしい程の重低音を唸らせながら裏拳でウォルドーフの横っ面を殴り飛ばした。
 それでも、主に似たのかウォルドーフは4本の脚を踏みしめ倒れずに、直ぐ様白竜の後ろ脚に噛みついた。
「「んもぅ! しつこい犬っころはこうしてやる!」」
「ウォルドーフ! 下がれ!!」
 旭が叫びながらウォルドーフから飛び降り、同時に白竜の周囲を濃縮された負のマテリアルが覆う。
「っ! こんなの何度も喰らってたら身が持たないぜ」
 グリムバルドが不味い煙草の煙を肺に入れてしまった時のように、気管支から肺を蝕ばまれる感覚に思わず咳き込む。
 砂塵対策としてゴーグルと口元を覆うことはしていたが、負のマテリアルそのものが相手では防ぎようも無い。
 それこそ、イニシャライザーを用いた浄化術でも行わなければ。
 だが、白竜の持つ大技の出番を待っていた人物が2人、いた。




 いつでもあたしたちはふたりぼっち

 ずっといる竜たちからは妬まれて

    若い竜たちからは疎まれた

 だからあたしたちはふたりぼっち

 手をつないだままたくさんしゃべって眠って

 “いつか”と言われた日を待ち続けるの




「セレスティアさん、今から僕が言うことをユーリさんにお伝え下さい」
 少し前。リューが倒れ、金目はスケッギョルドを構えたまま、イェジドと共に戦場を駆けるセレスティアを呼び止めていた。
 そして、その伝言は先ほどの尾による凪ぎ払いのダメージを癒やしに走った際にユーリに伝えられていたはずだった。

「僕の予測が正しければ……」
 金目は再度超重錬成により巨大化させた斧で後ろ脚を払う。
 しかし、それは金目の予測通り障壁によって阻まれた。
「!! 今ですっ!」
 金目の超重錬成を見たユーリはオリーヴェと共に白竜へと一直線に向かった。
 まるで針山の中を抜けるように身体の内側に、皮膚に負のマテリアルが突き刺さる。
 ユーリにとってもこの白竜の怒りに触れた状態は辛いが、それ以上にオリーヴェに無理を強いていることが辛い。
 だが、このタイミング。金目が見つけてくれたこの瞬間を逃すわけには行かなかった。
(憎悪と悲しみの連鎖を断ち切り、大切な者達と共に歩む未来を切り開く)
『大丈夫だ、ユーリならきっと上手くやれるさ』
 ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)の声が聞こえた気がしてユーリは思わず笑みを浮かべて頷く。
 この一撃を絶対に通すという確固とした意志を己が心に宿し、オリーヴェが力強く大地を踏み跳んだタイミングに合わせ、オートMURAMASAを振り上げた。
「お前の殺意も憎悪も分からなくなはい……。だけど、お前の王は……本当にヒトに対して憎悪を抱いていたか? その為に世界を滅ぼすモノとなったのかっ? 忘れたのなら教えてやる……っ、お前の王は……この世界を救いたかっただけだっ、ヒトや世界に対して憎悪を抱いてないっ。本当に自分達の行いが王が望んだ事か思い出せ……っ」
 マテリアルとかつて青龍から聞いた強欲王……かつての赤龍の想いを言葉と共に刃に込めて轟雷の如き一撃を白竜の胸元へと突き入れた。
「「いっっっったぁあいいいいいっ!!」」
 白竜の前脚がユーリを払い落とすより早くオリーヴェは三角飛びの要領で白竜の胸元を蹴って地面へと戻り、出いる限り白竜から距離を取った後、ガクリと膝を折った。
「有り難う、オリーヴェ」
 血痰を吐き出したオリーヴェからユーリが降り、その耳の後ろを優しく撫でた。駆けつけたロニがすぐにユーリとオリーヴェを纏めて癒やしていく。
「「知らないっ、知らないっ!! 王がどんな竜なのかなんて知らないっ!! でもこのココロが知ってる。セカイを滅ぼすこと、それがあたしたちの使命だって……!!」」
 地響きを立ててよろめきながら、それでも白竜は吼え、激しく尾を打ち鳴らす。
 その様はまるで駄々っ子を見ているようで、リューと紅狼刃を癒やすセレスティアにはあの双子が手を取り合いながら何かに怯えているようにも見えた。
『さぁ、そろそろ遊びは終わりにしようか。……お前達にも俺達にも使命がある。互いに譲れないものがあるなら、後は力で決めるだけだ』
 グリムバルドはゴーム・グラスを構えたヴェルガンドを一歩、一歩と白竜へ近付ける。
『最後に、これだけは言わせてくれ。お前達のした事は許されない事だし、お前達もお前達なりの理由で俺達の事が嫌いだろうが……俺はマシュとマロの事、結構好きだよ。もう意味のない事かもしれないが、友達になれなくて残念だ。さあ、戦おうか。悪いが俺は遊びじゃないぞ。遊びで誰かを傷つける程格好悪くはないんでな』
 グリムバルドの気迫に圧されるように白竜が一歩下がった。
「「あたしもヒトのこと嫌いじゃなかったよ。一緒にセカイを滅ぼしてくれるならよかったのに。どうしてあたしたちを殺そうとするの? こんな死にたがっているセカイを守りたがるの?」」
 決して交わらない平行線に旭は柄を音がするほどに握り締めた。
『僕も、君達と友達になりたい。本当はずっとニンゲンと友達になりたかったんだ。きっと、ザッハークや王様も……』
 そうエジュダハは言った。強欲竜であるはずの彼はそれでも龍としての部分をザッハークと同様に持ち合わせていた。だからこそ彼とは友人になれる気がしたが、この白竜はどこか根本のところでこじれてしまっている。
 ……いや、ある意味“強欲竜”としてはこの白竜の方が正しいのか。
 ――『友達に』
 ここまで来て、望めない未来に想いを馳せている余裕は無いはずだと旭は思考を切り替える。
 ザッハークとの約束を果たす為にも、こんなところで立ち止まっていられないのだから。
 白竜は少しずつ、少しずつ後方の崖側へと誘導させられていた。
 これは戦闘が開始になってすぐ、白竜の後ろが崖になっていることに気付いたキヅカとエアルドフリスが言い出した案だった。
(まだ、まだ早い……)
 旭は逸る気持ちを抑えようと深く息を吸って吐き出した。
 そんな旭の目の端では、不敵な笑みを浮かべたままエアルドフリスが白竜に語りかけていた。
「それはお嬢さんの思い込みだろう? このセカイは滅びたがってなんかないさ。花も木もヒトもコボルドも皆、懸命に生きようとしている」
「「思い込みなんかじゃない! 真実だもん! 嘘ばっかりいうお前なんて大嫌いだ!!」」
「ははっ、嫌われたもんだ。それとも気に入られてるのかな」
 白竜の一撃をインスレーターが受け止め、更に崖側に寄る。
 ――今だ!!
 エアルドフリスとインスレーターが崖側へと走り、白竜を取り囲むように布陣が完成する。
 白竜はエアルドフリスを追いかけ、崖側を向くと同時に周囲を見た。
 グリムバルドはその時、白竜と目が合った気がした。
 正しくは、ヴェルガンドのモニター越しに、だが。
 だからこそ、その瞬間を逃さなかった。
『マシュ、マロ……!』
 絞り出すようなグリムバルドの声音と、白竜が全周囲への尾撃を放ったのはほぼ同時。
 そして、3人の機導師による攻性防壁が一斉に発動する。
 その尾撃より一瞬早く雄叫びと共に巨大な全身鎧の姿となった旭はその一撃をハルバードの柄で受けきり、返す刃で気合いの雄叫びと共に白竜の脇腹へ爆発する突風のような一撃を叩き込む。
 白竜は夜色の瞳を驚きに目一杯見開き、蹈鞴を踏んで崖ッ縁へと引き寄られた。
『チィェストォオオ!!』
 更にスラスターを使ったインスレーターがその勢いと装甲を合わせた自重と魂の火力を全載せした蹴りを、白竜のボディに叩き込んだ。
「「あっ……」」
 崖へと半身以上が傾いた白竜が手を伸ばし、インスレーターの足首を掴んだ。
『ちょっ!?』
 予想外の負荷に、キヅカが慌てて操縦桿を引いたところで、一発の銃声が轟き、白竜の肩を貫いた。
 リザードマンを殲滅させたミグの、人機一体の成せる奇蹟の一撃だった。
『マシュ、マロっ!!』
 崖の端までヴェルガンドを走らせ、のぞき込む。
 しかし、モニターの感度を上げても白竜の姿どころか底も確認出来ず、グリムバルドは額を操縦桿に押し当てて強く強く目を瞑った。




 ――絶対、絶対無事に帰ってきて。
 最愛のジュード・エアハート(ka0410)の声を聞いた気がしてエアルドフリスは身を起こすと、痛む全身を引き摺って白竜が落ちた崖下を覗き込む。
 恐ろしく深いそこはまさしく“深淵”で、下から上がってくる風は恐ろしい程の負のマテリアルを孕んでいるのを感じ、エアルドフリスはその気に当てられて目眩と吐き気を覚えて数歩後ろへ下がると、その場に座り込んだ。
「なんとか……なったか」
 だが、喜ぶ気にはなれず、ただただ重苦しい疲労感に誰もが口を噤んだ。
 その前方頭上から、乾いた拍手の音が聞こえて、一同は一斉に音の出所を探し見た。
『見事だ。さすがは守護者、と言った所か』
「マクスウェル……テメェ……!」
 旭がハルバードを構え腰を落とす。
 その直後、地面、いやこの山全体が地響きを立てながら大きく揺れた。
「え? 何? 地震!?」
 機械越しにも揺れを感じ、キヅカとグリムバルド、ミグがそれぞれ機体の片膝を付いて足元からの衝撃に耐える。
「きゃぁっ!」
 自身により崩れてきた天井から、イェジドが身を挺してセレスティアを庇った。
『お陰で手間が省けた。大感謝だ』
「手間……? 何の話しを……?」
 金目は話しが見えず、困惑しながらマクスウェルに問う。
 未だ小さく揺れる地面からエアルドフリスはゆっくりと立ち上がると、周囲をさり気なく見回す。
 ……マクスウェル以外、新手の敵の気配は無い。が、こちらも満身創痍。かなり戦う条件としては厳しい。
「この白竜、エジュダハやその仲間たち。焚き付けたのはテメェか。誇りを踏みにじったのは、テメェか!」
 ぶん殴ってやりたいのに、相手は崖の向こうで宙に浮いている為届かず、旭は悔しさに奥歯が欠けそうな程に噛み締めた。
『フン、余りに腑抜けばかりだったから、ちょっとその背を押してやっただけさ』
 両肩を竦めるような仕草をした後、足元を示した。
『オマエ達、ここが何だか知っているか?』
 唐突な問いに、ミグは眉間にしわを寄せる。
「火山……だと聞いている」
 慎重に、ロニが答えると、マクスウェルはクククと笑い始めた。
『そうだ。この下には大量の負のマテリアルが澱み、濃縮され大量に溜まっていた。そしてそれは切欠さえ与えてやれば噴火する……その条件の一つをオマエ達は自ら満たしてくれたんだ! これほどおかしな事はない!』
「まさか……!」
 ユーリが一つの可能性に思い当たり、目を見張る。
『そうさ。この火山はある一定の負のマテリアルを貯蔵すると噴火する。今、オマエ達が落としたのは? 白い竜という名の歪虚……純粋なる負のマテリアルの塊だ』
 マクスウェルの哄笑が響き渡る。
『オレが直々にもう少し手を加えなければならないと思っていたが、まさかオマエ達が決め手を打ってくれるとは思わなかったぞ! オマエ達のお陰でこの地の大地は負のマテリアルに満たされるだろう! 感謝するぞ、“救世主サマ”!!』
「まさか、そんな……!」
 エアルドフリスが愕然と地面を見つめる。
 再び、ドンという振動が大地を揺らす。
『いかん、ここにいては噴火より先に天井が崩れるかもしれんぞ!』
 崩れる天井から徒歩のハンター達を庇いながらミグが叫ぶ。
「皆、地上へ!」
 イズンが入口付近にいるハンター達から退避を促していく。
『さぁ、精々足掻くがいい』
「くっ……ぜってぇテメェだけは許さねぇ!!」
 旭は爪が食い込むほどに強く強く拳を握り締めた。
『ククク……逃げろ逃げろ。だが思い知るがイイ。この地に逃げ場など無いと。溢れ出した負のマテリアルに呑まれるしかないという絶望を思い知れ……!』
『みんな、退こう! 天井が落ちる前に、ここから出るんだ!!』
 キヅカの声にグリムバルドが負傷して動けないヴォルドーフと紅狼刃をヴェルガンドの両脇に抱え、キヅカはインスレーターでゲアラハを抱え、ライフルの銃口をマクスウェルに向けたまま後ろ向きに入口へと下がっていく。
 モニターの端に、グリムバルドが渡した二つのリボンが――戦闘中、もみくちゃに踏まれてかなり汚れていたが――見えた。
『っ!』
 思わずグリムバルドは身を乗り出しかけたが、リボンの上に岩が落ちてきたことでグリムバルドは未練を断ち切るように入口を抜け、一気に地上まで走り抜けた。
 全員が入口から外へと向かう。
「イズンさんも……!」
 動かないリューをイェジドに乗せたセレスティアが殿に立つイズンを誘い、イズンもまた踵を返して通路へと出た。

 轟音と共に崩れ落ちる天井の向こうで、マクスウェルの哄笑がいつまでもハンター達の耳に残響となって残る。

 そしてこれから起こる災厄にどう対処したら良いのか……

 答えを知る者はまだ誰ひとりとしていなかった。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 12
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-712 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 紅と蒼混じりて
    リュー・グランフェストka2419
  • 戦場の女神
    セレスティアka2691
  • 《無窮》の心は鉄をも制す
    グリムバルド・グリーンウッドka4409
  • 黒曜の煌めき
    金目ka6190

重体一覧

  • 紅と蒼混じりて
    リュー・グランフェストka2419

参加者一覧

  • ヴォルカニック・ファイア
    キヅカ・リク(ka0038
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    インスレーター
    インスレーター(ka0038unit001
    ユニット|CAM
  • ライズ・オン・ウィル
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|18才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ウォルドーフ
    ウォルドーフ(ka0234unit001
    ユニット|幻獣
  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    オリーヴェ
    オリーヴェ(ka0239unit001
    ユニット|幻獣
  • 謹厳実直
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 古風ロリ
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    マドウガタドミニオン
    ハリケーン・バウ(ka0665unit002
    ユニット|CAM
  • 円環の兆
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|27才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ゲアラハ
    ゲアラハ(ka1856unit001
    ユニット|幻獣
  • 紅と蒼混じりて
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    クロハ
    紅狼刃(ka2419unit001
    ユニット|幻獣
  • 戦場の女神
    セレスティア(ka2691
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    イェジド(ka2691unit001
    ユニット|幻獣
  • 《無窮》の心は鉄をも制す
    グリムバルド・グリーンウッド(ka4409
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ヴェルガンド
    ヴェルガンド(ka4409unit001
    ユニット|魔導アーマー
  • 黒曜の煌めき
    金目(ka6190
    人間(紅)|23才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
キヅカ・リク(ka0038
人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/10/05 13:07:18
アイコン 竜の巣にて【相談卓】
エアルドフリス(ka1856
人間(クリムゾンウェスト)|27才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/10/06 06:29:51
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/10/03 20:51:53